ブラックホール集荷所
私の家の近所に、「ブラックホール」と呼ばれている、郵便局からの配達物預かり所があります。
家に誰もいないときに小包が届くと、「あなたの配達物はここにあるのでとりにきてください」というハガキが残され、一定期間内に取りに行かないと荷物が送り主に返送されてしまいます。
日本と同じように管轄の郵便局が小包を預かっている場合も多いのですが、なぜか私の住む区域では、郵便局ではなく、この荷物預かり専用の施設まで行かなければなりません。
で、なぜブラックホールかというと、この施設の管理システムが非常にずさんらしく、多くの人の荷物が行方不明になってしまうからです。
まったく、先進国とは思えない恐ろしいいい加減さですよね。
とは言っても、郵便物を出せばほぼ確実に届く、電車はきちんと時刻表どおりに到着する、それが普通の日本という国のほうが、全世界を見ると実は少数派なんですよね。
イタリアに住んでいた友人が以前、「郵便物なんて届かなくて当たり前」と言っていたので、それにくらべたらアメリカは、まぁ届くほうが普通なのでまだましなのかもしれません。
ちなみにこれはあくまでもアメリカの郵便局(USPS: US Postal Service)の話です。FedexとかUPSなど宅急便業者に頼めばもう少し信頼性があがると思います。
そんなわけで、世界有数の規則どおり物事が進む日本と比べては酷かもしれませんが、このうちの近所のブラックホール集荷センターはアメリカの中でもとくに信じがたい場所だと思います。
まず、場所がものすごくわかりにくいところにあります。外から見ると何の特徴もない白い壁に金属のドアがあるだけで、看板もなにもなし。番地だけが頼りです。
で、このドアが常にロックされていて開きません。
ドアの横のブザーを押して、用件を話さないとアンロックしてくれないのです。
いったいどういうサービスなんでしょうか。やはり国営だとこうなってしまうんでしょうか・・・
無事アンロックしてもらって中に入ると、ものすごく不機嫌で有名なジョーじいさんが出てきます。
この人のキャラが強烈です。
Yelp.comという、レストランからあらゆる公共施設まで、さまざまな場所を評価するサイトがあるのですが、そのYelpで、このじいさんが名指しでものすごい批判の的になっています。
あんなやつはクビにしろと書いている人さえいます。日付を見ると2年くらい前なのですが、同じように批判しているコメントがつい最近もあるので、このじいさんは批判にさらされながらも2年間クビにされず勤務し続けており、かつ、態度も変わっていないようです。
アメリカ社会はシビアですぐ解雇されるというイメージがありましたが、国営となるとそうでもないのでしょうか・・・?
数々のYelp情報によると、不機嫌なジョーじいさんは、荷物をとりにくる人々から不在通知表を受け取ると、物も言わずに奥に入っていきます。そして長いこと、長いこと出てきません。
タイミング悪く自分の前に待っている人が数人もいると、小包を受け取り損ねたばかりに、こんな場所で1時間近く待つことになります。じいさんが奥で荷物を探している間はブザーにも答えることができないので、本当に運が悪い人は金属のドアの外で、何度ブザーを押しても返事がなく「閉まってるのかな?」と不安になりながら待たされることになります。
そしてじいさんがやっと出てくると、「そんな荷物はない」と言われる可能性が非常に高いのです。そして「届いたら電話する」と言われ、電話番号を記入させられますが、その後電話があるということはまずないようです。いくら待っても電話がこなくて、こちらからかけてもそんな荷物はないと言われ、結局紛失してしまったという経験談がいくつも寄せられています。
さて、この集荷センターに行きたくないので、オンラインショッピングの場合などは私か夫の勤務先に送ってもらっているのですが、あるとき日本から母が私のお気に入りのバッグを送ってくれたことがあり、つい勤務先に送るように言うのを忘れてしまって、見事にブラックホール行きとなってしまったことがありました。
このバッグは母がずっと前に入手したもので、とても使いやすいのでよく母から借りていたのです。母が退職し、もうあまり使うこともないので、私に譲ってくれることになりました。
似たようなバッグをかなり探していたのですが見つからずにいたところで、譲ってもらえることになって私は大喜びでした。
そんな大事な荷物がブラックホールへ・・・、もし紛失してしまったらまったく同じ商品が簡単に買えるようなものではなかったのです。
さらに悪いことに、なんと、私は不在通知を無くしてしまったのです!!
