学生ビザから米国市民権まで(3)

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米国内の学校を卒業したあとに1年間の就労を許可するOPTで働き、翌年からH1Bという3年間有効な就労ビザ、それを一回更新して計6年、そしてそのあいだにグリーンカードを申請、グリーンカードで5年間在住の後、永住権を申請。

これが、結婚せず自力で(というのも変ですが)、学生(F1)ステータスからスタートして永住権に至るコースです。

ちなみにH1Bが6年でその後すぐグリーンカードに切り替えられるわけではなく、人によってはグリーンカードを得られるまで10年近くかかります。H1Bが切れてグリーンカードがもらえるまでのあいだは「グリーンカード申請中」というステータスで合法に滞在はできますが、長期間米国外に出てしまうと「申請を破棄した」とみなされてステータス取り消しになってしまうこともあるようです。

そしてH1B以降が難しいのは、自分の意思で「H1Bビザで就労しよう!」と思ってその通りになるというわけではない、ということです。

H1Bには「スポンサー」が必要です。つまり、正社員として雇用してくれる企業です。

アルバイトではだめです。フルタイムの社員でないとスポンサーは認められず、また会社ならどこでもいいかというとそうではなく、ちゃんと国から「この企業は外国人にビザをスポンサーしてよし」と認められた会社のみ。

さらに、スポンサーするにはそれなりの費用がかかるので、会社として「うちはスポンサーする」というポリシーが必要で、「うちはスポンサーしません。グリーンカード保持者かアメリカ市民しか雇用しません」と言われたらそれまでのこと。

これに対し卒業後1年間のOPT はスポンサー不要なので、OPTでインターンとして企業で働き、気に入ってもらえたらH1Bに切り替えてもらう、というパターンもありますが、これは本当に就職時にその見通しなり先輩の実績なりがないと、体の良い雑用係として1年間使われて終わり、ということにもなりかねません。

加えて、H1Bには毎年の枠があります。OPTからH1Bに切り替えることができる最初の日に申請を開始しないと、「今年の枠はいっぱいになりました〜」と言われて申請さえできなくなってしまいます。

また基本的にH1Bの定義は「専門分野で学位を得た卒業生が、その専門分野で働くため」のビザ。基本的に大学以上を卒業していることが条件だったり、申請しても「この申請内容の専門分野の知識を持っていると認められない」という理由で却下されることもあります。

これだけの厳しい条件の中で、米国市民でさえ仕事が見つからず失業率が高いという状況で、あえて「外国人を正社員として採用してビザをスポンサーしますよ」と言ってくれる会社を見つけることが、いかに難しいか。

アメリカがいかに移民の国とはいえ、前回書いたように、こうして一度学校を卒業して労働市場に入っていこうとすると、とたんに国が厳しい選択の目を向けてくるということがよくわかると思います。

私の場合、「通訳・翻訳の学位を大学院で取得」→「通訳・翻訳者として就職」ですから、比較的わかりやすい申請内容で、却下されるという心配はまずありませんでした。

また就職先は私の卒業した大学院からの卒業生が代々就職し、H1B、その後はグリーンカードをスポンサーしてくれていた会社だったので、この会社の就職試験に合格することができて非常にラッキーだったと思います。

それでも、たとえば日本の大学を卒業して日本の企業に対して就職活動をしたときの感覚とはまったく違います。

あちこちの会社に申込書を送っては面接して合否を待つ・・・なんていう贅沢はありません。

申し込みをする会社の選択肢そのものが極端に少ないのです。同じ学年の卒業生が、みんな同じような会社にレジュメを送るか、日本に帰国することを選んでいます。

私の場合も就職した会社はいろんな意味でパーフェクトな就職先!というわけではありませんでした。

留学して大好きになったカリフォルニア州とはまったく違うアメリカの中西部という場所に引っ越すのも不安だったし、車の工場の中で社内通訳者として働くことになって、それまで大学院で国連や大統領のスピーチなんかを教材にし、通訳ブースの中で通訳の練習していた私にとっては、「なんだかイメージが違う・・・」と不満でした。

