アメリカ企業で出世街道を10倍うまく歩く方法ー入社後数年間で大切な事
今回は、就職直後から最初の5年から7年目ぐらいまでにどうすれば良いか見てみましょう。
アメリカの一般的な出世の段階は、ヒラ社員、プロジェクトリーダー、マネジャー、ディレクター、VP、シニアVP、エギュゼキティブVP、CEOとなるでしょう。あなたの会社は、これらの階級の間に幾つかのステップを作っているかも知れません。専門職と総合職で出世街道を分けている産業も多いと思います。専門職のトップはCIO、CTO、Chief Engineerなどの役職になります。CEOになるには、総合職の街道を最終的に歩かねばなりません。
アメリカの会社は年功序列という概念が弱い、というより、ある年齢で、それなりの役職に到達していないと、CEOまでに登るのが非常に難しくなります。50歳迄にVPになっていないと、その先を登るのは殆ど無理でしょう。VPは、社長への道の登竜門です。若くここに着けば、若い程その後の道が開けます。会社に入ったら、なるべく早くVPへの道を考えて下さい。30代後半から、40代前半にVPになれると社長になれる確率が上がります。
最初は殆どの人は、専門職に着くはずです。特定の職務を行うのに、最適な能力を持つ人として採用された筈です。始めの数年は誰もが専門職の出世街道を歩きます。ここでは、問題解決力と解析力、そして表現力が勝負どころです。与えられた課題に、誰よりも優れた回答を出すことです。斬新なデーターの解析方法や、明確な報告書が専門職の初期の段階を一つずつクリアするのに必要です。
この段階は、日本人は一般的に有利だと思います。日本の学校教育に感謝しましょう。特に日本で受験を経験した人は、文系理系を問わず、緻密で正確なデーターの解析や系統立てて課題をこなす能力に長けています。受験で身についた、限られた時間で回答を明確に表現する能力は、アメリカ人の同僚から一目置かれる筈です。ちなみに表現力は英語力ではありません。図表の作り方一つをとっても、日本人は一般的に良い物を作ります。この段階では、日本人の長所を最大限に使いましょう。
課題を誰よりも早く、正確にこなす事に焦点を置くと同時に、注意しなければならない事が二つあります。一つは、アメリカ人の同僚からの信頼を得る事、もう一つは、自分の存在価値を明確にする事です。
人間力はどの国でも、どの文化でも人間関係をスムーズに運ぶのに重要です。アメリカと日本の大きな文化の違いの一つが、アメリカ人は作られた部分を先ず指摘し、日本人は作られていない部分を先ず指摘する事です。アメリカの子供は、テストで70点を取ると先ず、親は正解の70点がどのようにして得られたかを調べますが、日本の親は正解出来なかった30点をどこで間違ったかを先ず調べます。アメリカ人は不足点を真っ先に指摘される事に嫌悪感を持つので、日本人は、アメリカの同僚との交流に注意する事が必要です。
アメリカで日本企業の現地法人で働いていた時、日本の駐在員達が、「アメリカ人は自分の失敗を人のせいにする」とよく嘆いていました。自分の非を潔く認める事は、日本人感覚では、美徳の一つでしょう。これはアメリカでは注意が必要です。あなたが失敗を認める事は、チームが責任を負うことになります。アメリカ人が自分の非をなかなか認めないのは、自己の保身だけでなく、チームを責任の所在から逃避するという重要な意味があります。従って、あなたが簡単に非を認められると、あなたはチームの一員では無いとみなされます。
非を認めないという事は、人のせいにする事とも意味が違います。アメリカの有能なリーダーは、失敗は予期出来なかった状況下での不可抗力という方向に持って行き、今後は同じ様な状況にどの様に対応するか述べ、決して自分のチームの非を認めません。
同僚の仕事を公の場で褒めるのと、自己の非を簡単に認めない事が、同僚の信頼を得るのに必要です。
もう一つ、日本人が心しなければならないのは、自己宣伝です。日本の会社では、与えられた課題をクリアすれば、黙っていても会社はあなたの成果を正しく評価し、あなたの能力に気付き、上に引きあげてくれますが、アメリカの会社は、黙っていると先ず気付いてくれません。黙々と仕事をし、素晴らしい物を造ったら、人々は自然とその作品の価値に気付くという、日本人の職人気性は残念ながらアメリカでは通用しません。
あなたの仕事のアプローチが、普通のやり方より如何に素晴らしいかを、明確に表現しなければなりません。それも、年に一度の査定の時だけでなく、日常的にしなければなりません。なるべくボスにあなたの成果を小まめに報告する様にしましょう。その際、ただ結論を報告するので無く、あなたの仕事が、いかに普通の結論と違うかを強調しましょう。売り込みです。
これも日本人の美徳とはずれていますが、アメリカで社長に成るには、アメリカの美徳に沿うしかありません。日本人の美徳は捨て、自己宣伝、自分の売り込みに心掛けて下さい。特に、自分のボスにこれをするのが重要です。あなたのボスは、あなたが思う程、あなたの事を分かっていません。自分の成果や、自分の望みを直接的に明確に伝えるしか無いのです。
あなたより出来の悪い同僚に、プロジェクトリーダーの座を奪われ悔しい思いをした事がありませんか。その場合、あなたが自己宣伝にどれだけ時間を費やしたかを考えて見てください。おそらく、同僚はセルフマーケティングに費やした時間があなたよりずっと多いことに気付くはずです。出世街道の初期は、専門分野とセルフマーケティングの能力が出世の鍵です。
能力と、同僚の信頼、そして、セルフマーケティングでプロジェクトリーダーの地位を得ましょう。
Nao-T様
駐妻をしています。息子が、今年アメリカの大学に進学し、家を出ました。この先ずっとアメリカで暮らしていくつもりのようです。
アメリカでの就職活動、会社に採用されてからのことなど、息子が今後体験するであろうことを知ることができました。親が日系企業のことしか知りませんので、とてもありがたいです。
