ブラックヒストリー月間
美加です。お久しぶりです。
最近サンディエゴは気持ちのいい週末を過ごした後、冬に戻ったような寒い日が続いたりしています。
2月はBlack History Month(ブラックヒストリー月間)でアフリカ系アメリカ人の歴史と文化をお祝いするイベントがアメリカ全国で行われます。黒人コメディアンがBlack History Monthが2月にあるのは、それが一番短い月だからだ、なんて言っていますが、始まりは中西部オハイオにあるケントステート大学の生徒が始めたそうな。
わがグロスモントカレッジでも毎年2月にはいくつかイベントが計画されます。(フライヤーはこちらでどうぞ)
今年はJazz kitchenとA Day of Giantsの二つのイベントで演奏参加することができましたのでその様子をお知らせします。
以前えりなさんがブログで紹介してくださいましたが、わたしはグロスモントカレッジのジャズスタディでジャズの勉強、というより修行をしています。(ジャズって学問ではないので、これだけ覚えれば卒業、といった学び方ができないので、修行のほうがぴったりくる。)担当はベース。ファンク系が好きなのでエレクトリックベースだけ練習しています。
Jazz Kitchenは毎年グロスモントのカフェテリアで行われるジャズの演奏。カフェェテリアでソウルフードとジャマイカンフードのメニューが注文できて、毎週一回一時間のジャズの演奏が聞けるというおいしい企画です。去年はじめてジャズスタディの先輩たちがカフェテリアのラウンジで素敵に演奏したのを見て憧れていました。
今学期のジャズ即興クラスの初日の授業の終わりにわがメンター(師匠)トランペッターのデレク・キャノン先生が、生徒6人の名前を呼びクラスが終わってから残るようにと言いました。わたしも含まれていたので、何だろうと思いながら顔ぶれを眺めてみました。みんなうまい人たちなので叱られるんじゃないな、と高校時代の劣等生のわたしはまずひと安心。
先生はわたしたちを座らせ、
「さて、今年のBlack History Monthにグロスモントを代表してきみたちにJazz Kitchenで演奏してもらいたい。」
と言うではないですか。
「わ~お、すごい!」
と去年のイベントをしっているわたしは大興奮。
ほかのみんなは何それ、くらいの反応でしたが1時間の演奏を4回と聞いて、「もちろん、楽しそうだ。」と快諾。みんな上手い人ばかりだし、チームワークもいいので、ラッキー。
しかしクラスを出て駐車場まで歩く途中、大変なことに気がつきました。その依頼をいただいたのはもうすでに演奏日の1週間前で1時間の演奏と言うことは8~10曲必要ということ?でした。ひょえ~!リハーサルは一回で8曲か。
リハの日。できればもうすでに弾いたことがある曲を弾きたいと望んでるのはわたしだけで、ほかの人たちはノンシャラン。ジャズの醍醐味はジャムセッション。セッションでさあ、これ弾こう、キイは***ね、ワンツー、スリー!で弾くのがジャズ。その時々で決して同じ演奏がないというのがジャズ。それぞれのプレイヤーが自分の即興演奏を披露してひとつになるそれがジャズ。それはかっこいいですよ。でもまだまだひよっこのわたしには冷や汗もの。結局わたしがもってきたリストのなかから選んだのは2~3曲であとは3曲ほどスタンダード、まったく聞いたことない数曲を早速うちへ帰って聞いて練習。ああ、どうしよう。
Jazz Kitchen初日は朝から落ち着かずそわそわ、どきどき。ああ、なんでこんなことしてるんだろう。大丈夫、観客はわたしが間違えても気がつかないから。この機会を楽しんで演奏しよう。といった思いがぐるぐる回る。とにかくみんなに迷惑かけないように、しっかりリズムを刻み、フォームも間違えないように弾こう、と自分を励まして挑む。お昼時のラウンジには生徒がいっぱい。演奏が始まった。
生徒たちはほとんど席を立つことなく聞いていてくれる。何人かはフロアーに座ってじっと聞いていてくれる。うれしいな。
夢中で弾いているうちに最後の曲はRedClay。わたしの好きな曲。
わたしとドラムのイントロからソロへ。気合入れすぎてソロが始まってるのにイントロと同じパターンを弾いていたらリーダーがコードに切り替えろ、って合図をくれた。ああ、そうだった。サンクス。ギターのゾリーがかっこいいギターソロ。いいな、楽しい。エンディングも目の合図できっちり!ほ~っ。終わった。よかった、やめられないな、この達成感。
Day of Giantsは今年初めてのイベント。昔活躍した黒人ジャズミュージシャンがグロスモントにきて講演会をするらしい。ジニー・チーサム(Jeanni Cheatham)はカンサスシティジャズで活躍したピアニスト、シンガー。ジョン・ハーディ(John Hardy)はサックスプレーヤー。カーネギーホールやケネディセンターで演奏した人らしい。楽しみだ~、なんて気楽にしていたらこの講演会の日はわたしたちがJazz Kitchenで演奏する日と重なっていてジャムセッション(その場で集まって一緒に演奏する)を予定しているという。えええ~っ!
