アメリカ企業で出世街道を10倍うまく歩く方法ー キャリアマネージメント編

一度会社に入ると、出世したい、もっと給料を貰いたいと思うのはどこの国民でも同じでしょう。日本では、出身校や学閥などで、入社式の日にすでに出世の限界がある程度分かってしまいますが、オープンなアメリカ企業では、「私だって社長になれる可能性がある」と思う筈です。そしてなれる可能性は実際日本よりあります。

逆に日本の会社は、有名大学を出て組織のレールに乗れば、余程の失敗が無い限り、それなりの地位には付けます。これは、非常に効率の良い人事管理とシステマチックな社内教育の賜物です。生産力の高い有能な人員を育てる事に関しては、日本企業の右に出るものはないと思います。

アメリカの会社の社員の質は玉石混交、システマチックな社内教育制度も無い。従ってあなたのキャリアプラニングは、あなたが自分で作り、自分で管理するしかありません。私の周りにも、スタンフォードやMITで学位を取って、平社員のままで終わってしまう人も何人もいます。彼らは、地元の三流大学出身のふた回りも若いボスの元で働きます。給料だって、ボスの方が3倍も多く貰っていかも知れません。アメリカの会社では、このレールに乗っていれば安心という仕組みはありません。常に競争していなければなりません。

あなたも、「俺の方がボスより遥かに仕事が出来るのに何故ヤツがあんなに給料を貰えるのだろう?」とか、「私の方がずっと頭が良く仕事も出来るのに、何故彼女が先に出世するのかしら?」と悔しい思いをした事がありませんか。私は何度もありますが、今振り返ってみると、私はキャリアマネージメントをよく分かっていなかったことに思い当たります。

出世街道を歩くのに最も大切な事が二つあります。数値とネットワークです。アメリカでは、数値で表せない結果は役に立ちません。日本の様なしっかりとした人事管理があれば、見えない部分の評価に大きなウェートが期待でき、また会社も見えない部分を正しく評価できる管理者を育てようとする傾向があります。日本企業では、数値以外のところが重要になります。

逆にアメリカ企業は、数値をしっかりと評価出来る人間が良い管理者と思われます。多様な価値観を持った人の集合体であるアメリカでは、見えない所を評価する基準が作れません。従って客観的な数値を使ってしか評価が出来ないのです。「数値にできない成果は、成果ではない」と私は肝に銘じています。

従って、あなたの仕事の見えない所をどうやって数値化し、改善の効果を数値で示していくかが重要になります。先を越していく人達は、うまく自分の仕事内容を数値化出来た人達です。自分の仕事内容の数値化には神経を使って下さい。自分で測定法を開発しても構いません。始めのうちは、自分に与えられた直接の業務の内容を数値化する事です。売り上げや、シェアの向上などは、組織の成果を測る物差しで、個人の成果を測るのには使えません。お客さんに電話をした回数とか、こなした書類の数など、あなたの行動を測るもので構いません。これらの数値を使い、月々の効率をプロットしていくのです。どんなツマラナイ事でも数値化すれば、ボスはこいつは向上心があると思い、どうやって有意義な尺度を作るかアドバイスしてくれるはずです。数値にあくまでもこだわりを示して下さい。もしあなたが作った物差しをボスが全社員に適用したら、あなたは同僚の先を行ったことになります。

次はネットワークです。ボスとの関係はさる事ながら、ボスの同僚のあなたへ評価や、ボスのボスがあなたをどう見るかが、あなたの小さな昇進に大きく影響します。例えば、あなたのグループのマネージャーのボブが、今度の企画のリーダーにあなたを任命しようと思っているとします。ボブの一存で決められるのですが、報告として、その意図を部会で報告すると、ボブの同僚のメアリーが、「私はあの人は適任ではないと思う」と言っただけで、昇進がオジャンになった事例を何度も見てきました。あなたの昇進には、上司の同僚の見解が大きく影響する事を頭に入れておく事です。従って直接に関係ない上司達にアピールする必要があります。

第一印象はかなり強い影響を与えます。特にビジネスがグローバル化し、バーチュアルなコミュニケーションが普通な今日、あなたの一挙手一投足を、どこで誰が見ているか分かりません。ある電話会議に全く別の部門のお偉いさんが偶然電話の向こうに居合わせ、私が何の意図もなく言ったことを誤解され、ずっと根に持たれ辛酸を舐めたことがあります。私は、彼が電話の向こうにいたことも暫く知らず、人伝に彼に私の印象が最悪である事を知りました。その後彼は私の所属する部の総括部長になり、煮湯を暫く飲まされました。

送ったメイルが転送を繰り返し、全く意図しない人達に読まれ誤解をされる事もよくあります。アメリカのボス達は、見た目至上主義の人が殆どですから、あなたの存在感の示し方に常に気を使って下さい。一度悪い印象を持たれると、事後処理に相当のエネルギーを消耗します。

第一印象を拭い去るには、日頃からの交流が大事になります。自分の部門の上下関係を超えたところで、会社の上役との交流を取ることは非常に有効です。様々な機会を有効利用して下さい。

会社の組織を細かく観察する事も大切です。自分の部門外で誰が何をしているか観察しましょう。会社全体の組織図を把握し、部門間の力関係に気を配って下さい。買収などであなたの部門の力が弱い場合は、あなた自身が心して精力的にネットワーク作りに努めなければなりません。直接のボスでなく、二段階上のボスの社内の位置はその下につく人全員に影響します。

システマチックな社内教育が確立していないアメリカの企業では、あなた自身が模索してキャリアプランを作らねばなりませんが、これが難しい。どこかの講習会やセミナーへの参加が、最も一般的ですが、参加にかけた費用と時間に見合った価値を生んだことを証明せよと言われると出来ないことが多い。従って、これらの予算は最初にカットされる傾向にあります。数年前は、Six Sigmaの資格は有効でしたが、今は殆ど価値がない。一昔前は、MBAが重宝され、地元のB スクールやPhoenixの様な通信制のプログラムでも、持っていれば有利だったのですが、今は超一流のBスクールでないと、それ程出世には優位にならないと思います。ただ、超一流のBスクールのMBAは、社長への道には大切な過程です。Phoenixで取るよりも、数年待ってトップ25のBスクールに行った方が将来遥かに有利になります。

業界のアソシエーションの委員会に参加するのはかなり有効だと思います。規制や規格がどの業界でもますます厳しくなる昨今、アソシエーションの委員会は規制の草稿に関わるので、ここで活躍すると、会社の役員とネットワークができます。

新任者や組織移動についての報告を読んで、会社の人事決定のパターンをつかむことも役立ちます。例えば、部長はいつも社外からヘッドハントする会社で、下から這い上がって部長になるのは難しいでしょう。その様な場合は、転職のタイミングを模索する事になります。また業界の他社の人事の広報を把握すると、会社間の序列が見えてきます。数年前迄は、GEは最高級のブランドで、多くの会社がシニアリーダーやマネージャーをGEからヘッドハントしました。実際GEを去る人達は、GE内では頭打ちだった人達が殆どで、本当に一流のリーダーなのか疑問な人に何人も会いましたが、そのブランド力は相当なものでした。

ブランド企業は、あなたの社長への道の最大のライバルになります。ブランドを凌駕するものは何かを、戦略的に考えなければなりません。会社の人事決定のパターンを把握し、適当な所で見切りをつけることは、出世街道を歩むのに非常に大切です。転職をあなたのキャリアマネージメントにどう取り入れるかは、社長への道の最難問です。次回はこのシリーズ最終回、転職について考えてみましょう。 

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