アメリカに移住するまで Tamami編 -1
Makiさんが書いている移住までの道のりについて、私も自分の場合を書いてみたいと思います。
私が渡米した最初のきっかけは、大学院への留学でした。
当時、商社で働いていたのですが、事務職だったので何年勤務しても仕事の内容はほとんど変わらず、「専門職と言えるものを身につけたい」という気持ちが年々強くなり、キャリアチェンジを目指して留学しました。
と、一行で表現すると簡単ですが、「何をキャリアとするか」については相当悩んだ時期が長かったと思います。
日本国内でもう一度学校に戻ったり、自力で勉強してキャリアチェンジするというオプションもあったのですが、日本よりもアメリカの大学院のほうが、仕事に直結する実際的なスキルを磨く場所という意味合いが強く、より確実なチャンスがあるように思えました。
たとえば日本で弁護士になるとしたら、大学で法学部に籍を置きながら専門学校に通って司法試験合格を目指す、という人が多いですが、アメリカの場合は大学を卒業したあとに大学院(ロースクール)に入り、実際に仕事で使える知識やスキルを身につけます。
医師になる場合も大学院(メディカルスクール)です。
過去に成功への道ともてはやされたMBAも、大学院(ビジネススクール)を卒業して得られる学位の名称です。
日本で「大学院」と聞くと(最近は変わってきていますが)学術的な研究の場所というイメージが強いと思いますが、アメリカの大学院は、そういう意味で、「アカデミックなアプローチを兼ねた専門学校」みたいなものだと私は思います。
そういうわけで私も当時、ロースクールやMBAの可能性もずいぶん検討しました。
日本からロースクールに留学する場合、大学で法学部を卒業していたかどうかで弁護士資格を得るために必要な学位が変わってきます。私は文学部卒だったので、もしアメリカで弁護士になることを目指すなら、J.D.(Juris Doctor)という学位をとるために3年、そのあとL.L.M(Master of Laws)という学位で1年かかり、やっと資格試験を受験することができます。
資金的にも時間的にも(頭脳的にも)自分に可能かどうかはわからないけど、とりあえずやってみよう、と思い、まずはロースクール受験に必要な「LSAT」という試験の勉強を始めました。
「LSAT(Law School Admission Test)」は、国語(つまり英語)、数学、分析能力を試すセクションなどで構成されるテストです。似たようなテストがMBAの場合は「GMAT(Graduate Management Admission Test)」、その他一般の大学院はGRE(Graduate Record Examinations) などなど、大学院の内容によって必要なテストが決まっています。
フォーマット的にはTOEFLに似ていて、LSAT、GMAT、GREとも、何度も受験して一番高いスコアを提出することができます。
ところが・・・
日本からいきなりJ.D.取得を目指してロースクールに留学しようという人が少ないせいか、LSATの場合は年によって日本国内で受験できなかったりします(1999年頃の話)。
私はロースクール留学を数年検討していたのですが、ある年はグアムへ、またある年は韓国まで、LSAT受験だけのために会社を休んで行きました。
インターネットも今ほど普及していなかったあの頃。
書店で「留学事典」などといった参考本を買ったり、米国大学院留学の準備コースを持つTOEFLアカデミーなどの専門学校が主催するセミナーに参加したり、と、必死で情報を集めていました。
それから、LSATという試験は解き方にコツがあり、自力で勉強するだけでは効率が悪いので、やはり米国大学院留学のための予備校、「Kaplan」でLSAT受験クラスをとったりしていました。
Kaplanというのはアメリカの大学院入試のための予備校で、ちょうど私がロースクール留学を目指していたころに日本校が初めて東京に開校されたのです。
私はおそらく、初期の生徒の1人だったと思います。
そこで「Analytical Skills」=分析能力をテストするセクションを勉強したり、他のロースクール入学希望者と話すうちに、「なんか私・・・全然向いていない道を無理やり行こうとしているかも」という気がしてきました。
Analytical Skillsのテストというのは、たとえば、
最初の一文が真実であることを証明するために必要な条件をa)~b)より二つ選べ。
