アメリカを離れてしまったけどまたアメリカに戻りたくなったアラフォー研究者が就活するぞ:第2回「突然クビを宣告される。」
第一回「やっぱり中国の生活は楽じゃなかった」はこちら。
というわけで、実験もほとんどしなくなってしまい、これからどうしようかと悩んでいた頃、ボスに呼ばれました。
「カーズ、中国に来てから一年経つが、まったくデータが出ていないじゃないか。この調子でいけば何年経っても論文が出せないままだ。どうするつもりなんだ。」
「だから、何度も言っているように細胞がおかしくて実験の再現性がとれないんです。抗体も全てジャンクです。」
「じゃあ、実験条件を変えてみればいいじゃないか。」
「考えられる条件全て試しました。でも無理です。だいたい、XXXを投与しても細胞が死なないのが変です。もう一度アメリカから細胞を取り寄せてください。」
「じゃあ、今あるデータで論文をまとめるしかないな。(細胞を取り寄せる話はスルー)実はミーはそろそろ他の大学に移ろうと思っている。まだどこに行くかは決まってないけど3ヶ月以内にラボは閉鎖する予定だ。」
はぃ!?
「だからカーズももし日本に帰るんだったら帰ってもいいし、ラボにいる間に就職活動しても構わないから。」
おぃおぃ、話が急すぎます。あなたが中国に連れてきておきながら都合が悪くなったからポイ捨てですか!?
次の行き場所どうしよう・・・てか、中国への引っ越し代返してくれ。
アカデミックの世界ではいくら経験があっても業績すなわち論文がなければ仕事もありません。中国に来てまとめようと思っていた論文も結局中途半端なままなので、結局この数年間一報も論文を出していません。そんな生産性のない研究者を誰が雇おうというのでしょうか。
雇ってくれる他のラボを大学内で探そうと思えば探せましたが、もう中国にいたくありません。
ずっと夢見てきてたアカデミックの世界だけど、もう日本に戻って企業に就職する事を考え始めました。
しかし、研究者用の就職サイトに片っ端からエントリーするも、契約社員だったり年齢制限があったりと、予想はしていましたがかなり厳しいものでした。
いくつかSkype面接もやりましたが、中国国内でのインターネット回線が不安定なせいで音声が良く聞き取れず、もうグダグダでした。そのため、次にSkype面接のオファーをもらったときは、「一時帰国して御社まで伺います」といったものの、「そこまでしてもらう必要はない」と言われてしまいました。
遂には、もういっそのこと研究の世界をやめて日本で古民家カフェでもやろうかと思い、物件探しまでしていたのですが、やはりもう一度アメリカに戻って研究をやりたいという思いが捨てきれませんでした。なので、ダメ元でいくつかの大学や企業のリクルートサイトにエントリーしたりしました。が、やはりしばらく経ってもどこからも返事がありませんでした。
(やっぱりアメリカに戻るのは無理なのか・・・)
もう諦めかけていた頃、一通のメールが届きました。
「あなたのCVを見ました。もしうちの研究テーマに興味があるのであれば3人の推薦状を送ってください。」
つづく
怖いです、怖すぎます。『アメリカ戻りたい第1回』から続けて読みました。何でしょうかこのハチャメチャ感。
先日まで日本の某製薬会社で、抗体原薬の開発部門にいました。ちょっとKazさんの置かれている環境が尋常じゃなさすぎて、、、開いた口が塞がりません。心中お察しします。アメリカのアフィリエイトとのやり取りでも、使える人/使えない人は結構ハッキリしてましたけど、Kazさんのボスさんなのか、その研究室/大学の傾向なのか、はたまた中国という国柄なのか?(差別するつもりはありませんが、恐らく国柄)中国で新薬や新しい治療法が開発されても、ちょっと怖くて手を出せないですね。その前にいた会社は針で有名な医療機器メーカーだったんですが、バッチまでがっつりのコピー品が出回っているとヨーロッパのドクターたちから報告があり、調査したら犯人はやっぱり中国の代理店でした。
無事に転職先が決まりますように、お祈り申し上げます。本当に全身で萎えてるところかと思いますが、頑張って持ちなおしてください!!
はじめまして、カリフォルニアでポスドク生活している者です。
非常に共感しつつ読ませていただいております。僕のラボもブラックに属する?と思われますが、中国は想像をはるかに超えますね。心中お察しします。
物理的・精神的なダメージでも前向きなKazさんに、自分も頑張らねば、と思い直します。
現在はアメリカに無事に戻られ、ご自身の研究を継続されていらっしゃるのでしょうか?
今後の記事を楽しみにしております。
体に気をつけて、ご自愛ください。
Kazさんの記事が面白すぎて、声を出して笑って読んでいます。
分野は全く違うけれど、共感しまくり!