翻訳・通訳の修士号を取得できる米国大学院、Monterey Institute of International Studies – 2

Tamami
06/25/2012
miis.edu

前回、都会のように誘惑がなくて勉強に没頭できる、と書いたのですが、GSTIの日本語学科は私がいた当時、ほとんどが日本人。クラス全体が20名ほど、そのうち非日本人が5名だったと記憶しています。そのため、英語そのものを飛躍的に伸ばしたいと思ってもなかなか難しいものがあります。

一応、GSTIは、英語そのものの勉強という段階はとっくに終わっていて、バイリンガルで当たり前、すでに通訳・翻訳の実績もあり、プロが「腕を磨きにやってくるところ」という位置づけになっています。

実際入学してみると、そのような条件を満たしている人が大半でした。

私のように日本からいきなり、初めての海外在住経験として入学してくる人はとても珍しく、この点については入学してから卒業するまでかなり苦労したし、悩みました。

もしこれからMIISのGSTIに入学を考える人がこの記事を読んでいるとしたら、私のようなケースがあるから、日本から直接MIISに入学しても大丈夫だろう、とあまり安心しないほうがいいと思います。

GSTIは厳しい学部ということで有名です。

よく冗談で、GSTIの学生はめったにキャンパスで見かけない、教室から家・図書館に直行、ずっと閉じこもって勉強しているから、とか、パーティに参加したりダウンタウンに出かけることなく、ひたすら勉強しているのでGSTIは修道院みたい、とか言われていました。

なぜそうなるのかというと、GSTIの学生にとって、すべてのクラスが成績を決定する試験のようなものだからなのです。

たとえば逐次通訳のクラスでは、1つのスピーチを聴き、数フレーズにわけて指名された学生が逐次通訳をします。

教授は現役トップクラスの通訳者、クラスは全員高度なバイリンガル。その中で注目を浴びながらの通訳です。しんと静まった教室に、自分の声だけが響きます。ワードチョイス、グラマー、聞きやすくスムーズに話せるかどうか。1語1語、教授とクラス全員が厳しくチェックしています。

そして通訳が終わると、教授だけでなくクラス全員からも批評を受けます。「その訳語はおかしいのではないか」とか、それぞれの言語のネイティブから「そういう言い方をすると、こういう誤解がありうる」という指摘とか・・・。「良かったです」「とても上手だと思います」なんていう当たり障りのないコメントは受け入れられません。クラスメート同士とても仲が良かったのですが、授業中は友情は忘れて、本当にシビアに批判しあいました。

アメリカ人クラスメートの日本語レベルもすごいものがあります。

日本に住んだことがあって、日本語が話せる、という人は私の周りに何人もいましたが、MIISのGSTIに入学してくるアメリカ人(その他の国の人もいます)の日本語レベルはまったく違う世界です。

英語・日本語ともネイティブレベルの教授が、黒板に漢字を書いていて、ふと「あれ、どういう字だったっけ」と手がとまった瞬間、アメリカ人のクラスメートが「先生、ごんべんのとなりにくさかんむり、その下に進むと書いて・・・」とか説明し始めたときは、クラスの日本人全員感嘆のため息をもらしました。

このように日本人・日本人以外の学生ともそれぞれ非常にレベルが高いので、入学試験はなんとかクリアしたものの授業についていけずにドロップしていく学生も毎年数人いるのです。

私が入学したときは、最初の学期が始まった時点で25人いたクラスが、次の学期まで20人に減っていました。もちろん全員がついていけずにドロップしたのではなくて、途中でやりたいことが変わって別の学科に移った人なども含まれるのですが。

つらかった思い出もたくさんあります。通訳が本当にできなくて、休み時間に1人、外に出たら涙が出てきて、教室に戻れなくてしばらく立ち尽くしていたり、思い切りBマイナスをもらって(普通はA、B、Cまでは合格ライン、Fで不合格ですが、GSTIに限ってはBマイナスで不合格とされていた)、「もう退学だろうか」と不安になりつつ教授のオフィスに相談に行ったり・・・

GSTIは理論も実践も重視する学校なので、通訳・翻訳の実技を練習するのと同時に、言語、認識、コミュニケーションなどに関する論文も年に何回か提出します。また、通訳であれば他の言語の学科と協力して複数言語の通訳が必要な国際会議を想定し、合同イベントを開催するといったプロジェクト、翻訳であれば日本語・英語それぞれのネイティブが一組になってお互いのプルーフリーディングをするなど、クラス以外の時間はすべて自分の練習・勉強に没頭できるというわけでもなく、いろいろな締め切りが重なって眠る時間もなくなり、真夜中に泣きそうになりながら作業をしたこともありました。

次回で最終回となります。 

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「翻訳・通訳の修士号を取得できる米国大学院、Monterey Institute of International Studies – 2」への1件のコメント

  1. 初めまして、突然のコメント失礼いたします。
    ブログを読ませていただき、私も同大学院への進学に関心が湧いたのですが、質問がありコメントさせていただきました。
    投稿者様は、出願の時点で英語力はいかほどだったのでしょうか。
    大学のサイトを見たところ、必要スコアはコースによると記載されており詳細な情報を得ることができず苦戦しております。特に投稿者様が、他の学生と異なり始めての海外在住経験者であるという点に驚きました。海外在住経験がない状態でどのような要件を満たすことが必要とされるのでしょうか。
    また、通訳コースは投稿者様が受講されたもの以外にも複数あるのでしょうか?
    参考までに、お伺いしたくコメントさせて頂いた次第であります。
    ご多忙であるとは思いますが、どうかよろしくお願いいたします。

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