アメリカ企業で人を切る その2

ども、Masaです。

前回は、ヒューマンリソース(人事)から、「あいつがやばいからきっちりと指導するように。改善されなければ、クビにするように。」と言う話でした。
今回は、そんな指示を受けて、どうしたかをお話しましょう。

 

生まれて初めて「人を切れ!」と言う指示を受けた私。マニュアルには、淡々と「こうなったらこうしろ」、「ああなったらあれをやれ」とか書いてあります。もちろん、そこには「感情」は全く入っていません。「人対人」なので、必ず感情が介入してきます。

そのころの私、若かったこともあり、また、アメリカでの経験もほとんどなかったので、かなり悩みました。もともと、人に対してかなり気を使う性格ですから、

「もし、やばいことになったらどうしよう。」

とビクビク。

「最悪、刺されるかもしれない」

なんて思っていました。自分の「感情」を極力抑えて、人を指導しなければならないことの難しさを痛切に感じました。

人事の言うとおり、まずは、彼を呼んで、彼の言い分をよく聞き、さらに会社の言い分を理解させて、目標を立てさせる必要があります。以下、かなり端折りますが、確かこんな感じだったと思います。

 

まずは、メールで面談の時間を決めます。彼の名前、アンディーと言うことにしておきましょう。

「仕事のことについていろいろと話したいんだけど、XX月XX日午前XX時にオフィスに来てくれるかな」

予定日、予定時間、彼が私のオフィスにやってきます。

 

彼:「こんにちは。なんでしょうか。」

私:「お、元気?ちょっとそこに座ってくれるかな。時間を取ってくれてありがとう。」

彼:「はい。」

 

彼はもともとあまり人付き合いのうまい人間じゃないんですね。なので、結構無愛想。正直、もし彼と、ボスと部下の関係がなければ、絶対に付き合いたくない人間。そんな彼の表情が、こちらの不安をかきたてます。

 

私;「どうかな、最近。アンディーは、XXとYYについて進めてくれてるよね。うまくいってる?」

彼:「ええ、まぁ。XXについてはXX日に報告済みです。」

私:「ああ、あれ、見せてもらった。期待通りのデーターだったよな。アンディーの設計が良かったってことだ。」

彼:「はい。」

 

正直、私は、どう話を切り出したら良いのか、タイミングが全くわかりませんでした。

 

私:「ところで…、最近、回りとはうまくやってる?ビル(同じグループの人間)と共同でXXの設計をしてるんだったよね。」

彼:「いや、彼、あまり協力してくれないんで、私のできるところをまず自分でカバーしてるんですよね。」

 

とにかく、私としては、会話を本筋のところに持ってこなければなりません。ジワジワと話を近づけます。

 

私:「そう、で最終的にどうまとめるのかな。」

 

と、誘導尋問します。

 

彼:「彼の結果が出てきて、それを私の結果と併せて、それを元に最終的に設計を決めます。」

私:「いや〜、それだと時間がかかり過ぎて、納期に間に合わないと思うけど、どうかな。ビルとは逐次話してるのかな。」

彼:「2、3日前に話しましたけど。」

 

ぼちぼちツボに近づいて来ました。

 

私:「この前、ビルともXXの進捗について話したんだけど、あまりうまくいってないとか言ってたんだけど、どうかな。」

彼:「それは、彼が私に必要な情報を伝えないから…。」

私:「彼の話によると、アンディー、君がほとんど話さないから情報の受け渡しができないって言ってたんだけど、本当かな?」

彼:「いや…。」

 

では、ここで一気にいきましょうか。

 

私:「アンディー、君の毎日の頑張りには感謝しているし、出してもらう結果も正確で助かってる。ただ、回りとうまく動けてないんじゃないかと思うことがたまにあるんだよね。俺達ってさ、グループで一つの製品を作り上げてるわけだから、そこから一人抜けただけでも、絶対に良い物を納期までに完成させることってできないと思うんだよね。アンディー、グループの中にうまく溶け込めているかな?話しにくいとか、そう言うこと、ある?」

彼:「ええ、まぁ。回りが私に対してあんまり協力的じゃないから。」

 

さて、ぼちぼちバシッと決めなきゃいけません。おそらくアンディーも、こちらが何を言いたいのか、察しているでしょう…。と言うのは、阿吽の呼吸を期待する日本人かもしれませんけどね。なので、単刀直入に。

 

私:「単刀直入に言うと、君にもっと積極的にグループの中で働いてもらいたいと思ってる。人事からもそう言う指導が来てるんだ。君の技術能力は我々にとってなくてはならない。でも、君の能力だけじゃ、良い製品はできない。みんなで創りあげていくものだ。だから、個人プレーじゃなくて、グループプレーに努めてもらいたい。」

 

そして、私は彼の反応を待ちます。

 

彼:「分かりました。で、具体的に私はどうすればいいんでしょうか。」

私:「正直、人事からは、この先90日間で、君が回りと協力して仕事ができるようになるように、私に指導をするよう依頼がきてる。」

 

「90日宣告」については、彼も知っています。つまり、自分がどういう状況に置かれているのかこれでわかったはずです。

 

私:「じゃぁ、これから二人で計画を立てよう。それぞれのマイルストーンに目標を作る。楽勝に達成できるような目標じゃぁダメだ。君の技術力は全く問題がない。だから、何に対して目標を作るのかはわかってるよね。」

彼:「わかりました。お願いします。」

 

ここで彼の出方には二通りあると思います。

・私の意見を聞き入れず、今の自分を続ける。数日後に私の意見を聞き入れるか、退職願を出すか。あるいはそのまま90日間を続け、「クビ」になるのを待つか。
・私の意見を全面的に受け入れ、自分改革に努める。

「90日宣告」について知っている彼は、もし、自分自身がその期間で人に認められるようにならなければ、自分がどうなるかを知っています。なので、このまま自分を続ければ、「クビ」になるか、「クビ」になる前に自分で会社を辞めるかのどちらかですね。自分改革に努めれば、これから先も、この会社で働くことができます。

 

と言うことで、幸いにも、彼は自分の会社に対する至らなさを認め、その後、グループの中でメンバーとうまく働くことができるようになりました。

私と彼の間にも、特に大きなわだかまりもなく、彼とは常に笑顔で話すことができるようになりました。めでたし、めでたし。

 

これは、うまくいった例ですが、実は、悲惨な例もあります。詳しくはまたの機会に書こうと思いますが、その悲惨な例は、私自身でグループのあるメンバーをクビにしなければならなかったことです。辛かった…。

人を管理する人間は、どんなことも対しても冷静に対処し、チームにとって最も良い判断をすべきだと思います。そんなに簡単なことじゃありませんよね。経験も必要です。

がんばりましょ…。 

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