他人に突然話しかけられる

アメリカに暮らしている人、または旅行したことがある人でも、たまたま近くに居合わせた人に「突然話しかけられた」という経験は多いのではないかと思います。

渡米したばかりのころ、そういう体験をすると私はすごくびっくりしてしまってどう反応すればいいのかよくわかりませんでした。

私が日本で住んでいた東京では、突然他人が話しかけてくるとしたら「何かの勧誘」「手相うらないとか宗教系」「ナンパ」・・・など、怪しい状況がほとんどだったので、無視したり警戒するくせがついてしまっていました。が、アメリカに来たら散歩しているおじいさんが笑顔で「Good morning!」とか言ってくるわけです。

もしかしたら日本の場合も、都会ではなくのんびりした地方に行くと、フレンドリーに話しかけてくる人がいたりするのかもしれません。

東京でも下町のほうに暮らしていたころは、道を歩いてると突然おばさんに「あらあら、あんた寒くないのそんなかっこうで」とか話しかけられて、そのとなりの別のおばさんが「まー若いんだからいいのよ、あっはっは」などとつっこみを入れて去っていくという出来事がときどきありましたが・・・

アメリカでは下町のおばさんだけじゃなくて、おじさん、おばさん、若い女性、男性、小さい子供まで、突然話しかけてきます。

留学したばかりのころに若い男性に話しかけられると「もしかして、これはナンパ?」と勘違いしそうになりましたが、会話がいちど落ち着くと「じゃねー、Have a nice day!」と去っていってしまうので、「あ、やっぱりただの世間話だったのね」とほっとしたり残念だったり(?!)しました。

いくつかの実例です。

  • 留学先の街を歩いているとき、近くを通りかかった車の中から、小学校高学年くらいの女の子が「Hey!! I like your bag!!」と叫んできた。そのとき、たしかにピンク色の可愛いバッグを持っていて、なかなか売っていない色と形だったので目についたのかもしれない。でも相手がまだ小さい女の子で、それもわざわざ走ってる車の中から叫んできたのでびっくりした。

ちなみに「I like your…」というパターンは、突然話しかけられるときに一番多いパターンです。別に通りすがりとかじゃなくても、お店のレジとか銀行の受付とかで一言「Wow, cute nails!」なんてネイルアートをしている女性にCompliment(褒め言葉を言う)すると、ちょっとその場の雰囲気が和んだりします。

  • デパートの靴売り場にいたとき、靴によって赤、白、青など違う色の小さい丸いシールが貼ってあるのに気がついて、「これはサイズのこと?価格?」といろいろ考えてもわからずにいた。近くにいた女性も同じ疑問を思っていたらしく、唐突にさらにそのとなりにいた女性に「これって何の意味かしらね」と話しかけた。

私はてっきりその2人が友達同士なんだ、と思ったのですが、その後何も言わず遠く離れていって一人はデパートを出てしまったので、他人だったとわかりました。このとき「そっか、ふと疑問がわいたときはいきなりとなりにいた他人に聞いてみても、そんなおかしくないんだな」と学びました。

日本だとどうでしょう。どうしても他に聞く人がいなくて、必要だったら聞くかもしれません。が、まずは「あの、すみません・・・ちょっと聞いてもいいでしょうか?」などという言葉から始めるのではないでしょうか。これがアメリカの場合だと「ねぇこれってさぁー」と話しかける感じで、いきなり数年越しの友達のようです。

  • ある場所でトイレにはいろうとしたら、先に中に入っていた人がいきなり「外にいる誰か!今何時かわかる~?!」と叫んできた。

周囲に私しかいなかったので、あわてて「It’s… five past one!」とか答え、すると中の人がまた「Thank you!!」と答える。これがとくにフレンドリーとか恥ずかしそうとかいう感じではなくて、なんか淡々としていました。とくに緊急事態でもないような感じだった。このあとすぐに出てきたし、トイレの外に行けばすぐどこかで時計が見つかりそうな場所だったのに、なんというか、個室の中でふと「あ、今何時だろう」と思った瞬間にためらわず「だれかー!」と叫んだ感じでした。

