学生ビザから米国市民権まで(8)市民権取得、宣誓式

前回に引き続き、市民権取得4ステップの最終ステージ、宣誓式についてです。

3つ目のステップで試験・面接に合格となった時点で、市民権取得はもう確定同然ですが、最後の宣誓式に出なければ正式に市民とはなれません。

宣誓式は儀式的なものではありますが、ここで実際に「Certification of Naturalization」というものを受け取って、このCertificateがアメリカ生まれのアメリカ人の「Birth Certificate」に相当するものとして私たち移民の市民権の証明書となりますので、儀式であると同時に正式な事務手続きの場でもあります。

では当日を振り返って記録したいと思います。

まず、車で6時間くらいのところに住んでいる義母が、今回私が市民になるということをものすごく喜んでくれて、この宣誓式出席のためにはるばるLAまで来てくれることになりました。

車6時間を「はるばる」は大げさだと思われるかもしれませんが、実は義母は宣誓式の二ヶ月前に子宮頸がんの手術をしたばかりで、またもともと足を悪くしていてゆっくりしか歩けないし、全体的にあまり体調が良くないので、彼女にとって一人でLAに来るということは決して気軽にできることではないのです。

もちろん一人で6時間運転は無理なので、今回は飛行機で来てくれました。当日夫が義母を空港に迎えにいくと、車椅子で登場して夫もちょっとショックだったようです。でもそんな大変な思いをしても来てくれたことが私にとってはちょっとした感動でした。

この宣誓式のことを私はあくまで形式的なものと捉えていて、最初は面接や指紋のように一人でさっと行ってさっと帰ってこようと思っていたくらいです。

それが、夫に言うと「もちろん僕も行くよ!」。でも平日だから子供を学校に迎えに行く時間まで帰ってこれるかな?と心配すると、「何言ってるの!もちろん子供も休ませて一緒に行くんだよ!」

びっくりしました。アメリカの小学校は生徒が休むことを非常に嫌がります。病気なら仕方ないけど、家庭の事情でも厳しく理由を聞かれ、旅行で休むなんてもってのほか。

母親の市民権宣誓式で休ませていいの?!と不安だったのですが、子供の担任の先生からは「市民になるの?!すばらしい!!Congratulations!」と言われるだけでまったく問題無し。

次第に、誰かが米国市民になる、ということがアメリカ人にとって私が思う以上に嬉しくて重要なことなんだ、ということが私にもわかってきました。

さて当日。宣誓式はLAのコンベンション・センターという巨大な会場で、午後1時に集合と言われていました。

こんな巨大な会場でいったい何人が集まるのかと調べたら、4000人以上らしい。午前に1度、午後に1度と、1日で二回宣誓式が開催されるので、1日で合計1万人近くが新市民になるということです。

さらに新市民のゲストも集まるので、本当に大規模な式です。午後1時というのも調べてみると、このような大量の人数が集中して混雑しないよう、人によって30分くらい開けてバラバラの集合時間が指示されているようでした。

余裕を見てダウンタウンに車で出発し、コンベンションセンターの近くにいくと、大きな電光掲示板で「Citizenship Ceremony Parking」など、駐車場案内があちこちに立っていたりします。

指示にしたがって駐車場に車を止めて、会場に向かうと、あちこちにいろいろな人種の人々が・・・だいたい2、3人から5人くらいでかたまり、家族や友人を連れているようです。

大きなロビーにも大きな看板があちこちにあって、どこでチェックインするかを案内しています。

www.orangejuiceblog.com
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ロビーではこの新市民対象に商売しようとする様々なグッズ販売店舗がお店を広げてました。たとえば、今日の日付が入ったテディベア、その名も「Citizenship Bear」とか、Certificateを入れる特別なフォルダとか、アメリカ国旗とか・・・、「こんなの誰が買うかいな〜」と思うようなものもありますが、実際には買ったばかりのテディベアを大事に抱えて歩いている人がたくさんいました。

storify.com
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会場に入っていくと、すぐに「新市民はこちら、ゲストはこちら」と入り口のところで二手に別れます。ここで夫、娘、義母に「またあとで〜」と手を振り、次に会えるのは儀式の後。

