ブラックユーモアの女王、亡くなる

こんにちは、Erinaです。

またもアメリカエンターテインメント界から、偉大な人物がこの世を去りました。

Joan Rivers(ジョーン・リバーズ)は、当時、男性中心だったアメリカコメディ界に、毒舌と自虐ネタで切り込んだ女性コメディアンでした。

映画などにはそれほど出ていないのですが、アメリカのテレビ番組に出ていたのを見たことがある方もいるかもしれません。

 

From hollywoodreporter.com
From hollywoodreporter.com

 

私は個人的に、アメリカンジョークが大好きで、かなりブラックなものも受け入れられますが、「Joan Riversは生理的に受け付けない」という人はおそらくアメリカ人でも多いはずです。

そんなわけで、今日の記事はR-18指定です。(笑)

ブラックユーモアに免疫のある人だけ読み進めてください。気分を害しても、責任は取れませんので悪しからず。

 

この記事で”Sarcasm”(サーカズム)について書きましたが、アメリカンジョークと言っても様々な種類があります。人によって異なるジョークを言うし、好きな種類も異なります。

 

サーカズムとツートップなのが「自虐系」で、アメリカでは王道のジョークです。

スタイル:自分の失敗や自分の短所を笑う

長所:元となるネタは自分しか知らないので、割とジョークにしやすい

気をつけたいところ:やりすぎると、「あなた、大丈夫?」と心配される。普段から明るい人が自虐ジョークを使うのなら問題ないのですが、ちょっと疲れているときの自虐ジョークは控えたほうが良いかもしれません。

 

アメリカで多い自虐ネタとしては

  • 人種/文化系
  • 性別系
  • 年齢系
  • 心身系
  • 家族系
  • 職業系

などなど、「そんなこと言っても良いの?」と思うようなことばかりですが、言うのは本人なので、周りは笑ってもオーケーなようです。

 

たとえば、私がアメリカ人の前で「日本人はすすってものを食べる」というのをジョークにしたとします。これは自虐ジョークになります。

しかし、非日本人が「日本人はすすってものを食べる」とジョークにすると、「人種(というか文化)差別!」と批判されるかもしれません。こうなるとジョークではなく、ただの無礼者というレッテルが貼られてしまいますね。

 

アメリカ社会で、「良識ある大人が言うべきこと、考えるべきこと」を、

“politically correct”(政治的、社会的に正しい)

と言います。

たとえば、現在のアメリカ社会なら、

  • 「人種差別は良くない」
  • 「性差別は良くない」
  • 「同性愛結婚は合法になるべきだ」
  • 「平等な教育を用意するべきだ」
  • 「中東から軍隊を撤退するべきだ」

とか色々とあると思いますが、「同意しておいたら間違いはない」みたいな感覚でしょうか。これは日本の「建前」に似ており、日本人はこれが上手なので、「日本人はPoliteだ」と思われがちです。

しかし実際は、誰もが何かしらの「本音」を持っていて、この本音は

“politically incorrect”(政治的、社会的に正しくない)

なことが多いわけです。

“Your opinion is politically correct, but the reality is……” なんてことがあります。

そこで、本人があえてジョークにしてしまうことで、「な~んだ、みんなもそう思ってたんだね!」と一緒に笑ってしまえるわけですね。

アメリカで「面白い人」と思われるには、この“politically correct”“politically incorrect”のちょうど良い絶妙なバランスが必要になります。どちらか一方だけだと、「本音を言わないつまらないヤツ」か、「品も教養もない無礼なヤツ」になってしまうからです。

 

私は個人的に、この自虐ジョークは「大人の対応」の一つだと思っています。

誰でも、自分の失敗や短所を認めることは簡単なことではありません。しかし、時にはそれを表に出さなければならない場面はやってきます。

そこで、「どうせなら一緒に笑っちゃおう!」と思える人はやはり勇敢だと思うからです。(当たり前ですが、仕事などで責任が生まれるときには笑わないですけどね)

 

Joan Riversもそういう人でした。

彼女は「人生は面白い」というのがポリシーで、とにかく人を笑わせることが好きだったそうです。

彼女の毒舌と自虐ネタは、「誰もが思っていたことを、あえて言う」ことで、その場に笑いを引き起こし、Mutual understanding(誰もに中立な理解)を残していったのです。

日本の芸能人にもいますよね。「毒舌だけど正論を言う人」って。私は最近の芸能界はわからないのですが、こういう人って、正直でまっすぐな物言いが好かれたりしません?「私も、そういうふうに言えたらいいのに・・・。」なんて憧れたりもします。

 

それではMashableからJoan Riversについての記事を一つ紹介・解説します。

 

“10 Joan Rivers Lessons on How to Not Take Yourself Too Seriously”

「自分をシリアスに受け止め過ぎないためのJoan Riversの10の教訓」

 

