アメリカの食品規制事情:トランス脂肪酸
アメ10読者の皆さんこんにちは、KAZでございます。
今夜、アメリカはオスカー賞の受賞で盛り上がっております。
さて、前回書いた記事で、食品添加物に関する内容に思いのほか興味を持って頂いたので、今回はトランス脂肪酸について考えてみたいと思います。
トランス脂肪酸、英語表記では「Trans fat」ですが、たまにレストランのメニューボードなどに「No Trans fat」って書かれていますね。「うちの料理にはトランス脂肪酸を使っていませんよ」というサインです。
ところで、トランス脂肪酸はなぜ体に悪いのでしょう?
まずは、「トランス」という言葉について。
脂肪酸には「飽和脂肪酸(Saturated fat)」と「不飽和脂肪酸(Unsaturated fat)」があります。
魚油に多く含まれるDHAやEPAなどは不飽和脂肪酸に分類され、融点は低いです。(魚は温度の低い水中で生活しているため)
また、魚油には血液をさらさらにしたり、また記憶力の向上に効果があるとされています。
一方、飽和脂肪酸はバターや牛ミンチなどに多く含まれ、不飽和脂肪酸より融点が高いです。すなわち、血管に詰まりやすい。
不飽和脂肪酸はさらに二重結合の様式によってシス型とトランス型に分類されます。
トランス脂肪酸をとりすぎると、「悪玉コレステロール」といわれているLDLコレステロール(低比重リポ蛋白質:肝臓からコレステロールをからだの隅々へ運ぶはたらきがある)が増える事が分かっています。
さらにトランス脂肪酸は、「善玉コレステロール」といわれているHDLコレステロール(高比重リポ蛋白質:血管壁に沈着したコレステロールを肝臓に持ち帰るはたらきがある)が減らす事が分かっています。
そのため、トランス脂肪酸は血管にコレステロールを溜めて詰まらせやすくする働きがあるので、トランス脂肪酸の摂りすぎは動脈硬化や心筋梗塞のリスクを上げるとされています。
アメリカでは2006年以降、すべての加工食品にトランス脂肪酸の含有量を表記することFDAによってが義務づけられています。
また、スターバックスでは2007年以降、商品に一切トランス脂肪酸を使っておらず、KFCも代替品に切り替える方向に向かっているようです。
マクドナルドはいまだにフレンチフライのオイルにトランス脂肪酸を使用しています。
ニューヨーク州では2006年12月にトランス脂肪酸を市内のレストランやファストフード店で使うことを禁止することを決めています。
実はこのトランス脂肪酸、自然界には極微量しか存在せず、食品中に含まれるのは人工合成物として添加されたものです。
トランス脂肪酸は、サラダオイル(vegitable oil)に水素を添加して作られており、酸化しにくい、ポテトがカラッと揚がる、ビスケットやチョコレートの舌触りがよい、などの点から使われています。
しかし、トランス脂肪酸は本来液状であるサラダオイルの化学組成を変えてむりやり固形にしたモノなので、その化学的性質から「食べるプラスチック」とも呼ばれています。 また日本ではトランス脂肪酸はショートニングとも呼ばれており、お菓子の成分表示をご覧になれば分かりますが、クッキーやチョコレートにたっぷり含まれています。ショートニングはチョコレートの「口溶け」を良くする効果があります。
さらにマーガリン!!
マーガリンは植物油からできているからバターよりも健康的だ!!と、思っていた方いませんか?
実は、マーガリンはトランス脂肪酸が主原料です。
アメリカでマーガリンって、目にしませんよね?
