アメリカで(マイナー)スポーツをやってみるには
久しぶりの投稿になります。
5月中旬に最後の春学期を終え、下旬に日本に最終帰国しておりました。
帰国後は復職し、仕事で8月から10月までカナダのバンクーバーに住んでおりました。
さて、今回は最終回ということで、自身の経験から、「留学先で(主にマイナー)スポーツをやる場合」についてまとめてみたいと思います。
1.目的とタイミング
これはメジャースポーツ(バスケや野球など)の場合は、学生のうちに行かれる方が多いかもしれません。基本的に、海外でスポーツをやる場合、大きく2つに方法は分かれると思います。「そのスポーツを主目的として行く」のか、「留学や研修、出張のついでにそのスポーツをやってみる」のか、の二つです。
僕の場合は後者なので(本当です)、スポーツ主目的のケースはあまり詳しくご説明ができないのですが、簡単に知っている限りの情報をお伝え出来ればと思います。
【高校】
留学目的にしろスポーツ目的にしろ、高校のタイミングで渡米、というケースは比較的少ないのではないかと思います。もちろん強豪校に短期留学して練習に参加、ということはあると思いますが、アメリカの高校スポーツはシーズン制なので、日本の部活の感覚で数年ガッツリやろうと思うと少しギャップを感じるかと思います。そもそも高校で行こうとすると安西先生に止められますね。
バスケなどのメジャースポーツのケースはあまり詳しくありませんが、チアの場合は、あまりにも多くの高校にチアがありすぎて、どの学校が強豪orそうでない、男女混成or女子のみ、どの大会に出ていてor出ていない、などの情報が、インターネットからではほとんど入手することができません。また強豪校を選んだはいいが、トライアウトに受からない可能性もあります。ただ、僕の感覚と経験からすると、高校生でチア部に入部している子で、本格的に競技をやりたい子は、近所のチアジムに通うケースが多いと思います。チアジムもトライアウトが年1回くらいありますが、レベル別なので、まったくどれにも入れてくれない、ということはあまりないと思います。
【大学】
コミュニティカレッジあるいは4年制大学でスポーツをやる場合、主目的であれば事前に学校を選んでいると思いますが、その場合は、「(交換)留学生入部可か」、「トライアウトの時期、ビデオ審査等は可か」、「最低登録単位数はあるか(フルタイム学部・院生のみか)」「併設語学学校の学生でも入部できるか」などは事前に連絡して聞いておかないと危ないと思います。留学先で入部を希望する場合は、上記の条件がクリアできていないとトライアウトを受けられないこともあります。また、4年制大学の部活入部が厳しい場合や、費用面、学力面で心配がある場合は、コミュニティカレッジを選ぶのも手です。学費は非常に安く、それでも学校によってはかなりのレベルのスポーツチームを持っていることもあります。また、部活生スカラシップ(奨学金)で、学費のほとんどをカバーできることもよくあるそうです。1、2年在学して、語学力や技術を高めてから4年制大学にトランスファー、というルートも、アメリカでは一般的です。
また、ただ単に練習に参加してみたい、という場合だけでも、コーチなどの許可が出れば参加させてくれることもありますので、問い合わせる価値はありだと思います。(非メジャースポーツに限る。)仮にメジャースポーツだったとしても、(日本でも強豪大学では同じことが良くありますが、)部活を敬遠して、サークルのようなコミュニティでスポーツを楽しむ学生はたくさんいます。レベルもかなり高かったり、なんなら大会もやっていたりするので、モチベーションによっては選択肢の一つになりうると思います。もちろん部活生が得られるような金銭的な恩恵は受けられません。
【社会人】
出張などで教育機関以外の場所に滞在している場合、好意で練習に参加させてもらえるケース以外は、学生スポーツに関わるのは難しいと思います。その場合は地域のスポーツコミュニティ、クラブを探すことになると思います。チアの場合は、先述のチアジムには大抵「オープンジム」という有料で一般開放されている時間があるので、一般人でも施設を利用できることがあります。社会人入部可のチームを持っているジムであれば、トライアウトを受けることも可能です。
アメリカでは、社会人が大学に通うこともかなり一般的で(というか学年の概念すらも曖昧)、年齢もみんなバラバラです。20代半ばだとか30代、40代だからといって部活に入れないということもあまりないと思います、トライアウトにさえ受かる実力があるならば。
また社会人がスポーツをする場合は、自身の年齢や、どこまで本気で取り組むか、スポーツの競技性、なども考慮しないと、危険ですね。僕の場合は継続的な運動を20代で最低限続けてきて、29で渡米したので、なんとか動くことは可能でした。しかし、やはり大学生の時に感じなかったような痛みやケガ、身に覚えのない負傷、みたいのはしょっちゅうでした。またただでさえ身体能力の高い現地の大学生と一緒にスポーツをするのはそもそもかなりハードですね。ただ、そもそも社会人留学する人たちは、「覚悟」のレベルが普通の大学生よりもかなり高いので、なんとか根性で乗り切れる場面も多いと思います。
