学校区(School District)

我が家はもうすぐお引越しです。

ついに賃貸アパートを卒業し、小さいコンドミニアムですが「ホームオーナー」へとステップアップしました。ま、あと何十年かローンを払い続けないと正確には自分の家にはならないのですが・・・。

この1年ほど物件探しをしていて、アメリカの地域による家の価格差はすごいものがあるなぁと実感しました。

たとえば、LAの人気地域で小さいベッドルームが二つのコンドミニアムを買うのと同じ金額で、中西部の郊外ではベッドルームが6つ、バスルームが5つ、広ーい暖炉つきのリビングルーム、ファミリールーム、普段使いのダイニングルームとお客さん用の豪華なダイニングルーム、オフィスにライブラリー、広いお庭にプールとジャグジー、さらに広いバックヤード、車3台停められるガレージ、レンガ造りの美しい外装・・・みたいな、まさにアメリカンドリームという豪華な家が余裕で買えます。(そんな家はその地域のごく標準で、とくに豪邸とみなされていなかったりする。)

でもLAの高級住宅地でこのような家を買えるのは、ごくごく一部の超お金持ちのみです。一般庶民には一生の夢。

で、都会と地方、のような違いとはまた別に、都会は都会でさらにその中に価格差があります。

私は日本では東京のことしかわからないのですが、いつも違うなぁと思うのが、東京では都心に近ければ近いほどなんでも高かったのに、アメリカの都市ではいわゆる都心、ダウンタウンの住宅はそれほど高くないというか、人気がない、むしろ治安が悪いので避けたい地域だったりすること(もちろん、各地によりますが。ダウンタウンが人気な地域もある)。

LAについて言えば、代表的な高級住宅街といえば日本でも有名なビバリーヒルズですが、高級ショッピングエリアには隣接しているもののダウンタウンからは離れています。海沿いに北上するとビバリーヒルズ以上の高級住宅地、マリブがありますが、ここにいたってはLAのどの市からも遠く、むしろ不便な田舎という感じです。まあ、都心に通勤するサラリーマンみたいな人はあまり住んでいないのでしょう・・・。ほかの高級住宅街もだいたい小高い丘の上の絶景が見渡せる場所とか、オーシャンビューが楽しめるエリア、ちょっとした森に囲まれた静かなエリアなどです。

そういう場所にはまずコンドミニアムとかアパートのような集合住宅地はありません。一軒ずつが離れて、どーん!と一戸建てが建っています。またそれぞれのエリアにゲートがあって、住民以外は入れないようにもなっています。

というわけで・・・

私達家族は一般庶民として、最初から一戸建てはあきらめ、コンドミニアム探しをしていました。

そして気がつくのですが、都会の中でもエリアによって価格差、そしてそのエリアの中でも「なんとかストリートの北と南」で価格が違ったりするのです。

私達が探していたエリアは決して高級住宅街ではないのですが、その市の中ではとても人気がある場所で、「ああ、このストリートの向こう側ならもっと安いのにな・・・」とよく思いました。

ではなぜその向こう側にいかないのか?

というと、子供の学校区を変えたくなかったからなのです。

子供がいる家庭では、この学校区が家探しの大きな条件になってきます。

9月に入学した子供がやっと学校になじみ、友達もできて、今の時点で転校はかわいそうなので、「同じ学校区」というのを条件にして探していました。すると、大幅に選択肢が限られてしまうのです・・・。売り出される家も少ないし、出てもやはり高い!ベッドルームが二つしかなくてもミリオン、円で言うと1億円を超えてしまう物件があったりします。

すぐとなりの学校区に移れば1ミリオンは超えないし、逆に1ミリオンだせばもっと広い間取りの家に住める。道を一本渡るだけ。街並みの雰囲気も大してかわらない。でも、家の価格が数千万円くらい違ってくるわけです。

じゃ、もう子供は仕方ないから転校させて道一本向こうに家を買えばいいか?というと・・・、道一本越えた学校区の小学校のスコアがあまり高くなかったりするので、やっぱり越えたくない。

え?小学校のスコアって?!

