なんちゃって音楽留学のすすめ

お母さんは自宅でピアノの先生。7歳上の兄貴は、僕が物心付いた頃すでにフルタイムで演奏家活動。こんな「音楽をやって当然(?)」という家庭環境で育ったため、漠然と「将来は音楽に関わる仕事をする」ということ常に頭にあったのが高校生の頃。

ただ、あんま目立ちたがりだったわけでもないし、「演奏家になるんだ」という固い決意があったわけではなく、「好きなミュージシャンの周りに自分を置きたい」みたいな若干ミーハーな感覚。

クラシックから世界の民族音楽、メタルからアイドルものまで。ひたすら雑食な兄の影響で、色々と聴いてはいたが、やはりクラシックは今でも苦手。何となく「今熱いバンドが全部アメリカ出身」「聴いてる分にはジャズがしっくりくる」というのがきっかけでアメリカに興味を持つ。さらに細かく言うと、小林克也より伊藤政則。

中学生時分、なんとかドラム、ギター、ベース(全部の兄からの借り物)はそれなりに触り始め、高校に入る頃には周囲に「それ系」の趣味を共有する仲間が増える。

「今月のアレ読んだ?」「先週のアレ、ビデオ録ってたら貸してくんね?」「このCD、やばいわ」「アイツ、あの曲の耳コピしたらしい」「来月のアレのライブ、行かね?」

当時自分の進路について深く考えたことはなかったし、卒業が危ういほどに5教科の勉強は苦手。大学受験なんて考えたこともなかったので、やはり漠然と「専門学校かな」という展開。

ただ、母に言われて「今後について」の資料収集を開始するが、なんかパッとしない。というか、興奮するものがない。都内の専門学校、物凄ぇ値段高いし。

「どうせ試しに音楽系専門学校を見るなら、邦楽は基本的に聴かないし、アメリカにどんなのがあるか調べてみるか」というのが、留学を意識したキッカケ。

当時日本でも圧倒的に名を馳せてたのが、ボストンのバークリー音楽院ロスのMI。この二校は(常日頃、音楽アルバムのライナーノーツを見て演奏参加者を確認したりしてしまう)当時の僕には鼻血モノでした。

ま、これらは今でも相変わらず人気校ですが、当時、周囲の年上で、ギター、ベース、ドラムのどれかで音楽留学をした人達を探しても、ほぼ間違いなくこの二校が出身校でした。

「これは、もう出願か?」と勢い余るところで、ふと疑問が頭を過ぎる。

「本当に演奏を勉強したいのか?」
「授業は全部英語だよな?どうすんだ?」

ここから、以前書いたように「TOEFLスコア」と「自費留学」の事情により、最終的には「米国の短大付属のESLプログラムで留学開始」に絞り込まれるわけですが…

僕以外、「アメ10」投稿者にもコミュニティカレッジ(米国の州立短大)を経てる人が多数いますが、今思い出しても(たまたまとは言え)本当に正解な選択でした。

まず値段が安い。
全米のどの学校も例外なく、「学費の値上がり」は頭の痛い話題です。特に、私立公立に関係なく、年々値上がりの速度が加速しているのは四年制大学。情報量が限られる留学生だと「行きたい大学・都市」「名前のある大学」に目が行くものですが、やはりそこでもあえて値段に注目してコミュニティカレッジを検討してみてください。

とても出会いに恵まれていた僕の場合、留学当初のシアトルを経て南アイダホに渡って後、「College of Southern Idaho」、「University of Mary」、「Friends University」と転校と編入を繰り返しました。

これらは、間違いなくコミュニティカレッジで「音楽」と「英語」のキッカケを貰ったお陰で、「学費(tuition)免除」でした。奨学金・学費免除と割引は、音楽に限らず、「一芸(スポーツ、芸術系全般)がある」という人は問い合わせる価値があります。

ま、どの学校でも「雑費(fee)」が必ず発生するので僕の場合は各学期2~3万を払いましたが、アメリカの奨学金、うまくコネが繋がると意外と簡単で美味しいシステムです。

(良し悪しがありますが)競争が少ない。
短大により、生徒数が数万人という学校も存在しますが、それでも州立四年制大学よりは小規模になるはずです。

僕は一人でじっくり取り組みたいほうなので、周囲の色々な雑音が苦手です。数回コンペとかにも駆り出されてましたが、基本それも苦手です。てか、演奏自体に苦手意識があるから練習してんのに完成度なんて競えるか、みたいな。