2.費用面
留学に費用の悩みはつきものです。アメリカでは州立大(公立)であってもそこまで学費が安くない場合もあり、州内在住現地生には安いものの、その分留学生からはかなり取る学校も結構あります。日本の私立大学に通った場合と、年間の学費で大差は無いような感覚は受けました。ですが、部活に入部した場合、部活生のみに与えられるスカラシップ(奨学金)や、スタイペンド(給付金)などの制度があることがあります。ただし、額や条件などは学校によってバラバラなので気になる場合は問い合わせが必要です。ちなみに、「強い」から「待遇がいい」とも限らないようです。チアくらいのスポーツだと、あまり額は期待しないほうがいいと思います。僕の大学の場合は、1年目で半期$450でしたので、年約10万円くらいでしたね。でも無いよりはかなり助かります。NCAA系のメジャースポーツでディビジョンもIの学校などでは、授業料が余裕で賄える程の額のスカラシップがもらえることもあります。ちなみに、日本の大学では部活動であっても個人利用の備品は部員負担であることが多いですが、アメリカだとほぼ全て支給が一般的です。ユニフォームはレンタル、他はウォームアップウェア、練習着、シューズ、バッグ、遠征費用など、すべて1年ごとに支給・学校負担でした。アメリカンドリーム。また、普通に在学していても、日本に比べてかなり多種の奨学金に申し込むことができます。基本的には前年度の成績で申し込むので2年目からになりますが、これも申し込んで損はないと思います。
ちなみにスポーツしていると保険はどうなんだろう、と心配になりますが、基本的には大学斡旋の保険に加入していればそのままそれが利用できます。日本の保険で申請する場合はカバー範囲の英訳の提出などが、学期開始初期に必要になります。社会人(在職)の場合は会社の保険に加入していることが多いと思いますが、カバー範囲が怪しかったので僕は二重払いしていました…。ただし、ご存じアメリカは医療費激高なので、みんな病院には行きたがりません。大体学校内のクリニックか、トレーナーさんに診てもらいます。ということで需要も多いのでトレーナーさんの教育レベルもかなり高いです。専門の学部を持っている大学もたくさんあります。
住民税に関しては、基本的に10か月以上国外に行く場合は転出を勧められます。ちなみに、課税額算出のタイミングは1月1日とのことですので、滞在期間がこの日に被っている場合は抜いた方が良いと思います。
3.大学進学・出願・試験
日本の大学と異なり、一斉ペーパーテストなどは無く、高校(院の場合は大学)の成績、志望理由書(Statement of Purpose等と呼ばれます)、SATやGMATなどの学力テスト成績、留学生の場合はTOEFL、IELTS等の英語テスト成績(ちなみに個人的にはIELTSのがカンタン)、推薦状(母校や職場などから2~3通)、論文(Writing Sample)などの提出をもって出願となります。どれが必要になるか、また点数基準等は、大学によっても、学部によっても、院かどうかによっても異なります。一般的に成績と志望理由はマストだと思います。僕の場合は、成績、志望理由、英語成績、論文でした。推薦状が正直かなり厄介なので、無くてとても助かりました。条件をクリアして、書類さえそろっていれば、超難関大じゃない限りあまり落ちないそうですが、条件が各校バラバラなので、併願する場合はなかなか大変です。ちなみに英語の成績が基準に満たなかった場合でも、併設の語学学校入学などの条件付き(Probationaryなどと言われます)の入学ができることも結構あるので希望は捨ててはいけません。ですがその語学学校で成績が上がらないと結局永遠に学部や院には入れません。
4.トライアウト・入部
まず前提情報として、アメリカの大学のスポーツチームを調べる場合は、「Athletics」とか名前がついたタブから別の専門ウェブサイトに飛ばないといけないことが多いです。日本と違って大学のサイトがそこで部活の説明をしてくれていることはあまりありません。なので、ググるときは、「大学名 Athletics」で検索すると楽です。希望のスポーツをそのページから検索して、「Tryout info」などを参照しましょう(メジャースポーツだと無い場合もありなので要問合せ)。ちなみに「Roster」とは在籍メンバーのことです。チアの場合は少し特殊で、スポーツリストに入っていないことが多いです。「Fans」などのページ下に「Spirit」や「Cheer」という項目があればそれです。伝統的に、「応援団」という位置づけだからですね。
トライアウトの時期はスポーツにより異なりますが、大体8、9月の入学より前のタイミングであることが多いようです。非常に驚いたのですが、うちの学校のチア部のトライアウトに落ちてしまった子が、その後別のコミュニティカレッジに出願して入学し、そこのチア部に入部していました。これがどこでも可能な制度だとすると、実質的に部活の併願が可能になりますね。出願手続きは大変ですが。