日本ではまだトランス脂肪酸に関する規制が全くありません。
その理由は、日本人が食べるトランス脂肪酸の量(食用加工油脂の国内の生産量から推計)が、WHOが定めた1日摂取許容量より低いからだそうです。
しかしこれはあくまでも平均値であり、個人の食生活嗜好によってだいぶ変わってきますよね。
こんな写真を見てしまうと、日本もきちんと食品の安全性について消費者にオープンにするべきだと思ってしまいます。
こんにちは!いつも拝読させて頂いています。
トランス脂肪酸、とても気になって、もっと調べたいと思っていたところ、とても明快にまとめて下さり、感謝です。 もっと日本も、全面撤廃していかないと、やば~いです。
FBでシェアさせて頂きますね。 有難うゴザイマス^^
いつもながらDr. Kazの記事はためになります~。
質問なんですが、Unsaturated fatの、Polyunsaturated fatとMonounsaturated fatってどうちがうんでしょう?オイルの表示見たら、わざわざ分けて書いてあるから、これも消費者が知っておいたほうが良い情報なのかな、と。
カリフォルニア州もレストランはもちろん、パン屋のパンなどもトランス脂肪酸は使用禁止になっているので、そういう意味では安心して外食できますね。だからって安心して食べすぎちゃぁダメでしょうが。
Maki-Kさん
まず言葉の定義から説明しますと、
Polyunsaturatedの”poly”とは、「たくさん」という意味です。
Monounsaturatedの”mono”とは、「1つ」という意味です。
なので、Polyunsaturatedとは、「たくさんの不飽和」。
Monounsaturatedとは、「1つだけ不飽和」。
二重結合を持つモノを不飽和脂肪酸、二重結合を持たないモノを飽和脂肪酸と言います。
なので、化学構造式の中にたくさん二重結合があるものを、
“Polyunsaturated fat”(多価不飽和脂肪酸)といいます。
二重結合がいっこしかないものは、”Monounsaturated fat”(ー価不飽和脂肪酸)といいます。
Wikipediaで不飽和脂肪酸を検索すると「5. 脂肪酸分子種」のセクションにあるように、
http://ja.wikipedia.org/wiki/不飽和脂肪酸
脂肪酸にも鎖の長さ(炭素数の数)と、二重結合の数によっていろんな種類の脂肪酸があることがわかります。
ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸、テトラ不飽和脂肪酸・・・となるにつれ、二重結合の数が多くなっていき、これらを含めて多価不飽和脂肪酸と称します。
脂肪酸の二重結合は「酸化される」性質があるので、二重結合の数が多いほど酸化されやすくなります。
酸化された油(古くなった油)をたくさん摂取すると、体内で活性酸素(老化を引き起こす物質)を生じたり、またガンや動脈硬化を起こしやすくなるといわれています。
アタマにいいとされているDHAやEPAですが、二重結合が5−6個もあるので、それだけ酸化されやすいことになります。
ですので、体にいいからといってあまり摂りすぎは良くないんですね。
これまで脂肪酸の健康への影響はたくさん議論されていますが、現在のところ、結局は、「様々な脂肪酸をバランス良く摂取する」(トランス脂肪酸は除く!!)のがよいという事に落ち着いているようです。
ちなみに、厚生労働省は
飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸 = 3:4:3
に近づくように採る事を推奨しています。
毎日の食事も、肉と魚を交互に食べるのがいいみたいですよ。
また分からないことがあったらなんでも聞いて下さい。
ほうほうほうほう。
すごーくよくわかりました。油って奥が深い。
厚生労働省が、飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸 = 3:4:3
を推奨しているってことは、飽和脂肪酸をあまり目の敵にしなくて良いってことですかねぇ。昨日バターを摂り過ぎたから、ちょっとほっ。しかし、魚が日本ほど簡単に手に入らないアメリカで、多価不飽和脂肪酸を摂るのは、なかなか難しいですね。
油の種類に気を使うこともさることながら、油は大瓶じゃなくて小瓶で買って、酸化するまえにさっさと使い切っちゃわないとだめですね。
ありがとうございますー。
Maki-Kさん
脂は空気酸化ではそれほどはやく劣化しないので、そこまで気を遣わなくても大丈夫ですよ。
ただ、揚げ物の油を何回も使い回したり、高温で調理したりするとすぐに酸化されます(油が茶色くなります)。
ボクもバランスの良い食事は難しいので、不飽和脂肪酸のサプリメントを飲んでいますよ。
トランス、シスの区別は僕の有機化学の知識で十分に解っています。
ですが、飽和-、不飽和-脂肪酸とトランスファット、シスファットの関連を説明していませんよね。
ココナッツオイルは飽和脂肪酸です。
ベニバナオイルは不飽和脂肪酸です。
しかしいずれもトタンス脂肪酸ではありません。
危険なのは不飽和脂肪酸に水素添加したトランス型炭素二重結合を持つ、不飽和脂肪酸をトランスファットと呼びます。
高3じろ