1. Always be the first one to laugh at yourself (誰よりも最初に自分を笑え)

“My face has been tucked in more times than a bed sheet at Holiday Inn.”「私の顔はホリデイ・インのベッドシーツより多くたたまれているわよ。」

解説:彼女は何度も繰り返し整形手術をしたことで有名。ホリデイ・インはアメリカの大手モーテル。つまり、モーテルのシーツよりもtuck in(たたむ、折る)されてるのよ!と自分の整形歴をジョークにしているわけですね。

 

2. Have the self-awareness to recognize your own flaws.(自分の欠点に気づき、認めよ)

“My body is my temple, my temple needs redecorating.”「私の体は私のお寺なの。そしてこのお寺はデコレーションが必要なの。」

解説:お寺=古いけど休まる場所というイメージでしょうか?”temple”に例えるところが面白いです、この人。

 

3. Don’t be afraid to be unattractive. (非魅力的になることを恐れるな)

解説:アメリカのキャラクターMiss Little Piggyと共演してます。

 

4. Accept that it’s ok to fail sometimes.(時には失敗しても大丈夫だと受け入れよ)

“I hate to cook. Cooking is boring, and it is stupid.”「私は料理が大嫌い。料理なんてつまらなくて、馬鹿馬鹿しいわ。」

“The last time my husband had a hot meal, the house was on fire.”「前回、うちの主人が温かい食事を食べたときは、家が火事になったときよ。」

解説:ジワジワ来ますね、この人。笑

 

5. Worry less about being well-liked. (人に好かれることをあまり気にするな)

解説:ご覧の通り。

 

6. Know that physical appearance isn’t everything.(見た目だけが全てじゃないと知れ)

“I don’t exercise.”「私は運動はしません。」

“I only bend over when I moon people.”「お尻を見せたいときに、前にかがむだけよ。」

解説:”moon”はお尻を見せて人をビックリさせるという意味ですね。

 

7. Always laugh in the face of injustice.(不当なことについて、思い切り笑え)

“A girl, you’re 30 years old, you’re not married, you’re an old maid.”「お嬢さん、30歳で未婚?あなた、オールドメイドよ。」

“A man, he’s 90 year old, he’s not married, he’s a catch.”「男性で90歳未婚?彼はキャッチよ。」

解説:”A catch”とは、「キャッチするべきもの」という意味で「捕まえたらラッキー」という表現です。未婚の90歳男性を捕まえておけば、まぁ色々と近々手に入るかもよ・・・・・という意味でキャッチなんでしょうか。”old maid”はアメリカに古くからあるカードゲームで、日本の「ババ抜き」と同じです。(ババがold maidにあたります)今となっては時代錯誤感がかなり強いですが、この表現はたまに映画などでも使われます。

 

8. Don’t be afraid to get a little sloppy. (少し雑になることを恐れるな)

解説:ウィスキーを注ぐ前に、グラスの氷を戻しています・・・・。笑

 

9. It’s totally acceptable to be a little bit shallow.(少しは浅はかになっても大丈夫である)

“First wives, we don’t ask. First wives, we were brought up to be polite. You get a lousiy ring, you say thank you, remember that?”「最初の妻、私たちはお願いしないの。最初の妻は礼儀正しくあるように教えられたから。不格好な指輪をもらっても、『ありがとう』って。覚えてるでしょ?」

“Second wife, ‘What’s this!? What is this, a joke? What does it, tell the weather? What are you, nuts?’ And the men like them better.”「二人目の妻はね、『(指輪を見て)何コレ?!何なの?ジョーク?コレ、天気予報でもしてくれるの?あなた、頭おかしいんじゃない?』って言うの。で、男たちはこっちのほうが好きなのよ。」

解説:二人目の妻は本音を言ってくれる、ということでしょうか。私はこれが個人的に好きです。笑

 

10. Keep laughing through life’s toughest moments. (人生で一番辛いときも、笑い続けよ)

“Life is so much fun. It’s one big movie.”「人生って本当に楽しいわ。一本の大きな映画なのよ。」

解説:すっぴんの彼女がそう言います。

 

別の記事でも読みましたが、彼女は最初のご主人を自殺で亡くした後も、それをコメディのネタにしていたそうです。彼女は少なくとも自分自身を、みじめ (miserable)にしなかったんですね。そういった彼女のポジティブさ、正直さ、強さが多くの人にも愛されたようです。

 

辛いとき、あなたは泣いて過ごしますか?それとも、笑って過ごしますか?

 

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「ブラックユーモアの女王、亡くなる」への1件のコメント

  1. バーベンハイマーに関してはブラックユーモアで済む話でしょうか。私はアメリカに住んでいますがバーベンハイマーに関してはものすごく不愉快です。
    しかしアメリカ人のほとんどはこれを純粋に楽しんでいます。私がおかしいのかアメリカ人がおかしいのかわからなくなってきました。

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