チアのトライアウトに関して詳しくは過去の記事をご参照ください。チアは男女混成のCoedと、女子のみのAll Girlの二種類のチームがあり、学校によって片方、両方だったり様々です。トライアウトも別です。男子は高校から始める子はあまり多くはなく、初心者はコミカレでキャリアをスタートさせる子が多いようです。4大でも強豪じゃなければ、初心者でも受かります。ですがこれは男子のケースで、女子は幼少からの経験者人口が多すぎるので、4大で初心者はほぼ不可能だと思います。高校でスタート、もかなり多いようですが、コミカレスタートもいるそうです。また、タンブリングスキルに関しては、大学のレベルにもよりますが、女子はあるに越したことは無いと思います。スタンツでも応援でもかなりの場面で体操技術が要求されるので、体操できないと落ちる、ということは結構あります。男子はできなくても超強豪じゃなければ問題なしです。
ちなみに体格ですが、女子は日本と比べて割と大きくても上に乗れます。日本だと、男女混成の女子は、オールガールの中でも比較的小さい子がチャレンジする傾向にありますが、北米は逆のケースも多く、むしろなぜか、小さすぎる子はたまに男たちから敬遠されます。「軽すぎて自分が弱くなるから」だそうです。恐ろしい世界です。逆に言うと、男は割と体格に自信が無いと厳しいです。理由は察してください。今でこそ僕も割とがっしりしてる方ですが、それでもアメリカのチームでは一番細身な部類でした。
5.大学のススメ
高校だったり、コミカレだったり、社会人でスポーツクラブだったり、スポーツ大国アメリカはでは老若男女どの環境でも比較的満足にスポーツに触れることができます。
ですが僕は、やはりアメリカでスポーツをするのであれば大学、特にNCAAのDiv I校のスポーツをお勧めします。メジャースポーツだとかなりの技術を要求されますが。
やはりその理由は、その競技に取り組めることだけではなく、それを取り巻く独特の環境や文化に触れることができる点ですね。アメリカでは、大学スポーツの規模が、日本どころか世界と比べても圧倒的です。プロスポーツのように、地域住民が総動員でチームを応援し、老若男女そのチームを愛する。部活もそれに応える。この世界に触れることができるのは、やはりカレッジスポーツだけなのではないかなと思います。特にチアリーダーは、大学のメジャースポーツの多くと関わることができ、応援を通じて地域のファンの皆さんや子供たちと触れ合うこともできます。もちろん競技としてアメリカでチアをすることも、日本とは全く違うスタイルや雰囲気で、とても楽しい経験でしたが、やはり一番は「カレッジスポーツ応援」でした。渡米するまで、あの独特な「世界」があそこまですごいものだとは思いもしませんでした。できることならばもう一度戻りたいとも思うし、渡米してスポーツをやりたいという方であれば、是非あの世界に触れてほしいと思います。チアリーダーであれば、是非一度はあの「応援」文化に触れてみることをお勧めします。
最後の渡米思い出話になりますが、前回の記事の大会の後、男子バスケのカンファレンストーナメント大会が3月にテネシー州メンフィスで開催されることになり、その応援メンバーに選出して頂きました。バスに揺られること10時間(選手はチャーター機でピュー!)、チームは3回戦まで健闘し、僕の最後の応援活動が幕を閉じました。
現地には、各地域から集まった各大学のファンたちが、結構な数集まっており、試合前の地域のバーには各大学のファンがそれぞれ陣取り、ひたすら酒盛りをしております。
各校のチアリーダーたちはそこへ向かい、ファンとコミュニケーションを取り、ファイトソングで士気を高めます。もちろんホームゲームと比べればファンの数はかなり少ないですが、それでもあの人数が車で10時間の場所まで集まり、チームのためにチア、バンドと一丸になって声援を送っている光景は、本当にアメリカらしい、素晴らしい世界でした。
(※ちなみに、渡米生活では僕は「アメフトのチアだけはできなかった」と言いましたが、どんな偶然か、カナダでお世話になった大学のチームで、まさかのアメフト応援してしまいました。確かに規模はアメリカと比べれば小さかったですが、これも素晴らしい経験でした。期せずしてチア応援完全にコンプリートです。ちなみに仕事の合間です。休日です。あくまでも。)
もちろん、「競技」に触れたくて渡米したのがきっかけではありましたが、想像以上に凄まじかったあの「応援」の世界に入ることができ、また素晴らしいチームメイトやコーチ、地域のファン、友人たちとの出会いによって、想定した以上のかけがえのない経験をすることができました。大変なこともたくさんありましたが、本当にアメリカに留学してチアの世界に触れることができて良かったなと思います。バンクーバーでは、あまりの便利さと気候の快適さにめまいがしましたが、カナダと比べて派手好きで、政治的で宗教的で、カナダ人に「トランプ王国」とか揶揄され、食べるもの全てが脂っぽい、なんでもかんでもリフィルフリー、Buy1 Get1のアメリカが、僕は一番好きです。
では、今まで読んでいただいた皆様、ありがとうございました。僕の経験が読んでいただいた方々に何かプラスになることがあれば幸いです!お問い合わせ等ありましたらお気軽にどうぞ。