インチとフィート

10月に結婚式(正確にはVow Renewalですが)を行い、在米13年目にしてまた様々な新しいアメリカについての事実を学んだ、と以前に書きましたが、今日はそのなかでも日本人として苦労した意外なことについて書きたいと思います。

それは、インチ、フィート、ヤードといった長さの単位です!

何もかも自分で手配して準備するのが主流がアメリカの結婚式、なかでも予算が厳しかった私達の場合はできる限りを自力でやろうとしたので、本当にこういう細かいところでつまづくことが多くありました。

長さの単位が結婚式でどのように重要になってくるかというと、たとえば、「テーブルクロスを業者から借りるより、安いところでまとめ買いして持参したほうがお得」という情報を仕入れて、「よし!買おう」と思うものの、そのテーブルクロスのサイズを確認する必要が出てきます。

会場の担当者に聞くと使う予定のテーブルは「6フィート」。感覚的に6フィートと言われてもぱっと浮かびません。Googleはとても便利で「6 feet cm」などとタイプして検索すると一番上にcmに変換した数字が出てくるので換算自体はすぐにできるのですが、この変換後の数字を記憶しておかないと、テーブルクロスのオンラインショッピングをしていてもちょうどいい長さかどうかをとっさに判断することができません。

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さらに、テーブルクロスの選び方には二種類あって、テーブルの端から「24インチ」垂れ下がるもの、またはフロアまですっかり覆うものがあります。24インチだけのほうが安いのですが、「24インチ垂れ下がるだけで大丈夫かどうか?」判断したくてもまた「24インチ」がとっさに感覚でつかめないのです。

さっそくグーグルで変換。24インチは61センチくらいなので、実はけっこう長いのですが、どうしてもセンチの感覚に引きずられて短めにイメージしてしまったりもします(もしかして寸法感覚の弱い私だけ?)。

手元にあったインチの定規や巻尺も使い、テーブルから24インチの距離を測り、「見た目問題ないかな~」と考えます。

それから、実際のレセプションのイメージをつかむため、Pinterestなどでレセプションの写真をいろいろ見てみます。すると・・・結婚式のレセプションというものは、テーブルから24インチ垂れ下がるテーブルクロスを使っている人なんて一人もいなくて、すべてフロアまでしっかり覆うものだということを発見!!今まで意識してみたことがないのでまったく気がついていませんでした。
(こういうこともレセプションを手がける業者にとっては常識以前の知識なのでしょうが、素人はこんなものです。ただの素人がいきなり大勢を招待して大イベントを成功させようとする、それも一生に一度、ずっと夢見ていた大イベントだからかならず成功させなければいけない・・・というわけですから、アメリカの花嫁はストレスで気が狂いそうになるのも当然というものです。)

そこであらためてフロアレングスのテーブルクロスにしぼってショッピングします。私はレセプションは6フィートの長テーブルを使いましたが、会場には他にカクテルテーブルやバーカウンターなど、長さや形が違うテーブルがいくつかあり、そのためにテーブルクロスとなるとまた一からやりなおしで「直径60インチのカクテルテーブルのテーブルクロスは・・・」と変換したり計算したり。

こんな調子なので、ただテーブルクロスを決めるというだけで何日も何週間もかかってしまいます(気に入った商品が見つかったらサンプルを取り寄せて色や触感を確認する作業が残っています)。

サイズを感覚でつかめないので困ることは他にいくつもあります。

たとえばお花。

6フィートのテーブルに両側に3人ずつゲストが座り、それを二つつなげて12フィートの長いテーブルにする。この上にお花を飾るとしたら、直径が5インチの花瓶をひとつのテーブルに何個置けば十分華やかになるか?

フローリストは「直径6インチを各テーブルに3個ずつ、合計6個くらい置かないと寂しいと思う」、でもそうするとレセプションのお花だけで2000ドル(18万円くらい)!!

お花だけで2000ドルはきつい、でも結婚式の披露宴にお花が少なすぎるのも悲しい。フローリストはもちろん多めを言うだろうし。これを自分で自信を持って判断するのに、どうしてもこのインチとフィートの感覚が邪魔になるのです。

素敵なレセプションの写真をいくつも見て、「これくらいが素敵だな」と思っても写真だけでは「何インチくらいかな」とうまく推測ができないし、「やはり現物を見ないと」と思ってそのフローリストのショールームに行ってみたり、仕事で会議中に「この会議机は何フィートくらいだろう。この上に6インチの花瓶を三つ置くと・・・」と想像したり、とにかく当時は頭の中が「インチ」「フィート」がつかめないフラストレーションでいっぱいっでした。

細かいところではレセプションのテーブルに置くネームカード。

最初はすべて自作しようとしていたので、厚紙と宛名シールを買ってきて、宛名シールにゲストの名前を印刷し、それにあわせて厚紙を切って二つに折り、宛名シールを貼る・・・という計画でした。

とても簡単に聞こえるのですが、実際にちょうどいい宛名シールを探そうとすると・・・

インチの単位ってすごく変なのです。

1インチの中の分割が、基本は4分割になっています。その4分割がさらに細かく4分割になっているので、一番細かい単位が「16分の1インチ」です。次が「8分の1インチ」「4分の1インチ」「2分の1インチ」・・・と大きくなっていきます。

