TOEFLの勉強
私が留学に向けてTOEFLの勉強をしていたのはもう12年以上前のことになってしまうので、今とは出題形式が異なります。ただ英語全般の勉強の参考になるかもしれないので、当時の勉強法について思い出して書いてみようと思います。
当時のTOEFLはマークシート方式しかなくて(現在はコンピュータが主流)、満点が677点でした。
アメリカの大学院留学の場合、要求されるTOEFLのスコアは580点以上というところが多かったのですが、私が留学先で専攻したのは「通訳・翻訳」、すでにプロとして活躍している通訳が腕を磨きにくる、という場所だったので、最低でも600点はないと入学が難しいという条件でした。
留学する前の私は、プロの通訳どころか、英語は大学受験のために勉強したレベルで止まっていて、社会人7年目になってだんだん忘れかけているというような状態。
たしか久しぶりに受けたスコアは500点を切っていたと思います。
でも1年半後、希望の大学院から入学許可をもらったときのスコアは620点まで上がっていました。
その1年半の間に、社会人生活をしながらどうやって英語を勉強したか、試験のセクションごとに説明します。
リスニング
日本人が苦手とするリスニングセクションですが、問題に使われる英語の難易度そのものは、他の文法や読解セクションに比べたらずっと簡単です。なので、リスニングのレベルを上げれば満点取得が可能なセクションです。
それまで英語圏に住んだこともなく、ネイティブの英語を聞く機会も非常に限られていた私は、まずは「英語の音に慣れる」というところから始めました。しかし、小さい子供でもないかぎり、ただ聴いているだけでどんどん吸収するというわけに行きません。
リスニングで大事なのは、ただ大量に聴くだけではなくて、「単語ひとつひとつ、aやtheに至るまで細かく丁寧に聞き取る」、という聴き方も同時に行うことです。
- 大量に聴く ・・・ 英語のシャワーを浴びる感覚で、とにかく可能な限り一日中英語を聴く。朝起きたら英語のラジオをつける。通勤途中も英語の教材を聴く(当時はCD、今だったらiPodですね)。食事しながら、歯磨きしながら、お風呂の中で、とにかくずっと聴き続ける。
- 細かく聴く ・・・ まず、英語の音声と、それを忠実に再現したテキストの2セットを用意する。そういう教材も売っているし、今ならインターネットで、たとえばNPRというアメリカのラジオ局のウェブサイトに行けば、音声ファイルとそのテキストをダウンロードできる。このセットを使い、まず英語の音声を聴いて、可能な限り聞き取れる部分を紙に書く。
最初はたとえ、10分で単語1つしか聞き取れなくてもそれを書く。何度も何度も、100回でも200回でも聴いて、もうこれ以上無理、と思ったら、今度はテキストを見ながら音声をもう一度聴く。この時点で音声は聴きなれた音楽のように記憶に染み付いているので、テキストと生の英語の音とがしっかり結びつく。テキストの内容を覚えたら、今度はもう一度テキストを見ないで音声を聴く。「I should have done that」とか「Right down there」とか、つながってひとつの単語のように聞こえる音を、そういう音として丸ごと覚える。
上記のような生活を1年半ほど続けた結果、リスニングセクションは常に満点をとれるようになりました。当時何度も繰り返し聞いていた教材、アメリカのニュース番組の音声だったのですが、まるで一時期気に入って何度も聴いていたラブソングを何年もたってからもう一度聴くと、当時の切ない気持ちが鮮やかによみがえる・・・というのとまったく同じ感覚で、そのニュースの音声を聴くと当時の気持ちや働いていた職場、友達のことなんかがぱーっとよみがえってきます。それくらい聴きまくりました。
文法
最新のTOEFL情報によると、日本人が得意とする文法セクションはなくなってしまったようですね。参考までに簡単に書くと、文法については地道に文法専用の問題集を使って学んでいくのが一番だと思います。一度大学受験で英語を勉強した人なら、基礎の基礎はできてますから、TOEFL頻出文法問題、のようなものをひとつ見つけるといいと思います。いくつかキーポイントをあげると
- 問題の数が多く、解答に解説もついていて、自分が使いやすいと思う問題集を1冊入手する。
- この問題集を、「何度も、何度も繰り返し解く。」ここが重要です。人は何度も同じ間違いを繰り返すので、ひととおり問題を解いて答えあわせをするだけでは忘れてしまいます。1冊の問題集を何度も繰り返し使い、間違った問題に印をつけ、次に正しく解答でいたら別の印をつけるとか、違う色で印をつけるとかして、最初から最後まで全問正解できるまで解きます。全問正解できるようになったら、また別の問題集にとりかかります。
