働くママ、学校に行く (5)

 

“She has a ‘j-o-b’.”

 

久しぶりに参加した、女性起業家たちの交流会で、私を紹介する際に主催者のフェレーナがそう言った。

 

周りは女性起業家ばかりのこのパーティで、一瞬、皮肉ともとれる言葉だけれど、私の状況や目標を理解しているフェレーナが言うと、そうは感じない。私が「(将来は)まだ迷っている」と伝えると、「それも良いじゃない。」と大らかな答えが返ってくるのは、さすがサンディエゴの女性起業家たちのリーダーだと思う。彼女のビジネスにおける立ち居振る舞いや、ビジネスに対する考え方は、とってもクールでエレガントだ。

 

ヘラハブ

 

女性起業家専用のco-working(共働)スペースであるHera Hub(ヘラ・ハブ)は、3年ほど前にオープンした。現在はサンディエゴに3つのロケーションがある。すでに、全米フランチャイズの許可も出ており、南米やシンガポールでもオープン予定だと言う。

社長のフェレーナは会社勤めをした後、女性がビジネスをする環境を用意したい、女性起業家をサポートしたいという思いから、このHera Hubをオープンした。

私は一年ほど前から、フェレーナを中心とした女性起業家の交流会に参加しては、自分の将来へのヒントになりそうなものを探してきた。

 

自分の手でビジネスを立ち上げた起業家たち(entrepreneurs)の中には、「会社勤め」というものに否定的な感情を持っている人も多い。

確かに全ての企業やボスが全員の肌に合うわけではないから、「会社」という場所に対して嫌な経験を持つ人がほとんどだと思う。

 

「だから自分のビジネスを始めた。」

 

それも一つの選択肢だ、と私は思った。

 

 

今年一年の間に、自分よりも前を行く女性起業家たちに、一体、何人会っただろう?

みんなとても優秀な人ばかりだった。

理系修士, MBA, Ph.D. —–。

学歴だけじゃない。アメリカ内外の大学で講師をしたり、大企業の重役ポジションにいたり、もう人生がいくつあっても足りないような人ばかり。幼い子供を持つママもいる。

彼女たちのエネルギーと、ビジョンと、ハングリーさを見ていると、「奮い立たされる」以外の言葉が見当たらない。

アメリカ社会でこれだけ女性が進出して活躍しているのは、紛れもない、こういう女性たちの汗と涙のおかげである。そこにはどれだけの悩みや葛藤、妥協、挫折があったのだろう?

自分の道を邁進している女性起業家たちの背中を見て、焦りもあった。

私もそうなりたいのだろうか?

独立して会社を興すだけが、”Stay hungry.” (by Steve Jobs)への道なのだろうか?

 

私はこの一年、ずっとこの疑問を自分に持ち続けてきた。

しかし現実は、「こんなことをやりたいな」とは思っていても、「じゃあそれ一本で行くぞ!」となれるものが私にはまだない。

単なる経験と年数不足?それもあるかもしれない。

 

この記事でも書いたけれど、そんな中で自分の働き方を肯定できる考えに会えた。

「会社」という組織の中で、「一流の歯車」になることが目標だって良いのかもしれない。そう思い始めた。

一から自分の手で作り上げなきゃいけない起業家たちに比べて、すでにストラクチャーのある「会社」でしかできないことも、たくさんある。

「島耕作」じゃないけど、会社の歯車であることは恥じることでもなんでもない。歯車だって、なければ、全体が動かないんだから。

 

 

そんなことを思っていた矢先、自分と向き合わざるを得ない出来事が起きた。

うちの会社で大きなmerger(合併吸収)が起こる。東海岸に拠点を置く銀行を、買収したのだ。

サイズ自体はうちの銀行のほうが小さいのに、業務の関係でうちがサバイブするという不思議な形のmergerになった。

 

しかし、部署によっては買収先のほうが進んでいるため、社内でもかなりの「変化」が起きることになった。

結果、私の隣のチームAは消滅。メンバーは、レイオフされることなく、別部署にそれぞれに異動することが決定した。

チームAからは、私の先輩アナリストとなるジェシー(仮名)がうちのチームに入ることになった。

彼女は業界経験10年以上の大先輩である。

 

「まずい。私の必要性が薄れる。」

 

本能的にそう感じた。

 

だけど、ジェシーとは私の入社以来、ずっと仲良く、同年代の子供を持つ母親同士としてやってきたのだから、敵対視など絶対にしたくない。

ジェシーの経験のある分野は、私も興味がある分野だから、彼女ともっと色々な話をしたい。

でも、同じ土俵で戦っても勝てるわけがない。

 

じゃあ、どうするか・・・・・?

 

私は考えてみた。

 

まず、謙虚になる。

彼女から学べるものは全て学び、彼女の経験は絶対に尊重する。

そして、自分の強みを見つけ、生かす。

どうも、私の基本的なパソコンスキルと知識は、結構、需要があるらしい。

「これ、どうやるの?」

「何かおかしいんだけど、見てくれる?」

と聞かれることが増えた。

トレーニングやヘルプデスクが必要なことでもないけれど、できなきゃ仕事にならないことばかりだ。ギーク(理系オタク)には当たり前のテクノロジーも、ここでは珍しいものらしい。

 

そして、常に分析する。

「こういう分析チャートがあったら、便利かも。」

「この問題にはどうやってアプローチしよう?」

と、とにかく手と頭を使って形にする。そしてそれを提案する。

「こういう情報も欲しい。」

「これはこうだから、こういうものもあると助かる。」

という人の意見を聞いて、「じゃあこれを入れよう。こっちはいらないな。」と柔軟に変化し続ける。

 

すると、「こういう問題があるんだけど、どうしたらいい?」と別部署からも、人が質問しに来るようになった。

聞かれるのは統計とか数学系の内容で、「そうか、この分野なら私も重宝されるのかも。」と、社内の事情がわかってくる。

 

そして最後。

目の前の仕事は、他人の3倍こなす。

目の前に仕事がある以上、言い訳は許されない。

 

 

こうやって、少しずつ進化し、成長し続ける。会社で働くってことは、きっとそういうことだ。

 

「絶対に『ノー』は言っちゃダメ。」

うちの年上かつ経験豊富な旦那が、不安になっている私にアドバイスをくれる。

「頼まれた仕事は絶対に引き受ける。君のボスにとって、必要な人間になれ。君がいるから良い仕事ができる、ってボスに思わせるんだ。そうしたらボスは君のことを認めざるを得ない。」

 

私は、ジェシーになる必要はなく、ジェシーほど経験がないからって悲観的になる必要もない。

自分に勝ち目のない、誰かのゲームをプレーするのではなく、自分自身のゲームを見つける時が来たんだと思う。

 

それが起業にあるか、大学の教室にあるか、自分のデスクにあるか・・・・それは自分次第。

 

 

次回:働くママ、学校に行く (6)

 

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