学問分野に見るアメリカ

今日は、日本では聞きなれない、「アメリカらしいな~」と思える大学での学問分野を紹介します。経営学や電子工学、数学など、日本の大学でもオファーされている学問に加えて、アメリカの歴史や国民、民族などの影響で、これらの学問分野は発展しました。

今回は、私が卒業したSan Diego State University (通称SDSU、サンディエゴ州立大学)の大学カタログを参考にしてみました。実は今までこんなメジャーが存在していたなんて卒業生の自分でも知らなかったものもあり・・・。

 

ミリタリー系:

ここサンディエゴはNavy(海軍)基地がどっしりと構える、いわずと知れた軍隊の町。観光地であるサンディエゴベイには、aircraft careers (原子力空母)が、何機(って数えるのか?)も停泊しており、市内には現役・退役軍人が多く住んでいます。

そんなサンディエゴで発展した、ミリタリー系学問にはこんなものがあります。

 

International Security and Conflict Resolution(通称ISCOR、国際保障と紛争解決学?)ゴールは、「政治的、人道的、社会経済的、文化的な側面から、世界の紛争を理解すること」、だそうです。政治だけでなく、統計学や数学を使って、テロリストの攻撃パターンなどをシミュレーションしたり、武器や人材の流通などを研究したりするようです。このメジャーはなかなか面白いようで、私が卒業した応用数学から多くの学生がこちらに流れていくこともありました。

 

Military Science(軍隊学)これはアーミー(陸軍)のオフィサー(士官)になるための学問。

Naval Science(海軍学)これは海軍、海兵隊でのオフィサーになるための学問。ヴァージニアのAnnapolisにある、Naval Academyは海軍士官学校として有名ですね。

 

日本ではなかなかなじみのなかったミリタリー系学問。日本でこれだけ知っていると、「軍隊オタク?」と言われそうですが、全くそんなことはなく・・・苦笑 サンディエゴに住んでいると、ミリタリーの家族でなくてもこれくらいは常識になってしまうのではないでしょうか。

注意したいのは、この学問の卒業後の使い道。サンディエゴには、defense contractorと呼ばれる、政府には属さない、軍隊系の請負会社が多く存在します。有名なところではNorthrop Grumman, Cubic, Spawarなど(過去にはGenral Dynamicsなどもありました)。上記のような専攻を使うために、このような企業に就職しようとすると、アメリカ市民であることが必要だったり、security clearanceと呼ばれる(日本語でなんていうんだろう・・・)個人の国家保障上のステータスがアクティブだったりと、留学生にはハードルが高い事実があります。

 

 

文化系:

文系とか理系という識別ではありません。これはおそらく、アメリカの歴史、アメリカの文化、の中で、このようなグループが認識され始めたことが学問設立の原因になったのだと思います。

 

Women’s Study(女性学)これは日本でもあると思いますが、やはり違いはその規模と影響力ではないでしょうか。ここアメリカでは、おそらく70~80年代に、歴史的な女性運動がありました。(いや、もっと前にもあったんですが) この頃から女性を社会的に強くするため、社会に出て行かせるため、このような学問が発達したのでしょう。

Wikiで調べてみたら、なんとSDSUは女性学を始めた最初の大学のひとつでした。やっぱりリベラル中のリベラルなんだな、この学校・・・。

 

LGBT (Lesbian, Gay, Bisexual and Transgender) Studies (レズビアン、ゲイ、両性愛者、性転換者学) これも、同性愛者が多く住むサンディエゴだからこそ発達した学問ではないでしょうか。

Tamamiさんが、この記事でも書いていたように、カリフォルニアの大都市では、同性愛者、両性愛者の人口がとても大きく、彼ら彼女らの市民権が強く確立されています。政治的、経済的、文化的な貢献度はとても大きく、まさにその町の一部となっているわけです。

 

今回、こんな記事を見つけたので、紹介します。

“SDSU second in nation to offer LGBT major”

サンディエゴ州立大学は、2009年からLGBTをマイナーとしてオファーしてきましたが、2012年からは国内で2校目にメジャーとしてオファーすることになりました。

 

(抜粋)

“I congratulate San Diego State,” Henking (a professor of religious studies and co-chair of LGBT studies at Hobart and William Smith) said. “We have been studying what it means to be human, in different ways, for a long time. This is just another way to study what makes us who we are, how we care for each other, how we care for our families.”

