続「行ってから踏ん張んべ」(2)

色々と調べた結果、北西部ではアイダホ州が安いらしい。

1995年4月、アメリカに来て2回目のTOEFLをタコマにて受験。5月、結果は、490。

「これで、やっと(ESLではなく)アメリカ人生徒達と同じクラスが受講できるかも。」
何ヶ月か経過してやっと辿り着いた数字面での出発点に、少し安心する。

何かを調べる場合、本や雑誌だけが頼りだった当時。

前情報と言えば、前述の学校リストにあった学費と専攻などについてのみで、色々な学校のフリーダイアルに問い合わせてみるが、手続き以外については説明されても想像の域を絶して、まったくピンと来ない。

それでも勢いは溢れ、いざ誰も知らない未知の土地・アイダホへの移動を決定。

学校が星のように点在するワシントン州やオレゴン州とは違い、短大・4大、公立・私立を合わせても、両手の指で数えれる程度しか学校がないこの州。

あまりよく分からないまま、転校先に選んだのは「College of Southern Idaho」。

州の最南端に近い街、Twin Fallsにあるらしい…

「学費が断然安い」と言いましたが、以下は参考程度に気にとめていただければ幸いです。
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ワシントン州:Quarter制(秋、冬、春学期:各3ヵ月弱)。
Bellevue Community College: $2,000(各学期12単位の場合)。
年間学費: $6,000(夏学期除く)。
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アイダホ州:Semester制(秋、春学期:各4ヶ月弱)。
一般的なCommunity College: $1,200(各学期18単位上限)。
年間学費:$2,400(夏学期除く)。
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※もちろん、今、1995年当時の詳細についての記憶はかなり薄く、実際の金額とは差があると思います。あくまで参考ということでご了承ください。

6月中旬。
ベラビューでの春学期が終わり、一度、日本に帰国しバイトをすることに。

(※超余談:シアトル~成田間の旅路。バンクーバーでのストップオーバーで、神々として崇拝している、Allan HoldsworthChad WackermanSkuli Sverrissonをたまたま見つけてしまい、アワアワしながら一緒に記念写真を撮らせていただいたりしてたら、感極まってちょっとモラシチャッタみたいな…)

帰国直後、新聞日曜版に掲載の「ヤマト運輸お中元仕分け」のバイトに応募。
この作業自体は未経験だが、もちろん時給が高めの「夜中~早朝シフト」を選択。

「たった1ヶ月超のバイトだが、25万円以上くらいは稼げるな。よし。」

たまたま体格が大きいので、初日に「お前、こっち手伝え」と、ハチマキ姿の(どこのガテン系バイトにもいるキャラだが)「バイトの長」ような人に呼ばれ、クール宅急便の担当になる。

JR京浜東北線近くにある、ヤマト運輸の集積所にある冷蔵室内で、集積されてきたクール宅急便の小包をベルトコンベヤーに流し、ひたすら宛先別に仕分けては、発送口で待機のトラックに持っていく作業。

手は忙しいが、先輩の皆さんは雑談をしながら取り組んでいる。

ベルトコンベヤーを挟んだ真向かいに立つ、自分の親くらいの年齢であろうオジちゃんに声をかけられる。

「お前、普段は何やってんだ?」
「学生です。夏休みなんで、少しでも学費の足しを稼ぎたくて。」
「お、なんだ、兄ちゃん、えらいな。ちゃんと勉強して、ちゃんとした仕事就かないとな。」
(※イメージ)

休憩時間になっても、所謂「お馴染み」ぽい先輩の皆さんは雑談に華が咲いているが、慣れない夜中の作業に、小生は疲れている。
その他「新米」も休憩している冷たい廊下の床に寝転がり、頭に巻いたタオルを緩め、目を閉じる。

こんな休憩がシフト中3~4回ある。
ひたすら仮眠に努める。

「は~い、これ最後~。」

ベルトコンベヤーの先から響いてくる、その日最後の号令を聞いた朝六時前、解散。

履いていた安全靴と着ていた作業着を置きにロッカー室に立ち寄ると、先輩達数人が背広に着替え始めている。

なんと、これから「昼間の仕事」に出勤なのだとか。

「競馬」「お姉ちゃん」「借金」という言葉が、別の先輩からヒソヒソと伝わってくる。

大人の事情か。

バブル崩壊後で、ちょうど「リストラ」という言葉が耳に入り始めた始めた、この頃の日本。

中には「経営してる会社が傾いて、バイト代を家族の生活費に回している」という大先輩の姿もチラホラ。

アメリカを経験したとはいえ、まだ19歳。

日本の深夜肉体労働バイトでの出会いとその現実は、とても深く衝撃的でした。 

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