自由の国アメリカから別世界へ ー その2

メキシコの貧富の差を目の当たりにした先回。

自由の国アメリカから別世界へ ー その1

日ごろ特に大きな問題もなく、毎日を過ごしているわれわれにとって、メキシコに入って目の当たりにした「貧困」は、大きな衝撃でした。

「これって、まじかよ...」

と言うことがあちこちに。

 

さて...

まずは、ティファナのボーダー(国境)付近を見てみることにしましょうか。こうなってます。

ティファナ国境

国境の北に大きな駐車場があります。ここに車を停めて、歩いてボーダーを越えてメキシコに入っていきます。車の場合には、行きはささっと入ることができます。確か何か書類が必要だったと思います(失念しました)が、事前に入手可能。車の場合大変なのは、メキシコからアメリカに戻るとき。写真にもあるように、長い列ができます。季節や時間にもよりますが、1~2時間は待つことを覚悟しておかなければならないでしょうね。

で、先回話したタクシー乗り場があります。黄色い車がたくさん並んでます。

 

では...話を続けましょう。物語的にお話すると、情景がよく浮かんでくるでしょう。

 

われわれは、車でエンセナダまで南下することに。

車でティファナからエンセナダまで行くには、ひたすら1号線を南下。1号線はティファナを抜けると太平洋沿いを走る。結構眺めは良い。

右手の海側を見ていると気分すっきり、すがすがしいが、左手の陸側を見ていると...一気に気分が暗くなる。

と言うのは、陸側には貧しい人達の住居と思われる掘っ立て小屋がいたるところに点在しているから。写真に収めておけばよかった...。

掘っ立て小屋は、かなりの荒地に立っている。日本のホームレスさんの住居のような快適なものではないことは一目見てわかる。どこかから拾ってきたと思われる板、ブロック、段ボール箱などで、それこそ、風を凌ぐためだけに上下左右を囲っている感じ。集落のようにはなっていなくて、あちこにち小屋が「点在」している。多分、日中はそこにいることはなくて、夜間、寝るためだけに使っているのだろう。

右側の海岸線に立つ家は、かなり立派なものが多い。メキシコでもかなりお金持ちが住む家なんだろう。サンディエゴでも、海沿いに建つ家は、軽く1ミリオンドル(8000万円)を超えることから考えても、メキシコでも相当高価であることは間違い無いだろう。

なので、右側と左側が本当に対照的。

 

さて、どのくらい時間がかかったかよく覚えていないが、多分、ティファナから2時間くらいかかっただろうか、エンセナダに到着。

われわれは、街のハズレにあるちょっとしたモールへ。モールと言っても、カリフォルニアにあるような、ショッピングセンターのように大きなものではなく、小さなショップがいくつか集まったようなイメージ(私の記憶が正しければ)。もしかしたら、道路沿いに小さなショップが軒を連ねる「繁華街」だったかもしれない。覚えているのは、「繁華街」と言ってもかなり殺風景だったこと。

モールの脇に個人経営の小さなタコショップがあったので、そこで昼食を取るをことに。ショップと言っても、椅子や机はなく、立ち食い。肉を焼いてもらって、タコの皮の上に乗せてもらう。そこに、自分の好きなレタスとか、アボカドなどのトッピングを好きなだけ乗せて食べる。日帰り旅行にいっしょに行った知り合いによれば、ここが結構美味しいとか。

 

で...

 

知り合い:「面白いところに連れて行ってやる」

私:「え?どこ?何?」

知り合い:「ショッキングなところだ」

 

と言うことで、「面白いところ」に行くことに。

(私の記憶が正しければ)住宅街をくねくねと走る。その辺りは(確か)道路は舗装されておらず、車が走ると相当の砂埃が舞い上がる。周りにある家はそれほど大きくなく、ちょうど日本の建売住宅(もちろん平屋)の小型版が並んでいる感じ。

 

と...トロトロと走っていると、道路の左側と右側に明らかに違いを感じる地域に入って来た。左側は建売住宅、右側は...草が茂る。荒地とは言えないが、まばらに建った建物が見える程度。

「ふむ...なんだこの違いは...」

と思っていると、車は右折して荒地の方へ。

エンセナダ貧困
from The Baja Viewfinder

昼過ぎと言うのに、人の気配がまったくしない。ボコボコに穴の開いた未舗装の道路に沿って、国境近くで見たポンコツタクシーよりも、さらにポンコツの車が数台並ぶ。トランクの上に、無造作に置かれた衣服が見える。

とにかく、相当な違和感を感じる。ちょっと恐怖感も加わっているような...。

 

