アメリカ企業で人を切る その1
景気が若干上向きだと言われても、まだまだあちこちで人が切られている噂を聞くと、本当に大丈夫なのかと思ってしまいますね。幸い、私の会社はこの不景気と言われている世の中でも、かなり上向きで頑張っているので、一応、今のところ切られる心配はしていません。ただ、昨日まではその心配がなくても、今日、明日には何が起こるか全く予想がつかない世の中ですから、万が一に備えて、それなりの準備をしておく必要はありますけどね。
今回のお話は、切られる方の話ではなく、人を切る際の話です。
私はアメリカに15年ほどいまして、アメリカ企業の管理職も経験しているのですが、その際に経験をしたことをお話しようと思います。
ピュアなアメリカ企業に入って、エンジニアリングのマネージャをしていた時のことです。私の部下に、回りからの評判が非常に良くない人がいました。まぁ、私の目から見ても、ちょっとまずいんじゃないのと思うほどでした。つまり、チームに自分から溶けこまず、単独行動する人。自分に与えられたことをやれば、後は知らないと言う動き方。人とよくぶつかる。それも、仕事上ではなく、ほんの些細なことでぶつかります。私の部下が、私に相談しにくることもしばしばありました。
そのころの私は、日本企業を辞めて入社したばかりでしたから、多分、回りから見ると、日本的な管理をしていたのではないかと思います。
正直、彼をどう扱えば良いかがよくわかっていませんでした。彼を呼んで話をすることもしばしばありましたが、彼を激昂させることを恐れて、差し障りのない方法で彼を扱っていました。他の部下からは、彼が全く変わらないので、ますます文句が出ました。当然と言えば当然の話しですね。
で。。。
悪い噂はどこでも簡単に広がります。彼の噂がヒューマンリソース(人事)の耳に入ったようで、ある日、私のもとに、ヒューマンリソースのマネージャから連絡がありました。
マネージャ:「Masa、あなたのグループで、何かよくない噂が出てるんだけど。」
私:「いや、その。。。」
マネージャ:「ちょっと、私のオフィスまで来てくれない?」
私:「わかりました。」
内心、少し不安でしたね。何を言われるのか全く予想がつきませんでしたからね。彼の話なのか、それともマネージメント能力不足の私の話なのか。
で、彼女のオフィスに入ります。
マネージャ:「Masa、悪いけどドアを閉めてくれる?」
私:「(?これは良からぬことを話すってことじゃないのか)。。。」
マネージャ:「Masa、あなたのグループにXXXって人、いるわよね。グループの他のメンバーから文句が出てるみたいなんだけど。仕事しないって。」
私:「ああ、彼ですか。ええ、そう言う話は出てます。あなたの耳にも入りましたか。」
マネージャ:「会社として、生産性を下げるような行いをしているものに対しては、それなりの処置をしなければならないことは知ってるわよね。」
私:「ええ、それは知ってます。ですが、彼がそこまでしているとは、まだ思えないんですよね。与えられたことはしっかりとしているし、彼なりにしっかりとアウトプットも出していると思いますし。」
マネージャ:「噂だと、彼は他の人と比べて、仕事量が少ない。にもかかわらず、それにかなり時間がかかっている。つまり、生産性が低いんじゃないかって。」
私:「うん、まぁ、もしかしたらそうかもしれませんね。ただ、彼はまだ経験も浅いし、OJT(On The Job Training)で学ばなきゃならないこともたくさんあると思うんですね。なので、我々としては、彼をもっと育てていくべきじゃないかって、そう私は思ってるんです。」
マネージャ:「彼は、経験者として雇われたわけよね。で、その程度のアウトプットしか出せないと言うことは、他の人と比べて生産性が低いってことじゃないの。我々は、顧客の満足度を常にキープするために、とにかく良い製品をタイミングよく出していく必要があります。そのタイミングを崩すような人が、チームの中にいると、会社としても、彼を問題視しなければならないってことじゃないかと思うのね。」
私:「そうですね、そのとおりだと思います。」
マネージャ:「じゃぁ、こうしましょう。あなたから彼に『90日宣告』をしてください。彼をオフィスに呼んで、彼の事情を良く聞いて、彼の今の生産性の低さを認識させ、どうしたら、彼の生産性を上げることができるのか、それを彼に提案してもらいます。もちろん、あなたもそれに参加すること。で、それを文書に残して、90日間、彼にそれを実践してもらいます。そして、90日後に、この件についてもう一度彼とミーティングを持って、彼はその目標を達成することができたかどうか話し合います。」
私:「ええ、それは、マネージャ教育のときに学びましたから知っています。それに沿って、彼を指導していくってことですね。」
マネージャ:「そう。そのとおり。」
私:「『90日宣告』ってのは、その人にとって、最後通告みたいなものじゃないですか。彼、それを通告されて、嫌気を起こしませんかね。『なんで俺がそんな通告を受けなきゃいけないんだ』って。」
マネージャ:「そうね、そう感じると思うわ。でも、そうじゃなきゃ、彼、もしかしたら、永遠に彼の能力の無さに気づかないかもしれないじゃない。そしたら、会社だけではなくて、彼にとっても最悪だよね。」
私:「確かにそのとおりですね。」
マネージャ:「だから、それは通告すべきなのよ。で、それで気分を害して、会社を辞めていくかもしれない。でも、それは、彼にとってはものすごく残念なことなの。なぜかって、彼が自分に気づかずに出ていくわけだから。」
私:「なるほど。」
マネージャ:「だから、『90日宣告』と言うのは、会社が大きな心を持って、できない人を救おうと言う素晴らしいシステムってことなの。わかるでしょ?」
私:「確かにそうですね。彼を切ろうと思えば今日にでも切れるわけですから。その方が会社としても、無駄なお金を使わずに済みますからね。しかも、もっと優秀な人材にお金を使うことができるってことですから。」
マネージャ:「そう。だから、ちょっと彼に話してくれるかな。」
彼女と私の話は1時間ほど続きました。ミーティングの後、私は、アメリカの管理システムと日本のシステムの違いを肌で感じ取っていました。
私:「さて…、少し作戦を練って、彼と話をするかな…。」
こんな経験が初めての自分ですから、しっかりと作戦を練ってから、彼をオフィスに呼ぶことにしました。
この続きは次回のお楽しみと言うことにしますか。
ドキドキしちゃいます。\(◎o◎)/
え?私はもちろん、Masaさんの立場に自分を置き換えて読んでいますよ。
間違ってもxxxさんではなく。
hisayoさん、毎度コメントありがとうございます!
ハハハ、そうですか、ドキドキしちゃいますか。このころは私もドキドキしてました(笑)。
続きは今週末と言うことで。。。 よろしくです〜。