ちょうど空港の入国審査で半分が外国人、半分がその国の人、とわかれるように、ゲストと新市民が分かれて手荷物検査を行い、ゲストはそのまま会場の後ろのほうに着席、新市民は会場に入るとまず、壁際にずらーっと並んだオフィサーのところに行ってグリーンカードと宣誓式の通知レターを提出します。

オフィサーはグリーンカードにパチンと穴を開ます。8年前に必死の思いで入手して以来、家宝のように大事に保管していたグリーンカードともここでお別れです。

このとき通知レターに、宣誓式のあとでCertificateを受け取る場所を示すテーブル番号が書き込まれます。

それが終わると通路に沿って立つオフィサーたちに案内され、席につきます。

「はい、あなたはここに座って」と指定されるので、好きな場所に座るわけにはいきません。私はかな〜り後ろのほうになってしまい、前で何が起こっているのかは、正面の巨大スクリーンでしか見ることができず、まるで人気アーティストのコンサートのようです。

またゲストが座るほうを何度も振り返ってみましたが、とにかく大量の人で私の家族がどこにいるかも全然わかりませんでした。

http://blogs.kcrw.com
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1万人近くが入場するまで延々と席で待つ・・・と事前に聞いていましたが、周囲の新市民を興味深く観察しているうちにあっというまに開始時間となりました。このとき印象深かったのは、あとからあとから遅刻寸前、あるいは開始時間が過ぎてとっくに遅刻して、バタバタと慌てて走ってくる人がたくさんいたことです。

前日から緊張して、かなり余裕を持って到着して準備万端な新市民の私は、やはり真面目な日本人なんだと思います。こんな大事な日にどうしてこんなに?とびっくりするくらいたくさんの人が遅刻していました。開始後15分くらいはポツポツと人が入ってきていました。

さて、LAの地方裁判所の裁判官が入ってきてやっと宣誓式の開始です。

この市民権の宣誓式というのは本来裁判所で行うもののようです。が、1万人が入れる裁判所はないので、この裁判官の宣言によって式の間、コンベンションセンターの会場が裁判所とみなされるのだそうです。

新市民の私たちは立ち上がり、右手をあげて、裁判官のあとにつづいて誓いの言葉を読み上げます。次に今度は右手を胸にあてて、アメリカに忠誠を誓うPledge of allegianceを読み、初めてアメリカ市民として国歌を歌います。アメリカ国歌として知っていたこの歌を、この瞬間から「自分の国の国歌」として歌う、というのは感慨深いものがあります。

http://www.insidebayarea.com/
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着席し、裁判官のスピーチ、最高齢の新市民の紹介(たしか80代のもとカナダ人のおじいちゃん)、米国軍隊に属する新市民(米国市民ではなくても軍隊に入れるということを、このときまで私は知りませんでした)の紹介などと続きます。

新市民のもと国籍トップ5の発表もありました。日本がいったい何位なのかわかりませんが、トップ5には全然入っていません。1位は場所柄もちろんメキシコ。他にフィリピン、イラン、中国などが入っていました。国が発表されるたびに、多分その国の出身者たちが拍手と歓声で盛り上がり、最後の「メキシコ!」と発表されたときはなんだか会場の8割くらいが「Yay!!」とか叫んでるような感じでした。

これからは米国市民としてアメリカに忠誠を誓うわけですが、同時に出身国をそれぞれ誇りに思うというのは素晴らしいことだとこのとき思いました。

この後、新市民は二つのビデオを鑑賞します。1つ目が「Proud to be an American」という歌のビデオ。

この歌は母国を守るために戦ったアメリカの兵士たちを称える歌でもあります。なかなか感動的な写真がスライドショーのように次々と映し出され、ここで涙がこみ上げてくる新市民もいるかもしれませんが、私はこの音楽の曲調があまり好みではなかったせいかそれほど感傷的にはならず冷静に鑑賞していました。

