Angelinos freak out over “cold” weather
ここLAでは冬でもめったに20度以下にはならず、暖かく快適に過ごせるのですが、ごくたま~に20度を切ってしまうとLA中が「寒い、寒い」と大騒ぎになります。
広いアメリカでは同じ時期にマイナス30度になって危険なため外出が禁止されたり、深い雪に閉ざされてハイウェイが使えなくなったりしている地域がたくさんあるのに、LAではたかが20度以下で「寒くて凍えそう!コートが必要なんて信じられない!」と騒いでいるのです。
この現象が起こるたび、メディアではLAの大げさな寒がりぶりがネタにされてからかわれます。
たとえばこのふたつ。
http://youtu.be/7HDhmQuSLRghttp://
http://www.youtube.com/watch?v=EHJpNhGUP5Q
実際に極寒の中西部で暮らしたことがあり、今ではすっかりLAの暖かい冬にSpoilされている私には、この程度で騒ぐLAの人々の気持ちも、またそれを笑い飛ばす寒い地域の人々の気持ちも、両方よくわかります。
街中でインタビューされて「凍えそう」とか答えている人がいますが、本当に寒い地域ではこんな程度の防寒ではとても外に出れないし、第一街中を歩いている人なんていないからインタビュー自体できません。
「枯葉が舞っています」とか「オレンジの実が地面に落ちてしまった」とかのコメントも、枯葉どころか枯れ木に氷がついて樹氷になっている地域、オレンジどころか冬に果物なんて一切実らない地域の人々には「はぁ?何言ってんだ」の世界。
背景に「55」「60」などという気温が表示されている前でレポーターが「寒い、なんと気温は50度台!」と大げさに嘆いていますが、アメリカの寒い地域に住んでいる人ならその組み合わせを見た瞬間に爆笑するはず。
華氏50度は摂氏にすると10度、華氏60度で摂氏15度くらいです。
私が過去に住んでいた中西部では、冬は華氏20度台が普通。華氏20度で摂氏マイナス6度くらいで、華氏30度くらいだったらまだ安心するほう、40度と聞いたら「もうすぐ冬も終わり・・・」と希望が見えてきます。
今でもよく覚えています。28度以下になったら道路が凍ってハイウェイの運転が危ない。まだ日が昇らないうちに出勤するので、道路が凍っているかどうかは見た目でよくわからない。だから、毎朝確認する気温の数値は大げさじゃなく死活問題。気温を確認せずに外出するということはありませんでした。
寒くて暗い日が続く冬。ハイウェイの両側につもった雪が決してとけることのない数ヶ月。毎日、毎日気温を確認し、その数値に非常に敏感になっています。その地域に住む人々にとって「55」なんていう数字は「やったー春が来た!!嬉しい!!」と飛び上がりたくなるような大喜びの気持ちに直結しています。
で、その「55」という数字の前でLAのローカル局は「みなさん、今夜は冷えます。気をつけてください」なんて深刻な顔で言っているのですから・・・
大笑いしたり、「LA人、ふざけんな~」と頭に来る人もいるでしょうね。
ただ、現在はAngelino(LA住民のことをこう呼びます)となった私としては住民を代表して弁解しておきたいことがあります。
実際のところ、LAで20度以下になると寒いです。本当に凍えそうです。
なぜなら、何の準備もできていないから。
心の準備もできていません。LAに住んでいて毎日の気温を神経質にチェックしている人はほとんどいないでしょう。明日のお天気は予報を見なくても、「多分また快晴」と思っておけばだいたい当たりです。10月になっても11月になっても暖かい。で、すっかり油断していて12月に突然寒くなると、「わー!!聞いてないよ~」とパニックに。
家の準備もできていません。ヒーターが壊れていてもあまり困らないのでそのまま。ときどき寒くなって「ヒーター直さなきゃ!」と思っているうちにまた暖かくなり、業者を頼んでもなかなか来てくれなくて、やがて夏になってすっかり忘れ、1年が過ぎてしまう。家の構造もあまり空気が完全に遮断できるようになっていなくて、網戸だけの部屋もあったりして、普段は爽やかな海風が吹き込んできて素敵なのですが、突然寒くなると家の中にいるのに「寒い~!」と叫ぶことになります。
服の準備もできていません。ダウンジャケットとかカシミアのセーターを、突然寒くなって出そうと思ってもクローゼットの奥深くにしまってあってなかなか見つからなかったりして、しかたなく薄着で出かけるので慣れない寒風にさらされてまた「寒い~!!」と叫ぶことになります。
一方、冬は厳寒となる中西部に住んでいたころは・・・
10月にもなると「また寒い冬が来るぞ~~」と心の準備を始めるので、11月になって初雪が降ってもそれほどショックを受けない。11月にもなるとこまめな気温チェックを始めて、職場でも近所でも「今週の水曜日からぐっと寒くなるよ」と情報交換をするのでパニックにならない。
冬になるとヒーターは24時間つけたまま。たとえば一時帰国するので冬に1ヶ月家を空ける、という場合もヒーターをつけたままにしておく。そうしないと水道管が凍って爆発するかもしれない。ヒーターの故障は生命危機に関わるので、修理もすぐ来てくれる。家も職場もセントラル・ヒーティングで快適に調整されているので、外が厳寒でもとにかく屋内に入れば常に快適!LAのように家の中なのに寒いというのはありえない。
服については、足まで覆うダウンジャケット必須。雪が降ってくるのでフードも必須。朝、車に乗り込むとステアリングが氷のように冷えていて素手でつかめないので、手袋も絶対必要。だから突然寒くなって上着がない!なんて事態はありえない。
ちなみに外に出るのが危険なくらい寒くなるため、東京のように「ふきっさらしのホームで電車を待つ」とか「駅から家まで寒い中を歩く」という状況もありえません。そういう意味では東京よりも極寒のアメリカ中西部のほうが、実際に「寒い~!」と叫ぶ頻度は低いのです。屋内は常にセントラルヒーティング完備なため、日本のババシャツとかヒートテック下着のようなものも不要だったりします。
というわけで、LAではいろいろ準備不足のためにたとえ20度以下でも「I’m freezing!」と言うくらい寒くなるというわけです。
ま、その後また気温があがり、今日は摂氏27度、今朝は子供も半そでで元気に学校に出かけましたけどね!(あ、寒い地域のほうから石が飛んできそう~)