って思いますよね。

アメリカの学校にはいろいろな指標に基づいたスコアがついているんですよね。親たちはこのスコア表をにらんで、「この学校区に引っ越そう」とか「小学校まではいいけど、中学・高校になると高いスコアの学校がないから、そのころに引っ越そう」とか、子供たちの学校をベースに居住地を考えたりするのです。日本の小学校にスコアなんてないですよね。全員が受ける義務教育なのに、ほんとにアメリカの格差社会は厳しいです。

じゃあ子供がいなければ関係ないから安いところに住めるか?というと、だいたいスコアが高い学校の学校区は人気があって人が集まってきて、その結果不動産の価格があがり、その価格を払える人々が集まって、高額のドネーションを学校に贈って、学校の質がさらによくなって・・・、と悪循環なのか良循環なのかわかりませんが、とにかくその傾向が強まって、学校区が良い=治安もよくなる、というわけで、子供がいなくてもやはり良い学校区に住みたい人が多いと思います。

私がシビアだな~と思うのが、この小学校の格差がまたすごいということです。これは社会問題でもあり、厳しい現実だと思うのですが、実際に格差のあるふたつの小学校を見学した私の友人もとてもショックを受けていました。

スコアの高い学校は教室、建物、設備、すべてがピカピカに整っていて、最先端の電子機器、たとえばiPadを生徒一人ひとりに配って行われる授業があったり、黒板のかわりに巨大なタッチスクリーンを使っていたりするそうです。

それにくらべてスコアの低い学校にはそんな電子機器はなくて、あっても古い「Windows 95」とかの時代を思い出しそうな大きな箱型のコンピュータを図書館でみんなで共有していたり。建物は古く、あちこちがガタガタしていて、掃除するスタッフを雇う余裕がないのか、どこもなんとなく散らかっている。

これじゃあ自由競争社会と言ったって、こんな小さい子供のころからもう勝負が決まってしまうようなものじゃないか、と彼は思ったそうです。

さて、道一本越えても風景はあまり変わらないと書いたのですが、道を一本越えてさらに歩いていくと、ちょっとずつ変わります。

決して治安の悪そうな雰囲気になるわけじゃないのですが、たとえば歩道がでこぼこしていて整備する余裕がないのかな?とか、並木の手入れが行き届いてなかったり、一軒家もサイズが小さくて家同士の距離も近くなり(そのまま日本の都心にでも持っていけば十分な豪邸ですが)、やがて一軒家がみあたらなくなってアパートが増え始めます。

逆に道一本手前の方角に向かってどんどん戻ってくると、今度は一軒家のサイズがアップしていって、豪華な見た目になり、敷地も広くて緑の芝生がひろがり、並木は青々として歩道にはきれいなレンガ色のパネルが整然と埋め込まれ・・・「高級住宅街」の様相になってきます。

そんなわけで、「自宅購入おめでとう、どのへんなの?」と聞かれると、「ぎりぎりA通りの近くなのよ。もっとA通りから遠ざかりたかったんだけど」などという会話をしたりするのですが・・・・

さらに世界に目を向けて、たとえば国民全体がまともな教育を受けることができないアフリカの村の話などを聞けば、「A通り沿いじゃなくてB通り沿いが良かった」とか、数kmの違いにこだわるなんて、ほんとうにどうでもいいことのように思えてもきます。

場所じゃなくて、中に住む私達家族がいかに楽しい日々を作っていくかですね。そう思って、来週から新居で、格差に関係ない生きいきとした小学校時代を子供に贈ってあげたいと思います。 

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9 comments on “学校区(School District)”

  1. 僕にも、超ドンズバな話題!
    てか、やっぱLA、高ぇっすね。
    セレブしか想像できねぇっすね。
    小生には無理っすね。

    こちらは、目指せ・「田舎でゆっくり(安上がりに)ウトウトしながら、通勤時間5分以内の家を購入してギターをガシガシ引き倒し、ドラムをガンガン叩き倒す」。

    それでもまだ、僕のほうは重い腰をあげれずにいますが…

  2. 本当、このアメリカの学校間の格差ってシビアですよね・・・。
    資本主義がこんなに早い時期から、身にしみこんでいるアメリカのシステムには、たまに戸惑います。
    大人はある程度、「現実」に対する免疫ができてるけど、子供にはちょっときついな・・・と感じます。

    うちもちょうど一年前に引っ越して、長男は新しい学校区でキンダーが始まりました。
    学校に行かせてみて思ったのは、「価値観が似ている」ということは大事だな、ということです。
    家族、教育、経済的、なんでもそうですが、親が似た価値観をもっていれば、子供同士の価値観も似ているんですね。
    学校ですんなり打ち解けて、友達もたくさんできたようで、安心しています。

  3. たつやさん、私も無理なんですけど、きっと必死で働いてローンを返すことになると思います・・・人生に何を求めるか?を考えると、たつやさんのように音楽に全力投入するなら「田舎でゆっくり」が最高だし、ほんと最近「なぜLAに住まなきゃいけないのか」自分でもよくわかりません。この家の高さはクレージーすぎます!!!たつやさんの豪邸購入体験も楽しみにしてます!