- TOEFL過去問題集は傾向がつかめて良いと思います。少なくとも私が勉強していたころは、TOEFLには独特の傾向があると思いました。よく使われる単語も決まっていたりします。
単語
大学受験以来、英語の勉強をしていなかった私は、語彙の数を大幅に増やす必要がありました。しかしもう18歳ではないので、記憶力も衰えつつあります。そんな大人のための単語記憶方法、それは・・・
- TOEFL頻出単語集でもなんでも、自分に合う単語集を一冊用意する。単語の対訳に文例が入っていることが重要。
- その単語がたとえば全部で4000語だったら、一日200語覚えて20日で1サイクルになるようにする。ここがポイントです。
一日10単語なんて言っていたら、1サイクルが400日、1年以上たって最初の単語に戻っても全部忘れているに決まっています。単語を覚えるポイントは、いかにこの1サイクルを短くするかにかかっています。
一日200単語なんてどうやって覚えるの?と思うでしょう。これは、時間がかかります。初日はとくに2、3時間は覚悟します。具体的には
- 左に英語、右が日本語だとしたら、右側を紙か何かで隠して、一語一秒の感覚で、言えたら印をつける、言えなかったら次!最初は1ページで1個しか言えなくてもいい。とにかく200単語、1語1秒なら3分少しで終わるので、また最初に戻ってやりなおし。次は1ページで3個しか言えなくてもいい。またやりなおし。全部言えるまで繰り返す。3時間かかるかもしれないけど、とりあえず最後は200単語全部言えるようになる。
- 当然ながら、これは次の日には大方忘れてしまうかもしれない。次のサイクルが20日後に来たときには、また1ページで1個しか覚えていないかもしれない。でも、その次のサイクルでは少し増えて、その次はもっと増えて、あるときを境に、それまで200語言えるまで3時間かかっていたのが1時間になり、30分になる。数サイクル繰り返した半年後には、200語のうちずいぶん覚えていると思います。これがサイクルが1年以上かかっていたら絶対忘れてしまいます。
- どうしても最後まで覚えられない単語が5個~10個くらい残ったら、その単語だけメモ帳か何かに書き込んでおいて(今だったら自分にメールしてもいいし)、日常のちょっとした時間に集中して覚えるようにする。当時社会人だった私は、スケジュール帳などにそういう単語を書いておいて、職場でエレベータを待つ間に単語テストをしたり、仕事の合間にスケジュールチェックするようなふりをしてまた単語テストをしたり・・・と覚えるようにしてました。
- こういう単語の覚え方は、あくまでも単語を表面的に覚える手法です。本当に生きた英語として、微妙なニュアンスを含めて単語を覚えるには、やはり文章の中で使われている単語に触れるのが一番です。しかし留学前に短期間でTOEFLのスコアアップを狙うなら、4000個の単語のニュアンスが身につくまで文章を読んでいる暇はありません。ただ、このような機械的な単語記憶と平行して、できるだけ英文を読み、わからない単語が出てきたら調べるという作業も、もちろんとても大事です。
英語読解(リーディング)
リーディングについても、ちょっとしたキーポイントがあります。それは
- 質の高い英文テキストを用意する(TOEFL過去問の読解セクションの文がちょうどいいです)。
- これを覚える。丸暗記する。丸暗記できるまで繰り返し読む。
以上です。それこそ、a とか the にいたるまですべて丸暗記します。大変だけど、これは英語全般の勉強方法として非常に効果的ですよ。熟語を使った表現とか、英語らしい文章の構成、リズムなど、こうやってある程度の長さの文章を丸暗記することで非常に効果的に身につきます。ただTOEFLに必要な単語すべてをカバーできるまで文章を丸暗記するには時間がかかりすぎるので、これと平行して上記のような単語リストの暗記も行うわけです。
この丸暗記のほかに、読解力を早めるために、量をこなしていくことも必要です。ただTOEFLに出てくるようなアカデミックである程度レベルも高い英文を毎日大量に読むのは非常に疲れるので、もう少しレベルを落としてもいいのでたくさん読むこと、それには自分の興味のある分野の記事とか、思わず続きが読みたくなるようなとっつきやすい推理小説なんかでもいいので、息抜きの時間をかねて楽しんで読むといいと思います。
以上のように、大学院留学を決意してからTOFLスコア620点に到達するまで、私は仕事以外の時間をほぼすべてTOEFLの勉強につぎこんで(仕事中も前述したようなちょっとした待ち時間とか、昼休みはもちろん1時間ばっちり勉強しました)、1年半を過ごしました。