ジョナサンが泳いでいる。
a) ジョナサンは冬の間プールにいる。
b) ジョナサンはプールにいる。
c) 冬の間プールで水泳が行われる。
d) プールで泳いでいるすべての男の子が泳いでいる。
というような質問に答えるものです。上の質問はシンプルな例で、実際にはもっとずっと複雑で微妙な内容です。こういう質問に次から次へと取り組んでいると、しみじみと「ああ、頭のいい人っていうのはこういう質問をさっと明確に答えられる人のことなんだなあ」と思いました。そして「私は違うなあ」とも。
上のようなロジックを問う質問以外にも、たとえば、
「フットボールの試合で、ディフェンスの4名をA、B、C、Dとする。この4名は右から左に、この順番で並ぶ。試合中、AとCが場所を交換し、CがBと場所を交換した。今、一番左にいるのは誰か?」
といった、時間をかければ(絵を描いたり)誰でも解けるものの、複雑になってくるとだんだんわけがわからなくなって「あああーー!」と頭をかきむしりたくなるようなタイプの質問もあります(時間制限があるのでこういう問題に数秒で答えなければ全部終わりません)。
あるとき私はこういう問題を解いていて、答えの選択肢a)、b)、c)、d)という文字を見ているうちに、「なんとなーく、Cという字が濃く見えるなあ。Cにしておこう」とCをマークしてしまいました。
その瞬間でした。
「ああ、私はロジカルな思考に向いている人間じゃない。感覚派なんだなぁ。感性を使う仕事につかないときっとハッピーにはなれない」
と悟ったのでした。
(ま、頭脳が足りないことに気づいて挫折しただけ、とも言えますが)
ではなぜ、ロースクールをあきらめたあと、通訳・翻訳へと向かっていったのかを次回に説明します。
自分の日本でのリーマン生活を振り返るだけで悪寒が走りますが、日本(しかも商社)で働きながら専門学校通いなんて、凄いっすね。日本の労働環境てそれをやるのに、どれだけ気合いが必要なことか…
僕も、20代後半て、(余計なことが大半でしたが)物凄い色々なことを考え出したころでしたね。23で(結構ルンルンで)帰国したのに、28頃には「やっぱちゃんと勉強し直したほうが…」とか思ってましたもんね。結局僕は32まで待ってしまいましたが…
今でも実は何がやりたいのか分かってないんで、「肩書きだけ専門分野」な僕にはまだ修士は無理かな、なんて。MBAて本当「H1-B」関連には無意味と聞いてるし、そんなにビジネス関連に興味あるわけでないし。
GREとか、話題を思い出したら、「やっぱやめとこ」て感じです。
たつやさん、商社って激務なイメージがありますが、私は事務職だったので、24時間戦うビジネスマンとかではなかったんです(笑)
時間的な制約はなかったんですが、モチベーションの維持が難しかったです。なにしろお給料はいいし、合コンの相手人気ナンバーワンみたいな会社で、「社内結婚して優雅なマダムになる」ってオプションを目指すという誘惑は常にあり・・・(笑)
私も一度一時帰国してまたこっちに戻ってきたので、たつやさんの20代後半の葛藤もとてもよくわかります。そのことはまた別の記事で書こうと思います。
専門分野にしては私も同じくまだまだです。通訳・翻訳という仕事自体の専門性はどんどん低下していって、英語以外の専門性がないと仕事にならないし・・・もう一度大学院に行こうかということもよく考えますよ。
迷いながら、ハッピーな人生を過ごして行きたいですね。
私もまだまだ悩んでます。
大学を卒業して5年、育児休暇もはさんだし、それなりの昇給もあるけど、このままでいいのかな?って。
お金より、向上心とか好奇心を満たすために、まだまだ色んなことを勉強して、それを仕事に使いたいっていう気持ちのほうが強いです。
いつでも学校に戻れる反面、今の生活を見つめ、「さぁ、戻ろう!」って決意することってなかなか大変ですよね。
あとはタイミングかな。
Erinaさん、常に向上心を持つのは大事なことですよね。
私は通訳でもフリーではなくてインハウスなので、気づくとフリーだったころ、目指していたころのアグレッシブさをなくしてしまって、これじゃいけないな、って思うんだけど、何しろ今もサラリーマン生活ではあるので、なんとなく時間が過ぎてしまいます。
子育てが一段落したら、またフリーに戻りたいな、って思ってるんですけどね。そのためには今油断しないでスキルアップをこころがけないと・・!
アメリカの大学・大学院は、いろんな年齢の人がいるのが心強いですね。Erinaさんも頑張ってくださいね!!