(抜粋和訳)

「サンディエゴ州立大学に祝福を送ります。私たちは人間であること、他人と違うということ、を長い間、研究してきました。これはまた、自分を探求し、他人を大切にし、家族を大切にするための一つの学問です。」と、Hobart and William Smith大学LGBT学Henking教授は言います。

 

公立大学としてこのような専攻を設置することには、tax payer(納税者)からの反対もあったのでは、と記事にあります。それに加えてこの州予算カット。しかし、それでも大学側がこの専攻を設置に至ったのは、いかにLGBTの影響力が 社会にあるか、という証拠ではないでしょうか。

 

Africana Study(アフリカ民族学)サンディエゴには、アフリカから移民、難民としてやってくる学生がとても多くいます。私が映画 “Invisible Children”を知ったのも、留学生アソシエーションのイベントでした。この映画はウガンダの内紛で影響を受けている子供たちを取り巻くドキュメンタリーで、サンディエゴ出身の学生たちで撮影され、私も日本語版作成に協力しました。ここで出会ったウガンダ人の女子学生は、Civil Engineering(土木工学)を勉強し、母国で利用したいと言っていたのが印象的でした。

また、一般的に”Black Studies”と呼ばれる(この呼び方は差別的だから名前が変更されているのかもしれません)、アフリカンアメリカンの学問もここに含まれます。この学問も、60年代にアメリカで起こった、人種による市民権運動の結果として発達しました。

 

 

America Indian Study(インディアン民族学)これはアメリカの原住民のインディアンですね。サンディエゴの砂漠エリアには、Indian Reservationと呼ばれるエリアがあり(特にカジノ)、インディアンがアメリカ政府に守られて生活しています。インディアンの歴史や文化、経済などを学びます。

 

Chicana and Chicano Studies(中南米民族学)ここサンディエゴは、メキシコに隣接しているので、多くのメキシコ人学生が存在します。メキシコだけでなく、他の中南米からやってくる学生もおり、その歴史とアメリカでの歴史、経済などの学問が含まれます。特にサンディエゴでのローカルビジネスは、メキシコ人抜きでは回らないほどの地位を占めており、その需要はおそらくアメリカ国内どこよりも高いのではないでしょうか。

在学中に、他の学生から教えてもらった映画”A Day Without A Mexican“というドキュメンタリーは、コメディかと思いつつも、最後は考えさせられる内容で、面白かったです。

 

 

 

学問はもちろん需要と供給であり、そこに必要とされていれば、専攻もあります。逆に、そこのローカルビジネスや思想に合わないものであれば、いくら勉強したくてもオファーされていません。

たとえば、農学。

サンディエゴの市内では農学を勉強するという需要があまりありません。なので、SDSUの市内キャンパスでは農学という分野はオファーされていませんが、インペリアルキャンパス(市内から一時間半ほど砂漠へ入ったところにあります)では、農学がオファーされています。

 

他にはテキサスではポピュラーな石油工学(Petrolium Engineering)や、石炭が出るウェストヴァージニア大学には鉱業学(Mining Engineering)なんてものもあり、地理的なものも大きな要因になります。

地元で発達しているビジネスにも左右され、ここサンディエゴでは医薬品系の大手企業が多いため、UCSDはバイオテクノロジーや、バイオ統計学なども人気です。

宗教的なポリシーもあり、キリスト教系の私大では教えに沿わない学問 (LGBTなど)はオファーされないだろうし、逆に、女性学が強い私大、なんていうものもあるはずです。

 

留学を決めるときは、その大学のポリシーやリベラル・保守的な姿勢なども視野に入れ、どんな学問がオファーされているかチェックしてみることも必要かもしれません。

 

 

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