当時の週末など、一日が終わってふと「ああ、今日は一言も日本語を聞かないで、話さないですごしたなぁ」と思ったことがよくありました。街を歩いても電車に乗ってもずっと英語を聴いているし、1人暮らしだったので家でもずっと英語をBGMのようにかけていたし、それ以外の時間は家や図書館で勉強。本当に頭の上までどっぷりと英語に浸っていました。
アメリカに住み働いている現在のほうが、英語は仕事だけで十分!という気分なので、プライベートでは日本人の友達としゃべったり、日本語でメールを書いたりするのが楽しみです。Facebookも私のまわりでは英語で書いている人が多いですが、私は面倒でひたすら日本語です・・・(笑)
やっぱりあんな英語勉強漬けの日々は、大学院留学という目標に向けて短期集中だからできたんだと思います。今となってはちょっと懐かしく、必死な自分が微笑ましいような、懐かしい思い出です。
日本にいながらここまで英語の勉強って大変そうですね。すごいです。
TOEFLは曲者だと思ってたけど、バランスの取れた英語力を根本的に測るためには良いテストだと思います。でも文法はなくなったったのか~・・・結構難しかった記憶が。
Erinaさん、文法よりもより使える英語力を測れるようにしたのか、今はスピーキングとかもあるみたいですね。しゃべって録音するみたいです。私が受験していた当時はなかったです。
文法、難しかったですね。こまかーい間違い探しとかありましたよね。でも日本人には聞いたり話したりするよりは文法のほうが勉強しやすいのかな。
コミュニケーション力は重要だけど、私個人的には、あまりに基本の文法ができていないままブロークンな英語をしゃべっているとアメリカで教養のない人のように思われてしまって損なので(実際にはとても知的な人でも)、日本でしっかり文法の土台を作ることにはすごく賛成なのですが。
あ、そうですね、スピーキングがどうのこうの、って聞いたことあります。私が受けたときもなかったですけど、直後からできたような気がしますね。
そうなんですよね、文法は大事だと私も思います。昔は大嫌いでしたけど。笑
特に仕事をしようと思ったら、きちんとした文法の英語で話せるかどうか、とても重要になってきますね。
文法の選択問題は採点してスコアとして出すのが簡単だから、TOEICで文法セクションはなくならないと思いますが、TOEFLって採点は機械じゃなくて人間がしてますよね、きっと。文法が解っていないと、結局、長文読解なんてできないから、やっぱり文法は大事。リーディングセクションで点をとるためにも、おばかさんと思われないためにも、勉強しなきゃね!
私が大学生のとき(もしかしたら高校生だったかも)に受けたころは、練習問題にリスニングの問題用のソノシート(ぺらぺらのプラスチックのレコード)がついてました。。。あぁ、時代を感じる。サンディエゴに来る前に受けたときは、Erinaさんと同じ時期かな?コンピューターベースだったけど、スピーキングはありませんでした。
Tamamiさんもずいぶん努力されてますが、やっぱり大人になってから外国語を身につけようとしたら、努力しないとだめですよね。英語の勉強してる人たちには、頑張ってほしいです。
Makiさん、TOEFLは、ライティングなどはもちろん人間がしているけど、今のComputer-based Testは機械じゃない??たしか解答が正解か不正解かによって次の出題が決まるというシステムだったような気がする。あ、これはTOEICだったかな。要確認。
そうですね、長文読解は結局、総合力が試されますね。だから長文暗記が大変だけど効果的なんだと思います。高校生のとき「春はあけぼの・・・」と暗唱できるようにすることで、日本語本来の美しいリズムが身につくのと同じことかな。
カセットテープがぎっしりつまった大きな箱の教材とかありましたよねー!懐かしすぎます。こういう会話って今の留学志望者たちが見たら「いつの時代の人たち?」って感じなのかしら・・・笑
大人になってからの語学習得・・・、コミュニケーションだけなら文法完全にする必要はないんですけど、これは私個人の好みですが、言語というものが好きなので、なんというか、言語に対するRespectというのかな。aひとつ、theひとつにいたるまで、言葉にはすべて存在理由があるので、そういうのを無視したくないんです。Makiさんが以前、お子さんに「目には青葉・・・」を理解できるようになって欲しいと書いていましたが、私もすごくその気持ち分かります。英語について私がそういう深いニュアンスまで理解できることは一生ないかもしれないけど、それでも一生追求していきたいと思っています。
なんかもう、趣味の範囲ですけどね(笑)。