今回で三度目のJazz Kitchenにはいつもと違った顔ぶれが見に来てくれている。お偉い様、アドミニストレーターだ。音楽科の学部長スティーブ・ベーカーはピアニストでもありかつては教鞭をとっていた人だ。もちろんデレク先生も来ていてスティーブと談笑している。わたしのボスも来ている。何人かの同僚の顔も見える。緊張感満杯。
そうこうしているうちに入り口のあたりにうちのボスが黒人にしては小柄なジョンをつれて一緒に入ってきた。すてきにスーツを着こなしておしゃれなダークグラスをかけている。早速サックスを取り出して、リーダーのチャズが彼の到着をアナウンスする。「来た~。」パニックしたがる心を抑えて、気持ちを落ち着かせる。ジョンはにこにこ笑顔でわたしたちに自己紹介してくれる。
全員に握手したあと次の曲をはじめる。彼のソロが入る。すごく軽快でこなれたノリだ。いい感じ。エンディングの合図は彼が出してくれ、最後にかれがクロージングモチーフを弾いてゆっくり終わり~。ほっ、としたのもつかの間、ささやき声で「次はBody&Soul。」と聞こえてくる。ええっ~弾いたことない曲だ~!でも好きな曲。メロディーはしっかり知ってるから助かる。ジョンがカウントをとる。ワン、ツー、ワンツースリー!とにかくフォームがずれないようにメロディーを歌いながらコードにそってウオーキングを続ける。トランペットとサックスの二人は18歳なのに、すごい。しっかりソロ弾いてる。三曲弾いてジョンは最後にのりのりのエンディング!彼も楽しんでくれたんだ。楽しい。よかったこんな経験ができて。
講演会は隣のホールに移って、ジョンとジニーの話を聞いた。お二人とも80歳過ぎているのに60くらいにしか見えない。音楽を続けていると若くいられるのかな。講演後にもう一曲弾くように言われたのでまたどきどき。でも話を聞くうちに引き込まれる。ジョンもジニーも子供の頃から教会で音楽を学んだ。学んだというより、身につけたと言うほうがいいのかも。その後本格的に音楽を勉強して、ジョンはバークリーやスタンフォードでも教えていたらしい。凄い人とセッションしたんだ。
ジニーはJazzを弾く人にはいずれ”Soul of Music”を見つけて欲しい。と言ってくれたのが印象的。自分でいつも意識していることでもあったので嬉しかった。
ジョンの話で印象に残ったのは彼が若かりし頃のエピソード。リハーサル中に困惑しエンディングに入るためのコードを待ちながらながら弾いていたら、ルイ・アームストロングがステージの下に歩いてきてからジョンを見上げて、首を振りながら去っていった、という。「こいつは駄目だ、」的なニュアンスの首ふりふりだったらしい。そうだ、ジョンだってまだまだダメだったときがあるんだ。わたしもいまはひよっこだけど続けることでいつかはすごいベーシストになれる日も来るかも。自分なりに弾けばいいんだ、今の私のベストを尽くせばいいんだと。そんなふうに自分に言い聞かせ、講演会の最後にマイルス・デイビスのSolarを披露してどきどきの一日は終わった。は~っ。
最後に:Jazzは誇るべき正真正銘のアメリカ音楽なのに アメリカ国内ではあまり人気がなく、ヨーロッパや日本での人気のほうが高いといわれています。Black History Monthを機会にJazzをたのしんでみてください。
Mikaさんの記事の躍動感!ドキドキしながら読みました!
やっぱりジャズって良いなぁ。聞くだけじゃなくて演奏したくなる音楽って珍しいですよね!
私も何かやりたい。けどMikaさんのレベルに行くには時間がかかるんだろうなぁ。笑
こういう面白いイベントがあるのもアメリカのカレッジの醍醐味ですね。勉強だけじゃつまらない!参加型スクール、素晴らしいです。
ジャマイカンフードも楽しめるなんて・・・。
またMikaさんの演奏、聞きに行きます!
えりなさん、こういうDescriptive/narrativeな投稿は初めてだったので「どきどきしながら」読んだもらえたと聞いてうれしかったです。だらだらしてないかな、と心配でした。えりなさんも是非楽器をえらんで参加してください。みきパーネル先生とセッション活動しますから。