アメリカに「ブラック企業」はあるか?
日本で話題の「ブラック企業」という言葉。
不当な人事、残業、業務内容、扱い・・・・聞いているだけで胃が痛くなります。
アメリカにはそのような企業があるのでしょうか?
私の少ない勤務経験で断言するのはかなり無理がありますが、その中で少し、例を紹介します。
私が大学を卒業したのは2007年の春。
不況の直前で、就職ブームの頃でした。新卒もほとんどが就職。
私も例に漏れず、第一希望だった某IT系企業に就職。私の前後にも新しい社員がゾロゾロと雇われ、チームが2倍、3倍の大きさになりました。
入社から半年後、不況に突入し、アメリカ経済は一転します。
金融機関を顧客とするこの企業は、不況のあおりをガッツリと受け、レイオフに続くレイオフが行われました。
最初に切られるのは年収1000万円越えの中間管理職の人たち。チームを再編成するので不要になるそうです。
次の波でヒラ社員・・・とはいえ、撤退が決定したプロジェクトに関わってきた前線の人たちですから、みんな理系博士号・修士号を持っている30代~40代の働き盛りの人たちばかり。
気づけば、あの人も、この人もいなくなり、オフィスがガランとしていきます。
この辺りになると、残された社員は誰もが「次はわが身」と思いながら毎日出社します。
毎4半期の最終金曜日になると、「今日はまたレイオフがあるのだろうか?」なんて、みんながヒソヒソと噂しています。
嫌ですね~・・・こんな状態で仕事ができると思いますか?
しかしながら、こんな状況にも関わらず、プロジェクトが変われば新しいチームが編成され、少ないながらも新しい人が雇われたりします。
「なんで?」
私は疑問を持ち始めました。
今までいた人を切って、新しい人を雇う。5人出たら1人入る、という感じ。まるで使い捨てみたいな人事です。
「この会社は、社員を大事にしない会社だな。」
私はそう思い始めました。
しかし考えてみると、ITという業界の性質が、おそらくそういうものなのです。
常に新しいテクノロジーやルールができ、新しい知識や能力を必要とされる。専門分野が合わなければ、一から勉強させるより、すでに知っている人を雇う・・・・・経営側から見れば、これは当然のことなのかもしれない、と思うようになったのです。
そうは思ってみても、個人的にはその考え方は好きではなかったので、私はこの会社を辞め、次はITじゃないところに行こうと決めました。
そして就職したのが、現在の銀行。ここには勤務年数が15年、20年、という人がゴロゴロといます。
銀行というのはまた特殊な業界です。
その性質上、この業界にいる人はコンサーバティブな人が多く、転職などリスキーなことはしない人が多いです。レイオフは必要最低限で行われ、もしレイオフされたとしても別の銀行に再就職します。
テクノロジーやルールが目まぐるしく変わることもなく、昔の知識や経験が使えるので、長く、様々な経験を持つ人は重宝されます。
社内で採用枠があれば、まずは”internal hiring”で内部雇用の告知が出ます。外から新しい人を雇うより、すでにいる社員の希望を聞き入れ、キャリアアップを勧めるためです。出て行く人も少ない分、入るための門もかなり狭いのです。
「うちはブラック企業」と決める前に、その業界や、自分の業務内容を振り返って、「これってこの仕事の性質だ」と気づくのも大切かもしれません。
つまり、対人が苦手な人は営業職は向かないだろうし、数字が苦手な人は数字関係は向かないでしょう。
サービス関係は時間がなかなか固定しないものだし、デスクワークは腰が痛くなるものです。
銀行は培われた経験と知識が必要とされ、IT系は新しいものが必要とされます。
(ちなみに私の前職のIT企業、過去7年でCEOがすでに2回も変わっています。)
もし「ブラック」な理由が性質とは関係ないもの(たとえばいじめとか、個人的な攻撃)だとするなら、人間的なもの。
前の会社で、とても優秀な同僚Aさんがいました。
数学の博士号を持ち、人当たりも面倒見もよく、話やプレゼンも上手な人でした。彼の顔は広く、頭脳にも評判があったのです。
しかし、Aさんのボスは、彼に対してそのような評価はしませんでした。
それよりも、このボスと個人的に親しく、頭脳も中の上くらいのBさんに仕事を回し、新しいプロジェクトに参加させました。
どう考えてもAさんのほうがBさんより優秀な社員です。
周りはみんなこの事実を不可解に思い、「明らかにひいきだ」と陰で言っていましたが、Aさんにはどうすることもできません。彼はボスの批判をすることはしないものの、相当くやしい思いをしていました。
しかし現実は、Aさんはこの会社で出世することなく、レイオフ。Bさんは出世していきました。
これは日本での「パワハラ」に相当します。ボスが個人的な選り好みをし、部下の能力を客観的に測ることなく、彼らの将来を決めることになったのです。
現在のAさんは、昔から続けてきた副業をメインにし、別の業界で仕事をしています。私が思うに、Aさんはこちらの仕事のほうが向いており、今はとても楽しそうなのでよかったなぁ、と思います。
私はこの体験を通して、「会社には必ずしも優秀な人が残るわけではない」と思いました。残るのはあくまで「そこに合う人」であって、「より優れた人」ではないのです。
これらの例を見て、私の前職の会社は「ブラック企業」だったと考えるでしょうか?
