アメリカ経済 – What’s going on?
このブログにやってこられる方で、「アメリカ経済」の動きが気になる方もいるようです。確かに、この世界的な不況は、アメリカに発端があると言っても過言ではありません。
だから、不況脱出のキーも、アメリカにあるはず。
今日は、私の知識と理解力の範囲内で、現在のアメリカ経済について、お話します。今回のフォーカスはUnemploymentとReal Estateです。
Unemployment
現在の不況が、ここまで長く続いていることの大きな原因は、これにあります。
Unemployment、つまり職がない状態。
先週金曜日には、先月9月の雇用についてのレポートが出されました。
2011年9月のUnemployment Rate(失職率)は前月8月と同じ9.1%、つまり、おおよそ10人に1人は仕事がないことになります。
でも、9月は新しく103,000人が仕事を得たっていうレポートもありますけど・・・。
Economy adds 103,000 jobs, but it’s not enough
はい。しかし、このうちの45,000人は、携帯電話会社のVerizonが、ストライキ後に再雇用で雇い直した人たちで、「正規新雇用」とは言えません。
“Jobs”は、”create”作り上げられるもので、企業や政府が、そこに供給しないといけないもの。
経済のクラスで、「需要と供給のグラフ」、ありましたね。覚えてます?あのXのグラフ。
「仕事」もこれにあてはまり、仕事を探している人たちが「需要」、仕事を与える側(企業と政府)が「供給」になるわけです。
企業が新規採用を渋っているのにも理由があります。
CEO: Economy’s too shaky to gamble on more jobs
これは、アメリカの電子部品企業、HoneywellのCEOのインタビューです。
“In August I talked with my entire staff — everyone of my business leaders — and said ‘Slow everything down. Slow your hiring plans. Make sure you really take a good look at all spending.'”
「8月にビジネスリーダー(管理職)の全員に伝えました。『全てをスローダウンしてほしい。新しい採用を減らしてほしい。全ての出費にもう一度目を通して、よく見直してほしい』と言いました。」
と言っています。
つまり、企業も財布のヒモをがっつりと締めているわけです。
わかりますか?
仕事がない→消費されない→企業の利益が出ない→雇用枠がない→仕事がない
これって完全に悪循環(Vicious Circle)っていうやつです。
Real Estate(不動産)
この大不況の発端は、2006年以降にアメリカ国内で起こった「不動産破綻」にあると言われています。
2005年前後、アメリカ国内で、一般住宅ローンが大規模に組まれました。
これはまた別の機会に詳しく話しますが、従来ではローンが組めなかった人への出資が幅広く認められ、銀行やローン会社はかなりアグレッシブにローンを組みました。これが「サブプライムローン」と呼ばれるものです。
その結果として、不動産市場の価値が異常なくらいに上がります。(需要が増える→価格が上がる法則ですね)
しかし、本来なら家を買えない人が家を買うと、どうなるでしょうか?
そう、mortgage(家賃の銀行へのローン返済)が払えなくなります。
そしてforeclosure(物件の抵当入り)が起こり始めます。
銀行は、ローンが支払われなくなった物件を抱え込み、2006年初頭にピークを迎えた不動産市場の価格が暴落します。
これが「アメリカ不動産バブルの崩壊(wikipediaはこちら)。
2011年10月現在でも、不動産が底値になったかどうかはまだ結論づけられておらず、「まだ下がる可能性がある」と予測している分析家もいます。
これを1929年に起こった大恐慌(Great Depression)の時期の住宅価格の上下を比較すると、
2006-2011の5年間には住宅価格が30.9%下降
1925-1933の8年間には住宅価格が30.0%下降
と、0.9%の差で大恐慌以上の価格下落を体験しているわけです。
30%の住宅価格下落とは、どういうことでしょうか?
たとえば2006年に200,000ドルで購入した家を、現在売ろうとすると、140,000ドルでしか売れないということ、つまり60,000ドルのロスになるということです。
日本で不動産に関わった方は、「これは普通でしょ?」と思うかもしれませんが、アメリカの不動産(一般住宅も)はappreciatable、価値が上がる投資資産なのです。
同じ家に、これから先の15年や20年住む予定なら問題はありません。
しかし、近々リタイヤ(退職)予定だったベビーブーマー世代や、サブプライムローンで家を購入に至ったホームオーナーたち、または上記のような企業縮小などの影響で職を失ったホームオーナーたちは、これに頭を悩ませているわけです。
ピーク直後の2007年に一軒家を購入した我が家も、この不動産バブル崩壊の影響を少なからず受けることになりました。
それでは今の不動産はどうなのか?これからどうなっていくのでしょうか?