次にオバマ大統領からのメッセージのビデオを観ます。オバマが大画面に現れ、

「Welcome to the United States」

とあの力強い声で言われると、こちらのほうが私にはぐっと来ました。

当然ながら事前に録画され考え抜かれたスピーチではありますが、自らも移民の子供であるオバマ大統領のメッセージには真摯な心がこもっていると感じました。このあとに続いた大統領の「今日からはここがみなさんの母国、ホームです」という言葉にも、思わず涙ぐみそうになるような感動がありました。

また、手元に配られたいくつかの書類の中には、オバマ大統領だけではなく前大統領のブッシュからのメッセージもあり、私はブッシュのことはまったく好きではないのですが、彼のメッセージもなかなか良かったです。それは「アメリカは新しい移民によって、よりアメリカらしくなるのだ」という言葉で、「And every immigrant, by embracing these ideals, makes our country more, not less, American.」と結ばれていました。

アメリカという国は、血縁とか人種で成り立つ国ではなく、みんなで努力して良い国にしていこうという「理想」「信条」のもとに結束する国民の国。新しく入ってくる移民がこの理想を信じて集まることで、アメリカはよりアメリカになるんだと。移民が入ることでアメリカらしさが薄まるのではなく、その逆だ、という言葉です。

ブッシュには本当にその言葉に従って行動してほしいものですが、私にとってアメリカの市民権をとることになった理由の1つがここにあるとこのメッセージを読んだときに思いました。

この地に生まれたわけでも親がアメリカ人というわけでなくても、アメリカという国の理想と信じるところを共有するならアメリカ人として受け入れる。実際には深刻な社会問題が溢れ、日常生活もうんざりするような出来事ばかりで、こんなきれいごとを言っている場合でもないのですが、それでも一国の大統領がオフィシャルにこういうメッセージを出せる国には、他の国にはない基本的な懐の深さを感じます。

ビデオを鑑賞したあと、閉会の言葉があり、大量の新市民たちは最初にグリーンカードを提出したときに受け取った番号のテーブルへと一斉に移動します。ものすごい騒ぎになり、どの列がどの番号に並んでいるのかよくわからなくなってあちこちで「ここ何番?」「間違えちゃった」「お先にどうぞ」などなど、いろいろなアクセントで英語の会話が交わされますが、どの人もみんな笑顔。何年もかけて待ちに待った日がもうすぐ終わろうとしているので、列に並ぶのにイライラしている人はいません。涙ぐんでいる人や満面の笑顔の人ばかり。

ちなみに私はこの日、なぜかひどい花粉アレルギーでずっと片手にタオルを持ち、鼻をすすったり涙をぬぐったりしてばかりだったので、もしかしたら周囲から「あのアジア人、相当アメリカ人になれるのが嬉しいのか・・・?!相当苦労したのか・・・?!」と推測されていたかもしれません。

しばらく列に並び、ついに自分の「Certificate of Naturalization」を手にしました。Certificate of NaturalizationというのはA4サイズくらいの大きな紙で、紙幣とか株券のように飾りやホログラムが入っていて偽造できないようになっています。また、最初に市民権申請したときに提出した顔写真も入っています。

http://chronicle.augusta.com/
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グリーンカードがなくなった今、これが私のアメリカ国民としての唯一の身分証明書です。このCertificateを使ってアメリカのパスポートが手に入ればそれが最も便利な身分証明になるので、この会場でさっそくパスポートを申し込むこともできます。(私はこの日もう列に並ぶのが嫌で後日申請しました。)

このCertificateを胸に、私は大勢の人々に交じって会場の外に出ました。この後、事前に打ち合わせていたとおり、夫と娘、義母の待つ待ち合わせ場所に向かう予定でしたが(大勢の人々でごったがえすことは想像できたので事前に場所を決めていたのです)、ちょっとしたサプライズがありました。

