アメリカ企業で出世街道を10倍うまく歩く方法ーうまい転職の仕方

今回はこのシリーズの最終回に当たって、アメリカ企業で出世街道を歩くのに最も大切なステップ、転職についての考えてみましょう。アメリカ企業で働く以上、殆どの人は転職を経験するはずです。おそらく、それも数回経験する人が殆どでしょう。転職に至る理由は2通りあります。一つはレイオフなどに起因する自分の意志に反しての転職。もう一つは、キャリアを伸ばす為に自発的に転職する場合です。今回のお話は特に、後者の場合についてですが、前者の場合も一部は参照になるかも知れません。

なぜアメリカの企業でキャリアを伸ばす為には、転職が必要になるのでしょう。それは、アメリカ企業による人事管理の方針に起因しています。日本企業の形態は、あの超人気ドラマ『半澤直樹』に見られるように、人事部の主導の下に、社員は違った部門を数年間ごとに回ります。例えば、半澤直樹の場合は、新人研修の後は、大阪支店の融資課に課長として数年、そして本社の営業2部に次長として数年勤めた後、あの様な事に巻き込まれなければ、その後に他の数部門を回った後で、部長か、支店長の地位についた筈です。広範囲の仕事に精通する事は、出世には必要不可欠ですが、日本の会社は人事部がリードして、各社員を計画的に社内で回していきます。これは、系統だった人事育成のプロセスが確立しているから出来るのです。

アメリカの会社の人事部は、この様な形で社員を育成しようとは考えません。従って、社内で経験の幅を広げる機会がかなり限られてしまいます。幅広いエリアでの経験を積むには、仕事人生の中で数回転職する必要があります。景気が上向きになった今は、転職自身は結構簡単です。皆さんもその気になって職探しを始めれば、最悪でも4ヶ月内には新しい仕事に就いている事でしょう。

ところが、キャリアの向上に有効な転職となると、話は違って非常に難しくなります。私は今までに2度仕事を変わっていますが、今振り返ると両方ともキャリアの向上にはマイナスの転職だったと言わねばなりません。私の転職はトータル5年のキャリアロスになったと見ています。

転職の一番の難点は、今まで築いてきた人間関係を捨ててしまうことです。前回の投稿で述べましたが、出世の鍵は、社内でのネットワークです。あなたの業績と可能性を広範囲の人に認めてもらう事です。結果を出し実績を積み、ネットワークを広げ、社内で認めてもらうには三年から五年かかります。転職とは、この人間関係を捨て、新たな場所で人間関係を一から作り直す事です。企業で働く人達のストレスの要因の筆頭は人間関係です。ネットワークを作るのに、私達は膨大なエネルギーを費やします。転職はこの努力の蓄積を捨ててしまうのですから慎重に行わなければなりません。

あなたの今の会社内で、人間関係の価値を客観的に表す数値は、年収と部下の数です。採用の過程で、あなたの持つ経験や専門知識はインタビューや適性試験で正確に評価できます。あなたがどれだけ人間関係を作るのがうまいかの評価は、過去の仕事仲間を広範囲に渡って調査するしかありませんがそれは不可能です。従って、年収と部下の数があなたの人間関係の上手さの指標と見ることになります。キャリアの向上に有効な転職とは、収入と部下の数が現状維持の場合を上回る仕事を見つける事です。

まず、今の会社での今後5年間の給与報酬と部下の数の予測を立ててみましょう。あなたは今まで、出世街道をうまく歩いて来て、今後5年、毎年少なくともベースに3%上乗せしたピレミアムでの昇給が見込まれるとします。従って、5年間でのプレミアムの累計は15%になります。あなたのグループの成長を見積もって、5年後はあなたのグループの人員は20%増としましょう。この収入と部下の数の伸び率は、あなたの今までの実績と、あなたが数年かけて作り上げた人間関係の両方があって初めて可能になります。転職後の新しい会社では、人間関係を築くまで、昇給はプレミアム無しのベースで、そして部下の数は据え置きと考えるべきです。

あなたが新しい会社の製品を理解し、会社文化に精通し、人間関係で一目置かれるには5年かかります。その5年の予測されるロスを、次の会社のオファーに含めないと、転職は実質ロスということになり、キャリアの後退と考えなければなりません。

転職の際は、年収と部下の数にはこだわって下さい。仕事に満足する要因は人それぞれで、全ての人が出世街道をとことん登りたいと思っているわけではありませんが、事、社長への道となると、年収と部下の数以外に客観的に人を評価する物差しがありません。他のインタンジブルな要因は、客観的な基準をパスして始めて意味が出るのです。転職を考える時は、5年間の昇給のプレミアムの累計と部下の増加を条件とし、それを満たない仕事はパスすることが大切です。

キャリアの向上につながる転職は、時間をかけ、計画的に見つけるものです。転職が簡単なアメリカでは、気軽に仕事を変えがちですが、そこには落とし穴があります。しっかりとキャリアプランをたて、戦略的に考え、作為的に転職を位置付けないと、キャリアの向上にはつながりません。

六回に渡ってアメリカ企業で勝ち抜く方を、私の経験をもとに書いてきました。もしなんらかの形で皆さんの参考になれば幸いです。日本人にとって、アメリカの会社で出世街道を順調に歩き、会社の社長になるのは難しいかも知れません。何しろアメリカ会社の人事管理や人材育成の考え方は、日本の会社のやり方と全く違います。この違いに早く気づき、キャリアマネージメントの軌道修正しないと、実力を出せずに終わってしまいます。

日本人がもっとアメリカ企業で躍進し、末はアメリカの大企業の社長に日本人が就任するのを見るのが私の夢です。みなさん頑張ってください! 

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「アメリカ企業で出世街道を10倍うまく歩く方法ーうまい転職の仕方」への1件のコメント

  1. シアトルのとある大学に通う留学生です。アメリカでの出世街道に関するシリーズを一通り読ませていただきました。アメリカで就職するだけでもかなり困難だと感じていますが、将来アメリカで生き残り勝ち上がっていける人材になるために、これからも必死に目の前のことに励もうと思います。

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