アメリカは今でも科学研究で世界のトップなのか

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アメ10読者の皆さんこんにちは、KAZです。

年明け早々、科学分野で大きなニュースが話題になりました。
日本の理化学研究所(理研)の小保方晴子博士がSTAP細胞という万能細胞の作成に成功したというものです。

理研と言えば、世界最速のスーパーコンピュータ「京」を開発した研究所です。

STAP細胞は、一昨年ノーベル賞を受賞した山中伸弥先生の研究チームが作成したiPS細胞よりも「簡単に」、「短期間で」、しかも「癌化のリスクがほとんどなく」作成できるというもので、突然のルーキーの出現に世界が驚かされました。

しかしながら現在、論文の信憑性に疑いがあるとして調査が進められており、結論が待たれているところです。

ところで、この小保方博士は、ハーバード大学留学中にこのプロジェクトに着手したそうで、スーパーバイザーのヴァカンティ博士の下、研究を進めたそうです。それを日本に持ち帰り、論文を発表しました。

現在、日本から研究留学のために渡米する研究者は結構います(バブルの頃に比べるとだいぶ減りましたが)。

それは、未だにアメリカやヨーロッパが日本よりも科学分野において優れているという言う認識があるためです。

我々の先人たちは昔、日本が外国に比べて大きな遅れを取っている事を知り、外国の学問・研究を習得するため何十日間の航海をかけて海外(当時はイギリスがメイン)へ留学しました。

彼らは短期間の間に異国での科学技術を習得し、その後日本へ帰り、日本人後継者を育てました。さらに彼らは日本の科学進歩に貢献しただけでなく、世界的に大きな功績を残しました。
僕もそういう人たちに憧れて渡米したという動機は否めません。

しかし、僕が実際に渡米してみて思った事は、

「思っていたほど世界の先端ではなかった。」

もちろん僕は、ハーバード大学ほどレベルの高い大学にいるわけでもない、片田舎の大学で研究をしている身ですが、それでも、さほど日本の研究レベルとは大きな差を感じませんでした。

技術的にも、日本で行っていたものとさほど変わりないし、研究者の頭脳も日本人の方が上だと思います。

すなわち、先人たちのおかげで、アメリカやヨーロッパと日本との間で科学技術的な差は殆ど無くなっているという事に気がつきました。

むしろ、言葉が通じる分、日本で研究を続けていた方がやりやすかったと思います。

普段、研究のディスカッションをしていても、細かいニュアンスが伝えきれず、シンプルな説明を言葉多く話してしまうため、逆に相手を混乱させてしまう・・・ということがよくあります。

なので、アメリカで研究を続けているうちに「わざわざ日本の職を辞して言葉も生活も不自由な国にに来た理由は何だったのか?」と、悩む日々が続きました。

さらに僕を悩ませるのは「アメリカは研究費が潤沢にあり、試薬も湯水のごとく使える」というイメージが覆された事です。
アメリカ国内での科学研究費に費やす国家予算は下がる一方で、研究費の主要な出資機関であるNIHの研究費採択率は5%以下と言われています。
しかも、アメリカ人を優先して採択するので、中国人やインド人などの研究者の採択率はもっと低いです。

さらにアメリカは、これまで増やし続けていた軍事費を来年度は10%も減らす予定にしており、それを見ても経済状況は良くない事が分かります。

また、アメリカはこれまで日本を含む、移民の少ない国々に対して「永住権抽選プログラム」という抽選方式でアメリカの永住権を与えていたのですが、それもここ数年で廃止されようとする動きが起こっています。

このように、今現在、アメリカの研究者にとっては決して良い台所事情とは言えず、「自分のやりたい研究をやる」意味では、アメリカはもはや世界のトップではありません。

もし、研究環境だけを良くしたいのであれば、経済的に潤っている国に行くのが賢明だと思います。なぜならば、お金がなければ研究に使う試薬が買えないのですから。

なので、中国やシンガポールで研究を行う方が楽だと思います。

しかし、それでも僕は未だに将来アメリカで研究を行いたいと思っています。

それは、研究レベル、学術レベル云々よりも、研究者個人個人の人間性が好きだからです。

アメリカ人研究者は日本人と違って夜中まで実験しないし、週末にラボに来る人なんてほぼゼロです。

それでも、研究に対してはとても真剣ですし純粋です。間違っている事には間違っていると言えるタイプの人種です。でもわりと大雑把なとこもあります。

日本の研究者にはクレイジーな人がたくさんいますが、アメリカにはもっとクレージーな人がいます。でも、クレイジーの質が違うのです。
どう違うと言われると説明しづらいですが、一言で言うと、

アメリカ人は「科学的にクレイジー」
日本人は「非科学的にクレイジー」

というところでしょうか。
そういった周りの環境を生かせるかどうかは自分にかかっていますが、もし、日本人ならではの勤勉さをうまくアメリカ人の気質や環境に合わせる事ができれば、大きな成果を生み出せると思っています。

少なくとも、アメリカに来ている中国人の勤勉さとハングリーさは、今の日本人の上をいっていると思います。日本やアメリカは経済だけでなく科学技術も中国に追い越されようとしています。

僕はアメリカに来て、日本の現状、アメリカの現状を知る事ができました。今は、さらに世界全体に視野を広げて考えていかなければならないと思っています。

また、アメリカの広大な土地や自然環境、さらには人付き合いをしていくうちに、研究はラボの中だけでするものではないという事に気がつきました。 

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「アメリカは今でも科学研究で世界のトップなのか」への1件のコメント

  1. Kazさん、こんにちわ。楽しく?読ませていただきました。私もアメリカの大学の研究室におります。(Research Tech.です。)何年いても英語はチャレンジです。”科学的クレージー”と”非科学的クレージー”〔大爆笑してしまいました。。)英語ではどう訳すのがよいのでしょうか・・・

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