会場の外に出てロビーへと降りる階段に向かうころ、大勢の人の祝福する叫び声が聞こえてきたのです。少し進んでみると、階段の下に新市民の家族たちが全員集まり、口笛を吹いたり、手を振ったり、「ヒュー!」と叫んだりして、階段を下りてくる新市民を祝福してくれていたのでした。

darkroom.baltimoresun.com
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あまりに大勢なので私は自分の家族がどこにいるかわからなかったのですが、家族たちは降りてくる私の写真を撮ってくれていて、あの大勢の人々に交じってやはり手を振ったり祝福の声をかけてくれていたようです。

コンベンションセンターの広いロビーに人々の叫び声が響き、あちこちで家族たちが抱き合い、興奮で大騒ぎの群衆をなんとかかき分けて私も家族のいる場所にたどり着くと、さっそく夫が改めて「Congratulation!」と抱きしめてくれました。続いて私が試験に落ちてアメリカ人になれないんじゃないか?といつも心配していた娘も駆け寄ってきました。

娘は小学校で「Pledge of allegiance」を毎日暗唱するので、私よりずっと正確にすらすらと言うことができます。一向に暗記できない私を心配して、この日も宣誓式に向かう車の中で何度も私に練習させ、発音や間違いを訂正していたのでした(配られた紙の文章を読めばいいだけなので、実際には暗記する必要はありません)。

「合格した?大丈夫だった?」と本気で心配した顔の娘に「大丈夫よ、ママ、アメリカ人になったよ!」と報告して抱きしめ、次に義母も誇らしく満面の笑顔で私をハグしてくれました。

宣誓式も、Certificateを受け取った瞬間も感激したけど、私はこうして新しくアメリカ人となって家族と抱き合ったときのことを、何よりも決して忘れないことでしょう。私の国籍がなんであれ家族は家族なのですが、このとき私は本当に心の底から「私は家族とアメリカで生きていく。アメリカは私の母国。」と実感することができたと思います。

この日はこのあと、せっかくダウンタウンに来ているのでダウンタウンにしかないカフェに美味しいコーヒーを飲みに行き、帰宅してからは「アメリカンなディナーにしよう!」と夫が正統派のハンバーガーを作ってくれて、アイスバーグレタスに大きな輪切りトマト、ビーフパテにケチャップとマスタードたっぷりのハンバーガーを家族みんなで食べました。

また夫の兄家族からも祝福したいということでFacetimeで家族全員画面から「おめでとう!」「So proud of you!」と何度も言ってくれて、ここでもまた私が思っていた以上にみんなが大喜びしてくれるのに驚きました。

近所に住む友人もお祝いに駆けつけてくれて、こんなアイスクリームをお土産に・・・

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「Americone Dream」というフレーバーで、チョコレート、キャラメル、ワッフルコーンを砕いたものが入っています。ほんとアメリカンなフレーバーですが、たとえ国籍がアメリカ人になっても食べ物の好みまでアメリカ人になるわけじゃないので、私には甘すぎてほとんど食べられませんでしたが・・・

宣誓式の一日はこんな風に終わり、本当に賑やかで楽しくて感動的な一日でした。

思えば15年前、あのF1ビザ取得のためにアメリカ大使館に用紙を提出した日から今まで・・・自分の人生がこんな風に展開することは予想していませんでしたが、かといって絶対にこうならないと思っていたわけでもなく、日本を出てそれきり戻らないという人生もあるかもしれないと、いつもどこかで考えていたような気もします。

思い切った決断をしたね!よくできたね!何故?!と質問されることも多いですが、それについてはまた今後改めて詳しく書いてみたいと思います。

今はただ、ずっと懸念であった「海外で生活する外国人」という自分のステータスの不安定さがすっきり解決された!という爽快感と達成感でいっぱいです。

以上、長いビザ・市民権シリーズ、読んでいただいてありがとうございました。 

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