  4. Erinaさん、価値観はそのとおりですね、貧富の差というよりも、たとえば保守的な地域とリベラルな地域とか、特定の人種に偏っている場所と、様々な人種がまじりあって多様性がある場所とか。LAはとても多様性に富んでいるので、ハーフのわが子にはぴったりな場所だなとは思ってます。日本にいたらきっと特別視されて寂しい思いをするんじゃないかな、とか。いろいろな人、いろいろな考えがあっていいんだよ、というメッセージが常に発信されている場所で育てたいと思います。

  5. 昨夜、カナダはモントリオール出身でウィチタ在住の芸術家と呑んでたんすが、「いやぁ、ウィチタはコストが安いし、渋滞ないし、何か楽よね」と、結局大きな移動には飛行機を使う我々外国人には良い環境な気がしてます。

    横浜出身ですが、「東京もLAも、絶対に付いていけない都市」なので、このままひょっとすると農家になってしまうのかな、てくらいユッタリした今が良い感じ。(日本の地元の退職組のおじちゃん達に多いのですが)僕も家庭菜園に憧れてます、なんて。

    さて、こちらもサッサと行動に移せるよう、zillow観察を続けねば…

  6. 我が家も子供の為にと思いスコアの高い学校区に数年前家を購入しました。Hanaさんの仰る通り学校は公立でありながら施設やシステムはすばらしいです。でも住んでみて初めて知ったことですが、親が払う寄付金がすごいことです。何をするにも寄付金寄付金、寄付とは名ばかりで半強制、いえほぼ強制。学校は寄付で成り立っているようなものです。富裕層が多いので誰も文句など言わず当然のごとく寄付は集められています。他の学区の友人に聞いてもそんな寄付は無いと聞きました。一つ思ったのは教育にお金を惜しまず払う(払える?)、その意識の違いが地域によっても差があるように思えます。

  7. School boundaryが違うだけで同じDistrict内なら、なんとかなるでしょうけどね(うちのディストリクトはそうです)。ディストリクトが違うと難しいんでしょうね、越境入学。うちの娘の入学手続するときに、だめもとで隣のディストリクトに入れないか聞いてみましたが、Superintendentの許可が要る・・と言われ、まぁそれ以上は追求しませんでした。
    私の子供時代、小学校なんて友達と遊んで楽しかった~、くらいしか記憶が残ってないんですが、こちらはそんなのんびりしたことを言ってられませんね。
    たつやさんが豪邸購入の際には、みんなで遊びに行きましょう。

  8. Kimiさん、ドネーションは本当にそのとおりですね。うちの子の学校もそうです。Donationなんて気持ち次第なんだから匿名にすべきなのに全然そんなことなくて、バーンと金額順にリストが出たりして、もうほんと「強制」ですよねぇ。
    この、寄付金で学校経営が成り立つってところがすでにおかしいですよね。政府がもうAffordできないってとこが。破綻してますよね。寄付できる余裕がない地域の学校は見捨てるのか?ってことですよね。
    うちもこれから寄付のプレッシャーに苦しみながらの小学校生活になりそうです(涙)

  9. Makiさん、そっか、学校区ってDistrictじゃなくてBoundary?私ちょっとそこを間違えて書いていたかも。とにかく人気があると越境もなかなか認められなくて、でも住まなくても不動産を持ってると通えるので、そのためにわざわざ、ではないにしても、それも兼ねて不動産を買ったりする人もいるみたいです。私達はまだ子供が赤ちゃんで小学校事情なんて何も知らないころにアパートを借りて、たまたま「いい学校区だから動かないほうがいいよ」とか言われて今に至ってるんですけどね。

    そうですね、たつやさんちのプールでプールサイドパーティしましょう。楽しみ!

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