“I Have Nothing To Lose.”
先日、日常生活で使うイディオムをいくつか紹介しましたが、今回もよく使われるフレーズにまつわるストーリーを紹介します。
“I have nothing to lose.”はよく使われるフレーズで、そのまま、「失うものは何もない。」という 意味です。
たとえば、ある「転機」が目の前に存在しているとします。
この転機をつかんでみようと思ったとき、共存する「失敗するリスク」に躊躇するかもしれません。または、本当にこの転機をつかんで、事態が好転するかどうか、二の足を踏んでしまうかもしれません。
しかし、もし良くない方向に向かったとしても、それを気にせず、失うものは何もないんだから・・・という覚悟ができた時、”I have nothing to lose.”と言います。
最近これを耳にしたのは、ホストファミリー時代に出会ったドイツ人の友人サンドラが、先週、ワシントンDCから休暇を取って遊びに来ていたときのことです。
彼女はドイツで、銀行や金融機関で課長クラスまで登りつめた、実力のある40代前半の女性。10年以上前から、休暇のたびには何度もサンディエゴを訪れていたのですが、彼女のお母さんが3年前に亡くなったことをきっかけに、ずっとしたいと思っていたアメリカ移住を決めました。
しかし、彼女が直面したのはビザの問題。
アメ10のブロガーたちも多く記事にしている「ビザ」の問題は、私たち外国人にとっては切っても切り離せる問題ではありません。そしてそれをよく知っている企業が、ビザを理由に外国人労働者をうまく利用していることも事実。
彼女が就職した先も、そのような企業でした。学生にはならない、結婚もしないサンドラが下した決断は、ある企業で「インターン」として雇われることでした。
インターンとして働いた半年後、会社の重役たちに認められたサンドラは、H-1ビザを支給してもらうことに成功。そして同時に、南カリフォルニアから、開設したてのヴァージニアオフィスの責任者として赴任することになりました。
知人も誰もいない地で彼女を待っていたのは、電話もインターネットもつながらない、家具もないオフィス。まずはオフィスのセットアップから始めました。
しかし、仕事をしにくい上司と、一日15時間の労働、それに見合わない給料に彼女は嫌気がさし、転職を考えることになりました。
今回のサンディエゴへの休暇で、彼女はアメリカでの仕事探しと転職について、多くの友人たちからのアドバイスを受け、転職という道に少し光がさしてきたようでした。しかし、自分でかけているリミット(移転地や仕事探しの手段、ビザ更新の手続きなど)のおかげで、まだまだそのチャンスは最大に達していません。
そこで、私たちの共通の友人がサンドラに言いました。
“You have nothing to lose.”
「あなたは失うものは何もないのよ。」
だから、本当に手に入れたいものがあるなら、全てを注ぎ込みなさい、と。
とても厳しく聞こえるけれど、アメリカ人・外国人に関わらず、これがアメリカで生きていくことの根底だと私は思いました。そして、この転職は、サンドラにとっての試練であるとも思いました。
レジュメを添削してもらい、仕事のありそうな知人に声をかけてもらい、仕事探しサイトの使い方を教わったとしても、実際に行動を起こし、決断するのは彼女次第なのです。
そしてそれが実現できなければ、母国ドイツに戻る、または現状の過酷な労働を続けるという、シビアな現実しか彼女には残っていません。
LAの日系人起業家ネットワーク「一旗会」のウェブサイトで見つけた、私の好きな言葉を紹介します。
アメリカは強いもの、頭の切れるもの、度胸のあるもの、金があるもの、我武者羅に頑張りの効く人間だけがのし上がっていけるシビアでエキサイティングな世界です。
この世界を楽しめるかどうかは、あなた次第。
“I have nothing to lose.”と思えるかどうかも、あなた次第です。
がんばれ、サンドラ。
がんばれ、日本人。