今の不動産価格から、ピークだった2006年当時の価格範囲に戻ることは、まず数年では起こらないと見られています。
アメリカ不動産のリサーチ&分析家ロバート・シラー(Robert Schiller)は、
・アメリカの不動産の価値上昇は、インフレーションと同レベルのもの(年3%くらい)でしかない
・2006年前後の価格上昇は「極めて異常」である
などと述べています。
では、今は家を買うのによい時期かどうか?
・現在の利子率は、30年ローンで4%前後という極めて低い
・foreclosure物件のおかげで、価格は低く、買い手市場である
ということから、家を購入予定の人にはとてもよい条件だと思います。
が、
サブプライムのトラウマから、銀行は「貸し渋り」の状態にあり、よっぽど条件のよい借り手でないと家を購入するのは難しいと言われています。
なので現実問題、実際に家を購入できる(=ローンを組める)人はとても少なく、これも不動産停滞の大きな原因になっているわけです。
現在のアメリカ経済は、まさに「嵐の中」(“We are going through the storm.”)と言えます。実際にどこでどんな被害が起こっているのか、冷静に把握するには、もう少し時間がかかると言えます。
そんな中で、転職や家を購入する、リタイヤするなどの変化を起こそうとしている人は、ぜひ慎重になることをおすすめします。
反対しているわけではありません。色々なソースからアドバイスを集め、信頼できる人によく相談してみてください。
私はファイナンシャルアドバイザーの資格を持っているわけでもなく、個人のファイナンシャルはみんな違います。
ただ、大企業であれ零細企業であれ、ミリオネアであれ、労働階級であれ、アメリカ国内で共通していることは、”hold on tight”であることです。
「経済」には本当に色々な要素が含まれています。
現在のアメリカ国内と世界的な不況を説明するには、この2つでは全く足りません。
また別の記事で少しずつ付け足していこうと思いますが、今回はここまでです。
記事に関連したコメントや質問、意見などをお待ちしています。
初めまして。
まさに今嵐の中で生活しております。
2002年に買った家の値段は、30%以上の下落を見せ、
レイオフされた主人の給料は、現在の仕事では1/3しかもらえません。
価格の下がった家を売るに売れず、
もっといい仕事のあるエリアに引っ越すには、
恐ろしいレント代を払わないといけません。
先が見えませんね。本当に。
FinallyFast.comさん、コメントありがとうございます。
そうですか。
これだけ大規模で、これだけ直接的な影響が出ている不況になってしまうと、もはや個人のレベルではコントロールできないと私は感じます。
一刻も早く、国レベル、政府レベルで市民のことを考えて、行動に移してほしい。
どうかご家族でお気をつけて過ごしてください。
この嵐が去るまで、もう少しがんばりましょう。
今日は、
家はリタイアの為に家を購入しました。
夫のリタイアが未だ先なので、売家を検討したところ
売りたくても、全くの買い手なしの状態です。
それでも、賃借にして借り手が居るだけでも益しかなと思っています。
上の方の先が見えない、本当に納得します。
ライムツリーさん、コメントありがとうございます。
本当に売り手には厳しい市場ですね。
価格の競争もあるし、売れたかと思えば結局買い手のローンが組めず、エスクローが閉じないということがとても多いそうです。
賃貸できる間はそれが一番良いかもしれませんね。
ライムツリーさんご家族も、どうか元気にお過ごしください。
訪問、ありがとうございます。
南CA在住です。昨年後半くらいから、かなり不動産の価格が上がって来てますよね。でも、すごく不自然なほどに。
暫く買い手市場は影を潜めてしまうんですかね?
それとも、この価格上昇、見せかけですかね???
もささん、初めまして!コメントありがとうございます。
そうですね、またちょっとずつ上がってきてますね。不自然な上がりかたというのも同意です。
人の話を聞いたりして私が思うには、いくつか理由があるかと思います。
まず、ローンの申請が厳しくて、ローンを組めるのはとても良い条件の人。つまり、ダウンペイメントが多いとか、クレジットが相当に良いとか、手持ちでキャッシュがある人など。なので、買い手がかなり限られています。
また、投資家がかなり多いそうで、500,000ドル+などの高価格物件の市場に動きを加えている気がします。
サンディエゴもそうなんですが、場所によってはリスティングされたその日にいくつかオファーが入ることも多々あるようです。特に人気のあるエリアでは、今までにないくらい家の値段が下がっているので、「これを機に!」と思っていた上記のような買い手が飛びつくわけです。
なので、南カリフォルニアの大都市、その中の特に人気のエリアは、徐々に上がり続けるかと私は思います。
銀行の視線から見ると、金融機関はローンをどんどん組んで景気復活に参加したい反面、まだまだバブルのトラウマがあることと、政府からの厳しい規制があることで、本当に良質なローンを選びに選んでいます。
利子率もまだしばらくは低いでしょうし、南カリフォルニアの傾向に反して、全国的に見た不動産上昇はまだ時間がかかるでしょうね。