  • これは話しかけるのとはちょっと違うけど、外を歩いているときにくしゃみをすると、そのへんのすれ違った人とかが、わざわざ振り返ったり、ちょっと離れていても大きな声で「Bless you!!」と言ってくれる。(すかさず「Thank you!」と返します。)にこやかな人もいるけど、無表情に、反射的にただ言っているという人も多い。
  • 子供ができてからは、エレベータや何かを待っているときなど、ちょっとした時間を共有する場所で同じくらいの子供を連れた家族がいたら、100%に近い確率でお互いに「何歳?」と聞きあってちょっとした子育て談義を交わしたりする。

何も話さなくても、子供を連れて近所を歩いていて、向こうからも親子が歩いてきたら、「仲間だ~」という雰囲気で「ハーイ」と言い合ったりします。バイカー同士がすれ違うとき親指を立ててサインするのと同じ感覚でしょうか?!小さい子供がいる家はどこも同じような苦労と喜びを味わっているので、無言のうちに「お互い頑張ろうね~」とメッセージを交わしているような感覚でもあります。

こういう感覚のまま、日本に一時帰国したとき、実家の近所にちょうどうちの娘と同じくらいの子供をストローラーに乗せて歩いてきたお母さんがいて、思わず「こんにちは~!」って言ってしまったことがあります。言われたほうのお母さんは相当びっくりしたようで、「え?え?知り合い?」と必死に思い出そうとするような表情のあと、「知り合いじゃないわ」と判断したのか、さっと無表情に戻ってそのまま行ってしまいました。

私も「こんにちは」と言った瞬間に「ちょっと待てよ。私ちょっと不自然なことしてるな」と気づいて、「しまった」という顔をしたので、おそらく相手は「人違いね」と思ったと思います。

私も以前そうだったのでよくわかるのですが、都内でいきなり親しげに話しかけてくる人がいたら、若い母親としてはまず警戒すべきなので、彼女の対応は間違っていなかったと思います。しかし思い切り無言の反応が返ってくるとなんだかちょっと寂しい気持ちがしました。

アメリカモードのまま日本で電車に乗っていると、なんだか隣にいる人に向かって「いやぁ、暑いですねぇ」とか話しかけたい衝動にかられます。

決して「アメリカ帰り」気取りっていうわけじゃなくて、アメリカでフレンドリーに話しかけられても英語でうまく返せなくて残念だったりした気持ちが積み重なって、帰国して日本語で話せる環境になったときに、「日本語なら、気のきいた会話ができる!」とばかりに開放的になって、日本語で同じことがしたくなってしまうのです。衝動にかられるだけで実際にはしないですけど。 

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5 comments on “他人に突然話しかけられる”

  1. 本当、フレンドリーですよね~。
    私は旅先でよく、「○○はどこですか?」って道を聞かれるんですが、いかにも外国人の、しかも観光客の私にそんな質問する気になるな~?っていつも不思議です。笑
    あるときは、電化製品の店で旦那が一人の男性と話しこんでるから、「知ってる人?」って聞くと「ううん、知らない」って普通に言うのでそれもビックリ。

    でも自分もやっぱりやってしまうもので、私もアメリカから初めて日本に帰国した際、コーヒーショップで何か関係ないことを店員さんに質問したら、友達に(たぶんその店員さんにも)ビックリされた記憶があります。
    「そんなこと、聞くんだね」って笑われました。日本に帰ったときは気をつけないとな~と思います。

    知らない人と話すの、楽しいので私は好きですけどね。
    私のホストファザーは姿が見えなくなったと思うと、誰かといつも立ち話をして数時間は戻ってきません。そんな彼は元警察官です。笑