ただ、圧倒的に競争が少ないため、そこそこ演奏力が認められると、ほとんど行動を起こさなくても、地元のレストランやホテルでのパーティ、バーでの演奏の仕事とか舞い込んでくるものです。アメリカは、一般的にまだ生演奏を好んでくれたりしてくれる土壌なので…

少し話がそれますが、以下、現在ウィチタ内外で僕が関わる一般的な演奏のギャラ例です。
• レストラン(拘束3時間): $70~100
• 各種イベント・パーティ(拘束2~3時間): $70~300
• バー(拘束4時間): $50~75
• 教会(拘束3~4時間): $50~130
尚、よほどの事情(チャリティ目的など)がない限り、個人的にギャラが$70未満の仕事は他に回します。その他、移動距離が長いものや、リハーサルや別の段取りがある場合は、時給換算で追加請求となります。普段僕は関わらないのですが、夏場(5~8月)のミュージカルの演奏などは、週給$800となりますね(その他の季節は基本一晩$50)。僕の場合は、これらの内容を週2~4本ペースでこなします。ウィチタ、田舎な割には盛んです。これらは、税金など面倒な面もありますが、割の良いバイトです。

その後、なんだかんだで「音楽は趣味」となり、ユル~い音楽留学の代償を払った感がある(?)相変わらず下手っぴな小生。でも、あの「英語まだ全然だけど、なんとなく演奏できるから人が集まってくる」という勢いだけの当時は楽しかった。

あくまで個人的な意見ですが、「これから留学を考えてるいるが、資金面や英語に心配がある」という音楽志望の方にも、「キッカケ」としてコミュニティカレッジはお薦めです。長文、失礼。
 

Visited 71 times, 1 visit(s) today

14 comments on “なんちゃって音楽留学のすすめ”

  1. Tatさん、始めまして。新米ブロガーの美加です。音楽留学でコミカレから私立大学で奨学金、そして就職。とても素敵な経験ですね。ひとつひとつを掘り下げて、例えばどうやって奨学金を探し、申し込むか、など聞きたいです。わたしも今カレッジでJazzのクラスを取りながら将来はギグの依頼がもらえるベーシストに成りたいと思っているのでネットワーキングのこつとかも投稿してくださいね。

  2. あら、美加さん、はじめまして。
    がんばってますねぇ、ちゃんとクラスを受けて勉強してるなんて。

    僕、実はまともに習ったことないんですよね(ずっと昔から教則ビデオオタクではありましたが)。たまに大学のゲスト講師とかしてますけど、毎度「やっぱ今からでも習ったほうが良いな」とは頭を過ぎります。いつか「一週間コース」みたいのを、NY(Drummers Collective)か、LA(LAMAまたはMI)で体験したいんですけどね。

    やっぱ高いので毎夏に値段をチェックしてはタメ息ついてますわ。

    なんか「音楽で小銭(または学費)を稼ぐ」については、また別の機会に書かせていただきます。「音楽でお金持ちになる」について、誰か書いてくれないかしら…

  3. すみません!よくわからなくて色々沢山のっけてしまいました(´・_・`)
    文字数制限で消されてしまったのかもしれません(´・_・`)
    ベースでアメリカのコミュニティカレッジに留学したいと思っている学生なのですが、成績は中くらいで、向こうのベーシストに負けないほどのテクニックを持っているわけでもありません。
    tatさんが受け取っていた奨学金というのは、どういったものだったのでしょうか?(´・_・`)何度もすみません

  4. Moenoさん
    コメントありがとうございます。
    アメリカでは「(返済不要、ローンではない)奨学金」というのが基本的にどの四年制・二年制学校にもあります。場合により、学費全額免除。場合により、一部免除とよります。場合により、少し過剰金として(学費より奨学金額が多いため)お金を貰えます(※これはもう時代的に本当にごく稀だと思いますが、昔はありました)。

    音楽またはジャズに絞った場合、この金額を決めるのが、ジャズ担当教授です。

    物凄い重要なのが、コミカレでも四年制でも必ず「行きたい地方を絞る」「学校を何校か絞る」などをして、各校のウェブサイトに行き、「Jazz」などのキーワードで責任者を探すこと。そこから「YouTube」などでその教授であったり、その学校の演奏風景がないかを確認。学校自体のレベルであったり、関係者であったりを探し当て、より多くの情報を得る、という感じですかね。

