アカデミックでレイオフ

layoffnotice

 

アメ10読者の皆さんこんにちは。カンザスシティーの大学で働いているKAZです。

アメリカの企業で働いている方の話を聞くと、企業では突然のレイオフ(解雇)は日常茶飯事だと仰います。

アカデミックの世界も御多分に漏れず、そういえば最近あの人の顔を見ないな〜と思ったらいつの間にかクビにされていたという話を聞きます。

クビになるのは決して地位の低いひとたち(テクニシャンやポスドクとか)だけでなく、ラボのボス(P.I., Principal Investigater)がクビにされることもあります。

その多くの理由が、学生やポスドクが犯したデータの捏造や論文の改ざんに気付かず、論文をパブリッシュし続けていた、すなわちミスコンダクトを理由に解雇されるケースです。

しかし中にはとんでもないPIもいて、PI自身が論文を捏造するやつもいます。

そういう場合はたいていすぐに噂が広まって、上層部の耳に届き、会議にかけられ、解雇を通達されます。

昨年うちのデパートメントでは、肝臓センター長がミスコンダクトを理由に解雇されました。

この世界でコネクションがあるヒトはすぐにほかの大学のポジションを見つけて移ることになるのですが、その際はほとんどのポスドクや学生は一緒についていきます。そこでボスとの関係を絶ってしまうと、それまでやってきたプロジェクトがパーになってしまうからです。

 

また、以前ボクの英会話の練習相手になってくれていた、Diversity officeで働いていた友人は、彼のボスが人事異動で入れ替わった際に、新しいボスに「キミとは一緒に働きたくないから今週いっぱいで辞めてもらう。」といわれ、クビになり、一週間以内にオフィスをカラにするよう通告されました。

 

そして、レイオフまではなりませんでしたが、デパートメントのチェアー(学科長)がステップダウン(降格)させられ、しかも別のデパートメントに移された事がありました。

理由はその多くが謎なのですが、どうやらおおきな原因は、大学の副学長であり医学部長と仲が悪かったからだそうです。

特に、医学部の方向性について意見が合わなかったようです。

副学長は臨床医を目指す学生教育に力を入れていく方向性だったのに対して、学科長はもっと基礎医学研究に力を入れるべきだとずっと主張していました。

 

会議でもお互いよくぶつかっていたそうです。

 

しかし、単にあいつが嫌いだからと言ってすぐクビにできるわけでありません。

この辺も謎が多いのですが、ある日突然、学科長に自宅謹慎が命ぜられ、彼の評価会議が行われました。

結局1ヶ月ほどした後、判決文(!?)が公示され、それはニュースにもなりました。

彼はToxicologyの世界ではその名を知らない人はいないほど有名で、多くの教科書にもデータを載せているような人物です。そのような人物がなぜ降格なのか。

公にされた文章では、降格の理由が「研究室内での使用言語を英語のみににするようにラボメンバーに強制したこと。データ報告会ではPowerPointをしようすること。」でした。

へ?そんなことで?と思いますよね。

実際アメリカのラボはインド人や中国人がたくさんいますが、同じ国の人同士では母国語で会話します。それを禁止したことが、「unprofessional」であり「abusive」 だというのです。

アカデミックの世界は競争の世界ですので、同じラボの人間同士が敵になる可能性は大いにあります。そのような場所で、他のヒトに分からない言葉で話していると、内緒話をしているんじゃないかと疑う人もいます。

それを嫌って、英語オンリーにした彼の計らいは、臨床医教育に力を入れたがる彼女には理解できなかったのでしょう。いや、単に彼をクビにする理由が欲しかっただけなのかも知れません。

怖い世界です。

 

学科内でヒアリング調査を行った結果、そういうことが発覚したらしいのですが、彼のラボに友人に聞いても、その事に関して不満を持っていたという話は聞きませんでした。

むしろ、学科長がステップダンするする事に抗議したのです。

彼が学科長に就いていたことによって、グラントも獲りやすかったこともありますし、なにより彼は大学院生やポスドクの教育にとても力を入れていたことは皆よく分かっていたからです。

大学院生やポスドクが中心になって委員会に抗議文を送りましたが、結局聞き入れられず、別のデパートメントへ移動になりました。

 

彼が学科を離れたことで、大学を出て行くPIはいまも後を絶ちません。

それほど彼の力は大きかったのです。

 

ちなみに余談ですが、この副学長もその約半年後にステップダウンしました。

 

そのニュースを聞いた例の元学科長は、真夏の時期にもかかわらず、ジングルベルを鳴らしながら「メリークリスマーーーーーース!!」と廊下を走り回っていたそうです・・・ 

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2 comments on “アカデミックでレイオフ”

  1. う~ん、とってもpolitical。

    ミスコンダクトで解雇されたボスに、ついていかなきゃいけないっていうのがすごいです。次の場所で同じことをしない保証もないですよね?きっと。
    他の業界なら、直属のボスが嫌で仕事を変えたらもうそれでサヨナラ~ですけど、そうは行かないんですね・・・。

  2. Erinaさん
    おそらくは、ポスドクを連れて行くためにいい条件を餌にして釣っているんだと思います。給料を上げるとか、新しい大学の方が研究環境が良いからとか。

    そうでもしないと、また新しいところで新しいポスドクを雇って、1からスタートさせないといけないとなるとボスも大変ですからね。
    ポスドクとしても、プロジェクトのオーナーはボスに帰属しているので、そこで関係を切ってしまうとまた1から新しいプロジェクトをはじめないといけないのです。

    ポスドクにとっては論文を書くことがひとつの目標なので、それを達成するためにはいろいろ我慢も必要なのです・・・

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