知り合い:「ここ、この辺りで最も貧しい人達が住む地域だ」

私:「...」

知り合い:「俺も、メキシコにはよく来てるけど、ここほどひどいところは見たことがない。」

私:「...なるほど」

我々は車を降りて、辺りを少し歩いてみる。鼻を突くような匂いが漂う。

「...どこかで嗅いだことのある匂いだな...」

据えたような匂いの他に...公衆トイレの匂いだ!アンモニア臭いと言うか、なんと言うか...。

 

しばらくすると、子供たちが集まって遊んでいるのが見えてきた。よく見ると彼らの髪の毛はボサボサ、ずいぶん洗髪してないんじゃないかと思うほど、ベッタリとしている。着ているものはボロボロ。草履を履いている子もよりも、履いていない子の方が多い。その周りを囲んでいる親たち、...と思われる数人も同様、言葉にしたくないような格好。

私:「(こりゃ、ひどい)」

...と、私の気持ちを察したかのように、

知り合い:「見たくないだろ。これが我々と同じ人間が住む場所なんだ。」

泣き出したくなるような光景が広がっている。

話によれば、彼らの衛生状況は想像を絶するほど悪いとのこと。掘っ立て小屋にはトイレなどと言うものはない。なので、ところどころに穴が掘られていて、住人たちはそこに「大小」をする。水道などあるはずはなく、雨水や溜水を飲んでいるらしい。食べ物はどこから仕入れるのか...。穴に置かれた「大小」は、日が経つと共に、地面の奥底に吸収され、やがて川に流れ込む。その川の水を街の人達が飲料水として飲む...。消毒はされているであろうものの、その話を聞くだけで...。メキシコでは、「生水は絶対に飲むな。氷も絶対に食べるな。」と言われる所以がここにある。

 

私:「ねぇ、行かない?もう十分だから」

1秒たりとも見たくない光景に我慢ができず、知り合いにお願いする。

人生、かなり生きてきて、良い物、悪い物、さまざま見てきたが、これほどまでに「ひどい」光景を見たことがなかった。目を覆いたくなるほどの「ひどさ」だ。

 

われわれは、暗い気分のまま、エンセナダのダウンタウンに向かうことに。

エンセナダ。活気のある街。人々が談笑しながら、食事を取っている。スーツにネクタイを締めたビジネスマンも歩いている。高級レストランが軒を連ねる場所も。その脇には、どう見ても10万ドル(800万円)はくだらない、スポーツカー、ポルシェ911が停まっている。

ほんの30分ほど前に見た、「目を覆いたくなるような光景」。ここは別世界かと思うほどの違いである。

 

われわれはレストランで食事をし、帰路に着く。

正直、一刻も早く、アメリカに逃げたい気分だった。

 

次回は、誰も見たことのない、メキシコの夜の世界についてお話しします。ご期待ください。

 

P.S. メキシコから戻った3日後、家族4人、食中毒に。どうやら、メキシコで食べたものがあたったようで。昼食に食べたタコが悪かったのか、夕食に食べたカニかサラダか。ちなみに家族全員から、O157菌が見つかりました。死ぬかと思った...。 

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4 comments on “自由の国アメリカから別世界へ ー その2”

  1. ひゃぁ~!楽しみにしていた記事とはいえ、文面からも悪臭が漂うかのような
    恐ろしさがあります。。。

     みんな同じように貧しいのは豊かさを知らなければ我慢もできるかもしれないけれど、(誰もが裸足とか、誰もが裸でだれも電気も水道も知らないとか・・・)
    右と左で雲泥の差というのは残酷すぎると思いました。

     帰国後O157に全員感染って・・・ほんと、命があってよかったですよね。

    続き固唾をのんで、覚悟して待ってます(笑

  2. Hisayoさん、毎度コメントありがとうございます。

    日本人の方々にも見ていただきたいんですよね。本当に想像を絶するほどです。その昔、日本でもこのような差別がありましたが、多分、そんな感じなんでしょう。貧しい人達に寄付をしなければならないと言う気持ちになります。

    O157。家族でかかるってのは珍しいでしょうね。多分、タコショップで食べたタコが原因だと思います。次回、メキシコを旅行する際には、必ず予防注射を打っていこうと思います。

    次回は、皆さんお待ちかね(?)の夜の世界です(笑)。

  3. 初めまして、記事読ませていただきました。大変興味深かったです。
    大学生なのですが、現在ゼミでメキシコの貧困状況とNAFTAとの関連について考察しているのですが、エンセナダ貧困の写真を使わせてはいただけないでしょうか?
    突然の申し出で申し訳ありません。
    よろしくお願いいたします。

  4. T.Sさん、初めまして。コメントありがとうございます。ええ、写真を使っていただいても構いませんよ。ただし、その写真の下にあるfrom …を載せてくださいね。あるいは、Google ImageでEnsenada povertyと検索すれば、それ系の写真がたくさん出てきます。出どころをしっかりと記載すれば著作権に引っかかることはないと思います。

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