サンクスギビングに帰ってきたら、こちらのブログのことを伝えます。
またまた参考になる記事、ありがとうございます。
私は今、ちょうどこの時期に当たっているところで、最初のふるいにかけられている気がしています。
年齢を目安にするのは、目からウロコでした。
私の業界は勤続経験が長い人がものすごく多く、同年代でも、勤続歴が10年という人もゴロゴロいます。私は4年目です。
勤続歴が長いということは、学歴は短いのですが、アメリカ企業ではどちらが強いということはあるのでしょうか?学歴よりも経験、という側面もヒシヒシと感じていて、今、仕事を休んで大学院に行く価値があるのかも考えてしまいます。
そんな中、先日、うちのボスと長期的な計画をディスカッションしました。
彼女も、うちのチームについての自分の計画を個人的に話してくれたりしていたので、信用してもらえたのだと思っています。でも自分を育てるのも自分であり、再来年をめどに大学院に行きたいという気持ちも伝えました。今、考えるとこの告白は正解だったのかわかりませんが、個人的にbehind her backで物事を進めるのが嫌だったので、相談しました。
こういう個人的な計画って、どこまでボスとシェアするべきなのでしょうか?それを理由に、「Erinaはうちに残る気がないのね」と思われるのも困ります。でも、そのおかげで新しい扉も開くかもしれないし、隠しておくのも気が引けます。
すみません、もう一個質問です。
日本で仕事をしていないので、総合職という言葉の意味がよくわかりません・・・。アメリカではどういうことなのでしょうか?
専門職は、理系ならEngineer, Scientist, Researcher, Analystなんてところでしょうか?
理系職でも、管理職の人はみんな、もともとは専門職からスタートするんですよね?以前働いていた職場は超理系でしたが、専門職→管理職の人は、みんな勉強はできるけど、マネジメントスキルに欠けるという人が多かったです。
メリー様。コメントありがとうございます。少しでもお役に立てれば幸いです。家族皆さんで楽しいサンクスギビングをお過ごし下さい。
Erinaさん、いつもコメントをありがとうございます。どうやらキャリアの分岐点に来ているようですね。精神的の辛い時でしょう。私自身は二度転職していますが、最初の時は転職の良いやり方が分からず、あまりキャリアの発展によくない転職をしてしまいました。その打撃はキャリア5年分のロスと見積もっています。
本文で、専門職と総合職という話をしましたが、これは専門職と管理職と言うべきでした。英語ではtechnical path(TP)とmanagerial path(MP)と成ります。みんなキャリアの最初はTPを歩むのですが、30から35歳頃からMP志向の人は、自分の専門以外の分野を探し始めます。多くの人はTPの道を進み続け、自分の専門分野かその近辺の分野で定年退職をします。TPの最高地位はCTOやCIOですが、自分の分野のVP迄行ければ相当なものです。例えば、EngineerはEngineering VPを目指します。
CEOに成るにはMPに変更せねばなりません。MPは守備範囲が広くなるので、複数の分野のVPになれます。例えば、MPの道でEngineering VPに成った人は、5年後にはMarketting VP や工場長に成るかも知れません。
MBAはちょっと難しい選択です。10年前だったら持っていれば有利にだったのですが、今は違います。特にMPを歩みたい人は、MBAの取り方と、取得するB スクールで道が大分変わります。有名大学のB スクールに会社のお金で行かせて貰うのが最適です。
会社を辞めてMBAを取るのは、超一流のB スクールで取得するのでなければ、2,3年の職務経歴のロスのダメージの方が大きいと思います。会社を辞めて、自分の専門分野のマスターやPhDを取るのは、TPを歩み続ける人にはプラスですが、MP志向の人にはマイナスでしょう。
Erinaさんの将来のキャリアプランによって、タイミングや取得方を考えて見てください。
Erinaさんのもう一つの質問、ボスに大学院に行きたい事を言うべきかについてです。これは難しい質問です。場合とボスによると思いますが、タイムラインは示さず、曖昧な態度で、ボスならどうするかと聞くのが一番良いと思います。
私の部下が、数年後に会社を辞め、大学院に行くと言ったら、私は、彼の向学心と向上心を褒め、”Tell me if there is anything I can do for you to achieve the goal”と言い、出来る限りのことはします。しかし、明日から始まる5年越しのプロジェクトのリーダーにするかというと、もし三年後に彼が退社したらどうしようという不安がよぎります。この様に、タイムラインを明確にすると自分に不利になる事の方が多いと思います。
自分のキャリアゴールをボスと話す事は大切です。殆どのボスは、あなたをどうやったら助けられるか真剣に考える筈です。キャリアゴールがあなたの会社の外でしか満たせない場合は、曖昧にする方が良いと思います。
私は、潔しを是とし、裏を持たない江戸っ子気質を美徳として育ってきたのでBehind one’s back はしない様にしてきました。しかし、キャリアについては、全てを出す事は損だと思うようになりました。会社の上層部の長期計画には、3年後にあなたの部署は廃止で皆クビになる事になっていても、そんな事は今は教えてくれません。そうすればみんな明日転職し、あなたの部門は明日に営業出来なくなってしまいます。それでは会社も困るのです。直前まで隠し、従業員をあと3年働かせ収益を上げたいのです。会社が持ち札を見せないのなら、あなたも隠すしかありません。
ゲームセオリーで、来年辞めるという従業員の対処法の最善策には、すぐにクビを切るというのが正解です。いつか辞めるかもという従業員の対処法の最善策は、解なしです。タイムラインを明確にするのは注意して下さい。