    学校により、田舎過ぎてキャンパス外にミュージシャンがいない、というケースも星の数ほどあるのがアメリカなので、その辺も含めて色々検討されたほうが良いかと。
    (「人が多い=物価が高い」ので)

    必要に応じて、お気軽にフェースブックなどでメッセージください。実際大学とかとはそこで繋がれるケースが多いので、そこにバンバン演奏関連の動画リンクを貼るとかしてアピールするのも悪くないと思います。はい。

    また是非。
    たつや

  5. はじめまして。今アメリカへの音楽留学のために資金を貯めています。バークリーは高いし、英語もできないし、でもジャズはうまくなりたいし、英語も話せるようになりたいと希望をもち毎日働いています。
    学校、地域、アドバイスいただけたら嬉しいです。

  6. CAさん、
    ご拝読とコメント、ありがとうございます。

    さて早速ですが、何年間行きたい、全部合計でいくらなら出せる、のような具体的な目安はありますか?楽器は何で、どのような面なら妥協ができて、などなどもあると良いです。

    僕の個人的かつ限定的な経験が基準で申し訳ないのですが、やはりどこの州に行くにしてもコミュニティカレッジがお薦めです。

  7. 初めまして。
    コミュニティーカレッジというのは修業年数にどのくらいの幅があるものなのでしょう。またそれらは希望制でしょうか。
     
    一般大学を出ています。万が一のためにも、教職員など他の資格もとれるような選択肢もあればと思います。楽器はチェロです。

  8. かんちゃんさん、
    ご拝読ありがとうございます。

    コミカレの規模や立地により幅があるので、一概に「こう」とは言えないのですが…

    すいません、まず「修業年数」というのはどのような意味を指すのかが分かりませんでした。(各生徒の在籍期間?)

    教職について、アメリカも日本と同様、(こちらは州単位の)免許制です。音楽教育専攻、扱いは一専攻なんですが、内容は「音楽+教育」というダブルメジャーのようなもので、かなり極端に多忙な作業量です。アメリカ人で最短4年半、最近は5年超かけて修了する分野となっています。

    また外国人としてアメリカでこれを目指す場合、もう一つ気にしておきたいことがあります。一部の国を除いてアメリカの免許は移行不可なため、日本での使用はできません。またアメリカ国内でも、就労ビザが必要な外国人を公共の小学校〜高校で雇う事例はほぼ皆無なのが実情です。

    また何か僕で答えられそうなことがありましたら、かなり私見が挟まりますが、いつでもご遠慮なく。

  9. はじめまして。色々悩んでいたところここへ辿り着き、大変勉強になりました。

    私は今年9月に大学を卒業予定の学生です。作曲や漫画製作をしていて、本当は芸術系学科に潜り込みたかったのですが、叶わず。地方大学の国際系学科で学びながら演劇や舞台用の作曲をやってました。

    今はできるなら、アメリカで作曲(特に舞台音楽)を勉強できたらいいなと思っています。この場合、コミュニティカレッジへ行って、そのあと音楽院等へ編入というコースがいいのでしょうか。作曲と言ってもDTMの知識はなく、ピアノを10年やっていたという位です。TOEFLやTOEICは受けたことがありません
    が、別の試験のスコア換算値では、TOEIC630点程度でした。

    長々とすみません。
    アドバイスいただければ幸いです。

  10. なつみさん、
    ご拝読とコメント、どうもありがとうございます。

    まず総額で「どのくらいのお金なら費やせる」のか、決めてから…

    所謂打ち込み等のDTM知識や経験は音楽留学にはあまり関係ないのですが、スコア関連のソフト(Finale、Avid Sibeliusなど)の知識はないと厳しいかも知れません。ま、入学してから取り組まれる程度で大丈夫だとは思いますが。

    (音楽院だと競争率が高いため難しいと思いますが)コミカレや四年制の学部課程ならば、「奨学金を貰いながら」という取り組みで大丈夫だと思います。その場合、「専攻: Music (Composition)」「楽器: Piano」という形が一般的だと思います。

