いつラボを辞めるか?

TalentPlusPlus-careerChange

アメ10読者の皆さんこんにちは、KAZでございます。

以前、Masaさんが「アメリカでは企業を短期間の間で次から次へと変わる」と書いていましたが、アカデミックの世界でも同様、特にポスドクともなると3-5年のうちにラボを代わる人がほとんどです。

ポスドクとは、PhDを取得した人が次のキャリアに移るまでのいわば研修期間のようなものです。なので、一生ポスドクとして過ごすわけにはきません。
(なによりも給料が安い。)

ですがポスドクの場合、研修医のように2年間といった期間が限られているわけではなく、実績が出るまで続けなくちゃいけません。ひと昔であれば大体3ー5年間のポスドク経験を経てテニュアトラック或いは企業に移るのが平均的でしたが、いまはアカデミックのポジションを取るのは非常に難しくなってきており、今や「ポスドク10年」といわれています。

ポスドクを卒業するために必要なのは、次のキャリアにアプライする際に「こいつは独立して研究を遂行するだけの能力がある」と認めて貰うだけの実績です。それはすなわち論文。

論文がなければ、いくら自分が素晴らしい研究をしていようが、誰も認めてくれません。証拠がないのですから。キャリアアップにとって論文とは、自分にはこれだけの研究を遂行するだけの能力があるということを示すための証なのです。

なので、ポスドクのうちはとにかく論文論文です。

しかし、論文を書くといっても、自分ひとりの努力ではどうにもならないところがあります。

自分に合わないラボや上司の下でいくら我慢して実験をやり続けたとしても、成果は望めません。やはりいい研究を行うためには、(自分にあった)いい環境が大切です。

また、Facultyに応募したとき、業績で見られるのは論文の数ではなくその「生産性」です。
10年かかって3報の論文しかでていない人より、2年で3報の論文が出ている人の方がいいに決まっています。効率よく論文を書くためには、いま自分がいるラボは自分に合っているか、また将来性はあるか、など考えなくてはいけないことはたくさんあります。他にも、

・ボスときちんとコミュニケーションが取れているか。

・ラボのメンバーとの人間関係は良好か。

・論文の生産性は望めるか。

・最先端の研究や一流の研究に触れることができているか。

アメリカのラボでポスドクの経験を積むことは、決して「海外の研究環境に触れる」事が目的ではありません。海外で2−3年経験を積んだからといって、日本に帰ったときに助教のポストが獲り安くなるというのは大間違いです。やはりそこに論文がないと認めて貰えません。

また、どうせ入るならその分野で有名なボスのラボに行きたいというのが普通の考えです。しかし、そういうラボには当然同じ考えを持ったポスドクが世界中から応募してきますので競争率はとても激しいです。

運良くそのラボに入ることができたとしても、ビッグボスのラボにはたくさんのポスドクや学生が所属しており、ひとつのプロジェクトに対してたくさんのメンバーが参加することになり、結局はそのプロジェクトの”one of them”になってしまうこともあります。自分のオリジナリティーが見出せない。

ポスドクは「独立できる研究者を育てる場所」でなくてはならないので、自分の独創性を養える環境でないと意味がありません。その環境の中で、オリジナリティーのある(自分以外誰も発想できないであろう)研究を行うことが大切だと思います。

研究者の危ないところは、自分のプロジェクトに心酔してしまうあまり、大したプロジェクトではない、あるいは自分が発想したプロジェクトではないにもかかわらず、「この研究は自分が着目した素晴らしいオリジナルの研究だ!!」と勝手に思い込んでしまう人が結構います。「恋は盲目」ではないですけど、研究に没頭するあまり視野が狭くなってしまいがちです。研究に恋をした結果、何年かかってもそのプロジェクトをやり続けたい(なんとしてでもあのコをモノにしたい)と思ってしまい、ラボを移ることもせず、刺激のない環境で過ごすことになります。ある程度その道を極めた人が言うのなら分かりますが、まだひよっこの、研究者としてスタートラインに立ったばっかりのポスドクが言うのはいわば井の中の蛙です。

やはり将来研究者としてやっていくためには、いろんな分野や環境を経験しておくことは大切です。それだけ視野が広がりますから。

 

日本人て、とかく安定を求めたがりますが、日々進歩し続ける研究の世界で安定などありません。今の環境にある程度見切りがついたら別のラボに移る勇気も大切なのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です