荷物引取りの歳に、不在通知に書いてある番号が必要なのに・・・
こればかりは私のミスであって、ブラックホール集荷所とは関係ないことですが、ちゃんと不在通知を持参してすぐ取りに行っても「ない」と言われてしまうことが多いのに、不在通知がなかったらもう絶望的かもしれない、と思うと、私は本当に悲しくなりました。せっかく母が送ってくれたバッグなのに。
しかし、なんとしてもバッグを取り返さなければ、と私は戦略を立てました。
まったく、たかが不在で受け取れなかった荷物を受け取るだけなのに戦略が必要なんて、日本ではありえないことですが・・・
まず、ブラックホール集荷所で荷物がなくなってしまうのは、きっとジョーじいさんがものすごく適当に配達されてきた荷物を積み上げているからだと思うのです。
コンピュータにデータをインプット、なんて程遠くて、手作業で適当にかたっぱしから荷物を棚に並べているに違いありません。なので、不在通知に書いてある番号は実はあまり当てにならないのかもしれません。
次に、母は小包をEMSで送ってくれたのですが、そのラベルはきっと、たくさんある荷物の中でちょっと目立つはずです・・・ラベルに日本語が使われているので。
あのオレンジと青の色使いも目立ちそうです。
そこで、インターネットで検索して、EMSのラベルの画像を見つけ、カラー印刷しました。
これをジョーじいさんに見せれば、どうせちゃんと整理整頓されていない荷物の山の中でも、ぱっと見て同じものが見つかるはず。
これがこまめに不在通知のデータインプットなどしていたら逆にそういう探し方はできないかもしれませんが・・・
あとは、ジョーじいさんが「不在通知を忘れた」という人に対してむっとして意地悪な態度に出ないかどうかです。
「すごーーくフレンドリーに話しかけよう」と心を決めて、集荷場に向かいました。
ブザーつきのドアの前で心の準備をしてると、後ろから「大丈夫~?」と声をかけてくれた男性がいました。
その男性も受け取り損ねた小包をピックアップに来たそうです。そして「ここの人、すっごい無愛想なんだってね、知ってる?」「知ってる知ってる、Yelp読んだ!」と盛り上がってしまいました。
彼が私のかわりにブザーを押してドアをアンロックしてくれて、中に入ると、他に誰もいませんでした。朝一番に行ったので、私がその日最初のお客さんだったようです。
不在通知を忘れてしまったことを告げると、案の定ジョーじいさんは不機嫌な顔でじっと黙ってしまいましたが、そこへすかさずプリントアウトしたEMSの画像を見せて「こういうパッケージだから、すぐわかるはず」と説明をはじめました。
ジョーじいさんは私の説明をさえぎり、「これにまた記入して」と白紙の不在通知を机の上におきました。
私があわてて記入し始めると、一緒に来ていた男性がフレンドリーにジョーじいさんに話しかけはじめました。「So, Joe, how is it going?」などと、ファーストネームで呼びかけています。そこまでフレンドリーにされるとジョーじいさんもあまり無愛想にしていられないのか、ぼそぼそと受け答えしています。
やがて私の荷物を探しに行くジョーじいさん。一緒にいた男性のおかげで雰囲気が明るくなって、なんだかうまく行きそうでした。
それにしても本当に、ただ自分宛の荷物をとりにきただけなのに、この男性も私も、なぜここまで気合をいれて努力してこのジョーじいさんの機嫌をとらなきゃいけないのでしょうか?!
このジョーじいさんはいったい何が不満でこんなに愛想が悪いのでしょうか。
日本でも、あまりフレンドリーじゃない店員さん、とか、手際が悪い会計の人、という存在がまったくないわけじゃないのですが、アメリカの場合、そういう人に出会う頻度が違います。郵便局をはじめ、政府系、以前に書いた移民局とか、運転免許センターの人々も、ものすごく態度が悪くて冷たいので有名です。それがあまりに普通のことなので、よくジョークのネタになるくらいです。
さて、私の荷物はあっさりと出てきました!私の写真戦略が効いたのでしょうか?!
ジョーじいさんがEMSのパッケージを持って奥から出てきたときは、嬉しくて彼のことをハグしたいくらいでした。そのかわりに、場を和ませてくれた男性に小声で「Thank you, good luck!」と言って出てきました。
今後は自宅あてに荷物が送られないように気をつけようと思います。
ちょーー分かります!!本当まさにブラックホールですよね。
娘の誕生日の季節は、とにかく数週間に渡って不在にしないための戦いが続きます。
うっかり1つパッケージが不在になった時、不在票を持って取りに行ったら、直後に届いたらしい未配達の別のパッケージを間違って渡されてしまったようで、最終的に届いたパッケージのトータルが明らかに一つ少なかったんです!
正しい不在票は回収されてしまったので日本の送り主に問い合わせて荷物番号を教えてもらい、ブラックホールのスタッフに伝えると、そんな荷物はないと…
結局顔見知りの集荷/配達のおじさんにお願いして一つ一つ荷物を探してもらい、迷宮入りにせずに済みました。
冷や汗ですよね。送る人も受け取る人も、その荷物が届くことで笑顔になるのに、そういう人間的な先のことまで考えて仕事してほしいですよね(-。-;
でもジョーおじさん、あたしなら怖くて立ち向かえないかも…汗
カズミさん、コメントありがとうございます。
カズミさんの地域にもブラックホールがあるんですね・・・もしかしてご近所さんでしょうか・・・いえいえ、アメリカのあちこちにブラックホールがあるに違いません。
でも一方で、そんな親切な配達のおじさんがいるのも、またアメリカらしいですよね。本当にいろんな人がいますよねぇ。
無責任に楽しく読んでしまいました。すみません。
このジョーおじさん、この人自身がブラックホールに放り込まれて
愛想や任務、責務を失ってしまったのかもしれませんね。
日本では荷物が届かなければ不在票のうらに後日配達してもらえるように
希望の日時を電話でガイダンスによって打ち込めば配達してもらえるし、
田舎の郵便局だと『明日また伺います』なんて配達員の方が直筆で余白にメッセージを入れておいてくれるので、再配達の電話さえ不要です。
日本は親切ですよね~。ところで郵便料金って日本に比べてどうなんですか?