今振り返れば、このときスタートした車業界での仕事が結果的に私の通訳としての仕事の幅を広げ、この会社を辞めたあと現在にいたるまでのキャリアを可能にし、様々な人との出会いがあり、中西部での生活を通して深くアメリカ文化を理解することができ、非常に貴重な経験だったのですが。

当時は、見渡す限りトウモロコシ畑が広がり、人が誰も歩いていない中西部の大地の真ん中で途方にくれながら「現実は厳しいなぁ。でも、H1Bをもらえるだけ感謝しなきゃね」と自分に言い聞かせて頑張る毎日だったのでした。

次回はグリーンカードの段階について書きます。

 

学生ビザから米国市民権まで(3)” への4件のフィードバック

  1. ブログ拝見させていただきました。通訳をされているとのことですが、将来私もアメリカで通訳をしたいと思っています。今は日本で通訳とは関係がない一般企業に勤めているのですが、将来の夢に向けて今後アメリカの大学院に行き通訳の勉強をするか、日本で通訳学校に通うか悩んでいます。
    アメリカでの就職の際には学位が重要となることは理解しておりますが、日本語の通訳コースのある大学院がカリフォルニアの一校のみのような気がしております。。
    アメリカで通訳をするには、その学校に行く他にも何か方法がありましたら教えていただけますと嬉しいです。
    (リサーチ不足でしたら申し訳ありません)

  2. Minamiさん、コメントありがとうございます。
    カリフォルニアの大学院はMiddlebury(もとMonterey) Institute of International Studiesですね。私もそこの卒業生です。なので、周囲にいる通訳もMIIS卒業生が非常に多いです。でももちろんそれ以外の通訳もたくさんいます。その人たちの場合は留学や結婚など、別の理由でアメリカに住むようになって、それから通訳を目指すようになった、という人が多い気がします。
    アメリカで通訳になるために日本の通訳学校か、アメリカの大学院(MIIS)か、ということですが、単純に通訳の技術を身につけるためにはきっとどちらに行っても同じだと思います。ポイントはアメリカで、というところですよね。アメリカで働くにはビザが必要なので、日本の通訳学校を卒業したあと、さて、どうやって渡米して働こう?ってことになってしまうので、どうせならアメリカに留学してOPT→H1Bという道を選んだほうが可能性は高いですよね。
    で、MIIS以外に他にないのか?ですが、私はむしろ、留学するなら通訳そのものを勉強するより、なにか専門知識を身につけられる他の大学・大学院に留学することを推奨します。
    そしてその専門分野を得意とする通訳を目指したほうが、即戦力という意味で有利だと思うのです。
    通訳そのものの技術は、大学院に行かなくても身につける方法はいくらでもありますから・・・
    と、自分の卒業した大学院を「行かなくてもいい」と言うつもりではないのですが、決して唯一の手段だとは思わないし、ここを卒業してもさらに専門分野を確立しないと通訳として生計を立てるのは難しいということは強調しておきたいと思います。
    次に、アメリカで働くにはブログに書いた通り、企業のスポンサーによるビザが必要ですが、正社員として通訳を雇う会社というのは年々減っていると思います。選択肢は非常に少ないです。MIISその他の大学・大学院を卒業してすぐ、フリーランスの通訳ができるというわけでもありません・・・
    なんだかいろいろ難しいことを書いてしまいましたが、決して不可能なことではありませんので、Minamiさんの夢を目指してぜひ頑張っていただきたいと思います!また質問があればコメントしてください。

  3. すばらしいですね。努力が伝わってきます。 自分の理想をアメリカで追求するよりもいかに上手く今の自分の状況を理解しアジャストしていけるかというのが大切ですね。
    次の記事も楽しみにしています!

  4. Yukiyoさん、コメントありがとうございます!これはもう10年以上前の出来事なのですが、振り返るとまあ、挫折しながらもなんとか今日の市民権というポイントまでたどり着いたなぁと感慨深いです。
    夢を持ってアメリカにきてもそう簡単に理想通りには行かないですものね。でも、工夫と努力が必要だから人生楽しい!とも思います。
    読んでいただきありがとうございます。

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