  2. 私は40を過ぎてから通りすがりのご婦人に話しかけられることが多くなりました。
    バスに乗っているときやお店屋さんでもお互い微笑みながら会話することは心地よいことです。
    (話の内容はほとんど記憶にないので本当にたわいないことですね)

    日本人同士の場合、ある程度幅のある世代とのかかわりや、見知らぬ相手に対して恐れがなくなってきた年齢でないとこういうことはなかなかできないことなのではないかな?と思います。
    この年齢を【おばちゃん】と呼ばれるのだとしたら、ちょっとヤダナ(笑

  3. Erinaさん、私も生まれて初めてNYに行って緊張しながら歩いているとき、やはり別の観光客に道を聞かれたことがあります。まあ、NYはいろんな人種がいるから誰を「外国人」と言うかは曖昧ですが、思い切り外国人の私になぜ?とやっぱり思いました。そのときは、「私、東京出身だから、きっと世界共通のコスモポリタンなオーラが出てたのよ」と夫に自慢してましたが、とんだ勘違いですね(笑)アジア人女性って親切なイメージでもあるのかな?ほんとよく道は聞かれます。
    うちの夫もよく他人と話し込みますよー。彼はとくにフレンドリーな人なので最後は名刺を渡して「メールして」とか言ってます。10人中1人くらいの割合で、そうやって本当にメール交換してすごく仲良い友達になったりするんだそうです。そう考えると、誰にも話しかけないでいることでベスト・フレンドに出会うチャンスを逃しているのかもしれないですね・・・。

  4. Hisayoさん、コメントありがとうございます。
    実は私も最近40代になったのですが、以前より図々しく誰にでも話しかけられるようになってきました。自分では「アメリカ生活が長いしね〜」と思ってましたが、もしかして、単におばさんになってきたということなのか?と今、コペルニクス的発想の転換にせまられております。
    でも実は、私は昔から日本人とアメリカ人を比較すると、アメリカ人って「おばさん」に近いって思ってました。フレンドリーで自己主張が強く、細かいことにこだわらず、おおらか・・・。
    昔「オバタリアン」って言葉が流行ったの覚えてます?テレビで特集したとき、コメンテーターにあの山口美江さんがいて、「オバタリアンは帰国子女に近い。すばらしいことだ」と言っていたんです。
    そのことが、最近実感としてわかってきたような気がします。若いころは恐れていたオバサン化ですが、自分が経験してみると、なんだか世界が広がっていろいろ楽になった気がして楽しいです(笑)
    そしてアメリカという場所はおばさんにとっても生きやすい場所のような気がします。
    周囲に迷惑をかけたり不快感を与えるようなオバサン化は避けつつ、この新しい世界を楽しもうと思います。

  5.  はじめまして。過去記事に失礼します。
     私も昔留学中に、よく話しかけられて、アメリカ人ってそういう垣根がないなーって感心してました。それこそ、私はネールを塗るのが趣味だったので、バスの中とか「そのネール好きだわ~!どこでやってもらったの?」「自分でやったの」「すごーい、爪はやすりで削るの?」「ニッパーで切っちゃうけど…」なんて、延々と降りるまでしゃべっていました。レストランなんかでも、おススメとか聞くとあーだこーだと自分の好みを交えて説明してくれたり、どこから来たのかとか、子供たちは何歳かとか、たくさんおしゃべりしちゃいますよね。でも、オバサン化って言うのわかる気がします。日本でも、大阪に行くと、ほんの数日の旅行で行ってるのに、何度も道を聞かれたり、時間を聞かれたりするのです。(別にオバサンだけじゃなく、若い男性とか女性とかからも。)喫茶店で一人でお茶してると店員さんが「お待ち合わせですか?」とか聞いてくるし、お店でも「その靴どこで買われたん?」とか気さくに聞いてきます。そのせいか5%くらいアメリカ人の私は(←うそです(^_^;))よく「大阪のオバチャンみたい」って言われます。褒め言葉だと思って聞いてますけど…。

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