なので、ときどき「1 3/8インチ」などという長さが出てきます。単純にインチとセンチを換算するだけで混乱しているのに、さらに、「3/8インチ」ってなんだよ?!って感じです。1センチは10ミリ、と小学生のころから頭に染みこんでいる私にはいまさら感覚をスイッチできません。

でも必死でインチの定規を見ながら、「どうやらこの2 3/8 x 1 1/4の宛名シールがちょうどよさそうだな・・・」などと判断しつつ宛名シールを買いました。まあ結果的には会社の同僚にサイドビジネスでこういうカード製作をしている人がいて、すべて格安でやっていただくことになったのですが・・・、本当に単純な作業のようだったのに気づいたら迷宮にまよいこんでいて、同僚が引き受けてくれたときは本当に彼女が天使に見えました。

ちなみにこのカードで使う「厚紙」、英語で「Cardstock」と言います。最初この厚紙を買うところから始めたわけですが、まず厚紙を英語で何と言うかわからなくて「Thick paper…??」とかキーワードを入れて全然見つからなかったりしました。Cardstockというのも今回の結婚式準備を通して知った新しい英単語です。知らなかったら本当にわからないですよね。

でも、これだけインチとフィートの感覚に苦労して、無事結婚式が終わってみて、ふとあるとき日本のセンチ単位の定規を目にしたとき・・・

「あれ?センチってこんな小さかったっけ?こまか~い!!」

と思ってしまいました。

一生身につかないかもと思っていたインチ・フィート感覚ですが、もしかしたら結婚式準備の苦労を経て、私も少しはアメリカの単位になじんできたのかもしれません・・・。 

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4 comments on “インチとフィート”

  1. わかります!
    単位換算だけで頭がこんがらがるのに、その上、分数?!と思っちゃいますよね。

    私は家周りのDIYをやり始めてからインチとフィート式にだいぶ慣れました。で、慣れちゃうとセンチが小さい小さい。笑
    「ミリ」なんて絶対に必要ない!と思っちゃうし、この大雑把天国でミリ単位が普及しない理由がちょっとわかった気がします。

  2. 私もアメリカに来たときは同じ。
    ボランティアでよく野菜を切ったことがあります。
    ズッキーニは1/4(クウォーター)で、オニオン、トマト、いろいろとあったけれど
    大きさ、長さを参考にするために だれかに切ってもらってたよ。
    ハーフインチ(1/2)なども 最初は感覚的にわからず
    今では すべてインチサイズで切っているけれど。

    仕事でもインチとメートルがごっちゃだし、そのうちメートルは忘れてインチのほうが
    便利になって、1cmがどれくらいの長さなのかがわからなくなったことがあります。

    アメリカは温度は華氏だし、家の大きさはフィートだしね。
    慣れるしかないなあ。
    私はパラグライダーやるけれど、こちらは車のスピードと同じマイル。
    日本のほうがわかりにくいよ。km/hの車のスピードじゃないので、
    風速45メートルなんてのが感覚的にわかる?むり、むり!
    他の国は風速に時速を使っているから  
    自転車、車、電車のスピードと比較できるから とってもわかりやすいけれど。
    インチとメートルも これと同じようなものかもね。

    インチやフィート、家にある巻尺は 今でもメートルもわかるように
    両方の単位があるのを使ってます。
    両方あるとやっぱり便利。
    アートの絵を壁に飾るときも、あと1/4右を下げてとか、
    普通の生活では すっかりインチサイズになりました。

  3. コメントいただいていたのにお返事が遅くなってごめんなさい。

    Erinaさん、長さに関わるプロジェクトを何かひとつ達成するとそこでぐっと慣れますね。私も今回の結婚式でかなりインチとフィートが身近になりました。私が思うに、アメリカと日本の全体的なサイズ感の違い、比率というのが、ちょうど1センチと1インチの比率と同じくらいな気がします。たとえば容器なども、シャンプーにしろオリーブオイルのボトルにしろ、全体に1センチと1インチくらいの比率でアメリカのほうが大きいし、建築物とか文房具とか、すべてにおいて日本のほうが1インチに対する1センチくらいの比率でちいさくて細かいと思います。物理的に測ることのできない、感覚的な「おおざっぱさ、適当さ」もそんな感じの比率な気がします。
    世界的にみたらアメリカのほうが仲間はずれなんですよね。でもアメリカにはエリナさんのおっしゃるとおり、1mmの細かさはなかなか根付かない気がします・・・

  4. シギーさん、おっしゃるとおり、慣れがすべてですね。

    私もひとつだけアメリカの単位のほうがしっくりくるものがあります、それはやはり運転するときのマイルの速度です。

    私はアメリカで運転免許を取って約10年ほど運転していて、日本ではほとんど運転経験がないので、「時速80マイル」の感覚はわかるけど「時速100キロ」と言われてもピンと来ません。また、「目的地まであと何マイル」というのも感覚でわかるけど、運転に限っていえば「あと何キロ」と言われてもよくわからないと思います。が、徒歩となると別ですね、アメリカではほとんどテクテク歩くということがないから・・・、ハイキングが趣味のMakiさんと違って(笑)

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