私はそうは思いません。
確かに私の考え方とは合わなかったし、私が出世するべきだと思った人はしなかったかもしれない。
しかし、企業も人間と同じでそれぞれに「個性」があり、そこに同調する社員だけが集まり、残っていくのかもしれません。
どうでしょうか?
あなたは今の仕事で満足ですか?
Erinaさん、こんにちは。
>残るのはあくまで「そこに合う人」であって、「より優れた人」ではないのです。
同感です。優れた人は他所でもやっていけるという事が往々にしてあります。もしかしたら”ボス”にとっては、自分を越えてしまいそうなAさんより、Bさんの方が使いやすかったのかも・・・
>そこに同調する社員だけが集まり、残っていくのかもしれません。
ぬるま湯のカエルだけにはなりたくないです。
SUEさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
>自分を越えてしまいそうなAさんより、Bさんの方が使いやすかったのかも・・・
私もそう思います。
学歴の時点でも、Aさんは博士号を持ち、Bさんとボスは修士号、という差もついていました。その事実が、出世という意味では具体的にどのような違いがあるのかは私にはわかりませんが・・・。
難しいですね。
自分も相手も人間ですから、完璧なものはないし、理想だけでは会社は動かないというのが現実です。
だからこそ、今ある場所で満足できないのなら、頭をヤワラカクして次に進むことも大事かな、と思います。
SUEさんがおっしゃるように、できる人はよそでも受け入れられ、成功するものですね。私もそういう柔軟な強さを持ちたいです。
ブラック企業というか、ブラック的な性質のボスはいると思います。まさに今、アメリカでそんな目にあってるのが主人やその仲間ですが・・。Erinaさんのおっしゃるように、「残るのはあくまで「そこに合う人」であって、「より優れた人」ではないのです。」はそのとおりだと思います。ブラック性質のボスはそもそも、部下を人してもリスペクトしなくなります。部下の親族の死や子供の誕生日ですらも、休暇を与えるのにふさわしい理由として認めません。明らかに徹夜になる仕事を与え、その翌日の早朝にミーティングをすると言っておきながら、開始20分前にキャンセルすることもいつもの事です。あ、愚痴になってしまいました、すみません。日本のブラック企業というのは、人を人としてみない、という企業のことかと思います。そういう意味で実際、主人のボスは社長なので、ブラック企業はアメリカにもあります。
SOFIAさん、コメントありがとうございます!
確かに、企業は小さくなればなるほど、社長や経営陣の人となりがストレートに現れますもんね。
人事部みたいに監査する部署がない場合は、会社は社長の城みたいなものですから、社長の性格がそのまま会社経営ですよね。
私が学生インターンをしていた会社もやはり小さい企業でしたので、社長の人格が私なんかにもわかって面白いと思いました。笑
大手に入って会社の歯車になるか、中小企業で会社と一緒に動かしていくのか、って全然違う働き方ですからね。
歯車は歯車なりに大事だし、ほかの事は気にしなくていい。
中小企業はそんなことを言っていられず、何でもやらなくちゃいけません。
どちらにしろ、働きやすい環境で、「この人について行きたい」と思える人の下で働きたいですね。