はじめまして。いつもブログを楽しく拝見しています。
うちの主人が郵便局で配達をやっているのですが、この郵便局以外が管理している集荷所の存在に驚いていました。今まで勤務してきた郵便局ではこういう所はなかったので。こんなずさんな管理、本当にひどいですね。。
一つ、不在でも配達してもらえる方法をお伝えしますね。受け取りサインが必要な荷物が来る時は、事前にあの不在通知(桃色の)を郵便局の窓口か配達員からもらって、住所、名前、署名をし、それとは別にメモを書いて(I’m expecting a package. Please leave it in the mail box or at the front door という感じで。一応このメモにも署名をしておきます。)、署名した不在通知と一緒にメールボックスの中に入れておいてください。これで大抵のものは不在でも配達してもらえます。そういう荷物の配達が頻繁にあるときは、不在通知をたくさんもらっておいて、常にメールボックスの中に置いておくといいかもしれません。
もちろん、ドアの前に置いておいて荷物がなくなってしまう、というのは自己責任になってしまうのですが、もしneighborが良くないとか大きなアパートで人の出入りが頻繁にあるところじゃなければ、ぜひこの方法を使ってみてください。
横から失礼します。tomokocさん、コメントありがとうございます!
USPS以外が管理している集荷所っていうのがあるんですね。きっとこのブラックホールもそうなのかもしれませんね。
というのも、私の印象ではUSPSはかなりきちっとしているというイメージですから、このギャップに私も驚きます。
私の昔の近所にもこのような集荷所があって、どこから見てもただの倉庫でした。看板もない。
ここにジョーじいさんがいるかわかりませんが、大きくて重そうな扉の向こうには、どれくらい古いのかわからない荷物がびっしりと積まれていました。
不在通知のアドバイス、ありがとうございます。私もぜひこれを利用してみようと思います。
ジョーじいさんがリタイヤしたら、今まで届いていなかったパッケージが急に人々のもとに届いたりする日が来るかもしれませんね・・・・。苦笑
Hisayoさん、郵便料金はそんなに変わらないような気がします。
私はForeverという、一度買えばその後値上げしてもずっと使えるタイプの切手を使ってます。はがき用の切手が30セントのときに買って、そのあと35セントになっても使えます。なんだか不思議ですよね。
tomokocさん、コメントありがとうございます。
ご主人が郵便局で働いてらっしゃるのですね。
この記事がまるで「アメリカの郵便局はどこもこうだ」と言っているようなイメージを与えていたら申し訳ありません。まったくそのような意図はありません!Yelpなどのサイトには極端な経験をした人達の意見が集まるので、きっとジョーさんもいつもこうというわけじゃないし、荷物を失くす人よりちゃんと入手できる人のほうがずっと多いはずだと思います。私だって結局あっさりと取り戻せましたしね!
通知書の使い方教えていただきありがとうございます!!
今までもよく玄関に貼り紙とかはしてましたが、あの通知書を使えるんですね。いいことを聞きました!!
Erinaさん、Tamamiさん、
大丈夫ですよ~。そのように受け取っていませんので!今まで主人が勤めてきた郵便局も、私たちが住んでいたところにもそういうところがなかったので驚いただけで。
不在通知のことで補足ですが、玄関やメールボックスにただ単にドアの前に荷物を置いておくようにメモを書いておくのは、受け取りサインが必要ない荷物ならそれで大丈夫です。でも受け取りサインが必要な荷物は、メモ書きだけではなくあの不在通知も必要なんだそうです(住所、名前、署名した部分を、不在通知にあるバーコードによってスキャンして記録に残しておくため)。
この方法、もっと公に宣伝すればいいのに。。と思うんですけどね。不在時の荷物を取りに行くのもかなりの時間と労力を使いますからね。ましてやこのブラックホールのようなところだったら。。恐ろしいです!Tamamiさん、本当にお疲れさまでした。
ちょっと日が経ってますが…
そういえば、顔見知りの配達のおじさんが言ってました!郵便局の窓口に立つ人は必ず、とーっても細かい研修を受けるんだそうです。
でもこの集荷倉庫で働く際には、研修は一切行われないそうです。そのおじさんは窓口から倉庫に異動した珍しいタイプで、細かいことも良く把握してくれてたんですが、彼曰く、倉庫の責任者すら研修を受けてないので、お客さんが正しい手続きをしても不備扱いで配達しないなんてことも起こるみたいです。
いやぁ、愚痴り出したら止まらない~。でもtomokoc onさんの郵便局が管轄してないって言うのを聞いて納得です。ちなみに不在にしない為の裏技、使ってみます!!