    なつみさん、舞台音楽の作曲と、もう具体的な方向が定まっているので、コミカレ~音楽院または四年制大学の学部課程~(作曲では多いと思われる)大学院、という進路を考えた場合、かなり(やはり色々な面で劣りがちな)コミカレは学校選びに時間を費やしたほうがいい気がします。

    そこまでの情報は日本の大小留学斡旋会社にも無いのかな、と思うので、ある程度自分で情報集めないといけない気がしますが(どの会社からも「音楽、有名ですよ」的なお薦めが、あまり音楽を知らない・アメリカで音楽を勉強したことのない担当者から挙げられる感じ)。

    また、舞台音楽という方向も定まっているので、やはりそこそこの規模の都市でないといけないのかな、とも思います(音楽はある程度立地条件に強く影響されるものだと個人的には思うので)。

    ちなみにTOEFLは、決して安くは無いので申し訳ないのですが、一度受けてみることをお薦めします。ある程度まで事前に勉強をして、今の英語のスコアがどの程度のものなのかを見てからだと、そこから決められる(絞れる)こともありますので。ま、参考までに。

    またいつでもご連絡ください。

  11. こんにちは。記事を拝見させていただきました。
    私はいま、日本の四年大を休学してアメリカのシアトルにあるコミカレに通っています。(今年の3月からです)私は昔から音楽に興味があり、音楽留学も考えていましたが親の反対もあり、1年間だけの語学留学としてここに来ています。しかし、私はコミカレを卒業して(日本の四年大をやめて)OPT(コミカレ卒業に1年間働くことができる制度)を使ってアメリカで音楽に関わる仕事がしたいです。しかし、いろいろ調べてみても主にどんな音楽に関わることのできる仕事があるのかよくわかりません。もし現時点で具体的にこの仕事が絶対にしたい!というのが決まれば、親にも説得できるのですが、正直、アメリカで音楽に関わる仕事がしたいだけしか現時点で決まっておりません。で、シアトルの北のほうの位置にいるのですが、私のいるこの地域はどうも音楽との関連性が強いとは言えません。なのでコミカレ→コミカレの編入?も考えているのですがそれは可能なのでしょうか?
    長文申し訳ないです…どうかアドバイスください( i _ i )

  12. Yayaさん、
    今回は旧い投稿なのに読んでいただき、またコメントまでしていただいて、どうもありがとうございます。

    まず、単刀直入に言います:お気持ちは重々承知していますし、昔からの思いも理解できますし、僕の個人的な気持ちで大変大きなお世話だと思いますが、日本の大学中退からの渡米はお薦めできません。その行動に出て、結局アメリカでの資金も尽き、結局学歴が中途半端に「日本中退、アメリカ途中まで」で、宙ぶらりんで結局日本に帰国という展開を数多く見ているからの一言でした。

    来れば(行けば)何とかなる場合もあるのは確かですが、非常に大変なのは理解していますが「就活~大学卒業~一度日本で社会人になる」というルートは遠回りでも何でもないので、お金を貯めながら各区切りを大切に前進していくのも良いと思います。

    日本人で音楽を含む芸術系に海外で関わる方は、結構二十代半ば以降からの渡米されている方が多い気がするので(もちろん十代での出発の方もおりますが)方向を定める前に、あまり焦らないほうが良いです。

    ちなみにコミカレ~コミカレの編入はかなり簡単です。行き先が決まり、先方からの合格をもらえたら、現在所属している学校でI-20など書類処理などをしてくれるInternational Student Advisorみたいな肩書きの担当者に相談すれば対応してくれます(「どうして転校しちゃうの?」て少し理由を聞かれると思いますが、そこは熱い気持ちを伝えましょう)。

    ちなみに、NYでブロードウェーのように観光地化されている場所を除いて、アメリカの音楽シーンは(経験されている現状と同様)結構存在が分かり難い状態で存在している気がします。

    LA、NYだけでなく、各都市のシーンは「好きで、それを追いかけている人」が知っている、みたいなだけで、夜の課外活動を趣味としない一般大衆はそれを知らない・そこに近付かない、みたいな。居住地域と歓楽街・商店街を分けて区画するのも、そういうのが影響しているのかも知れません。ただ、それもYayaさんが「音楽業界」の何をされたいのか、どんなジャンルのどんな業務に関わりたいのか、でかなり変わってくると思います。シアトルのシーン、実はかなり大きいので…

    また気が向きましたら、お役に立てるか分かりませんが、いつでもコメントやご相談ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です