アメリカの「牛角」

アメリカに進出している日本のレストランチェーンはたくさんありますが、私が住むLAはとくに、日本企業のアメリカ進出第一号店の場所に選ばれることが多く、日系企業やレストランが集中する地域です。

LAにある日本レストランチェーンでぱっと思いつくのは、

  • 吉野家
  • Coco一番カレー
  • 牛角
  • イタリアントマト
  • そじ坊
  • ビアードパパ
  • 山頭火ラーメン

その他、大きなチェーンではなくても、東京とLAで展開している居酒屋さんやラーメン屋さんなどをいれれば、無数の日本レストランチェーンが存在します。

今日はその中のひとつ、「牛角」のレポートです。

お店の上には、日本と同じロゴの「牛角」。でも英語で「Japanese BBQ dining」と説明がついています。

アメリカで焼肉といえば、Korean BBQのほうが有名だし、日本にある焼き肉屋さんも韓国レストランという位置づけではあるのですが、アメリカにいて恋しくなるのは、純粋な日本食というより、「日本で食べるイタリアン」とか「日本で食べる中華」だったりするので、この「日本の焼肉」というところが、私のような在米日本人にとっては大きなポイントだったりします。

私は夫と一緒に入ったので、出迎えてくれた人が英語で対応してくれましたが、日本人らしいグループが到着したときは元気な「いらっしゃいませ!!」という声が聞こえました。

オーダーを取りに来てくれた人は、私と夫がちょうど日本語で会話していたので、笑顔で「こんばんは」と言ってくれましたが、となりのアメリカ人のみのグループには流暢な英語で応対していました。

このように、アメリカの日系レストランに来ると、「一歩足を踏み入れればそこは日本」という雰囲気を大切にして、最初から日本語で対応してくれるところが多いです。電話で問い合わせるといきなり「もしもし~」と日本語で対応してくれるお店もよくあります。これって、アメリカ人が電話したらとまどってしまうんじゃないかと思うのですが、英語で電話するのは緊張してしまう・・・という日本人であればとても安心することでしょう。

一方、日本食レストランではあるんだけど、あくまでアメリカ人がアメリカ人のために作ったおしゃれなフュージョン系のお店になると、店員で日本語をしゃべれる人はほとんどいなくて、でもエキゾチックな雰囲気を演出するためなのか、英語のアクセントのある声で「イラッシャイマセー」と叫んでいる人がいたりします。

おもしろかったのは、ビバリーヒルズにある「権八」という高級日本食レストラン。お店に入ると、案内役の人が「ハイドーゾ!!」と声をかけ、店員が一斉に「イラッシャイマセー!!」と絶叫。

これはもしかして、日本のレストランをいろいろと見学して取り入れたやり方なのかもしれません。が、本場日本とは微妙に(かなり)違います。「ハイドーゾ!」はロボットのように一本調子、「イラッシャイマセー!」は絶叫すぎて怖い。それに日本では絶妙な間で次々とあちこちから声がかかるのがいい雰囲気なのであって、そんな一斉に声をそろえて言わないし。

そこでふと思い出したのが、昔、広尾の「イル・ブッテロ」というイタリアンレストランで、入店するとお店の人たちが一斉に「ボナセーラ!!(こんばんは)」と声をかけてくれたことです。当時は「素敵!本場イタリアみたいだわ」と、実際にイタリアに行ったことがなくても思っていましたが、もしかしたらイタリア人が見るとすごく変だったのかもしれません(本場そのものだったのかもしれないけど)。

きっとアメリカでも当時の私のように、日本に行ったことはなくても、「イラッシャイマセ!!」の絶叫に「おおー、日本ぽい」と喜んでいる人たちがいるのかもしれません。

さて話は牛角にもどり、私たちは「ゲイシャ・コース」というコースを頼むことにしました。いくつかの前菜と3種類の焼肉、エビ、ビビンバ、デザートというごく普通のコースで、これの何がどう「ゲイシャ」なのか、まったく不明です。

本場日本の「牛角」ウェブサイトを見てみますと、「宴会コース」など、ごく常識的なコース名しかなく、「ゲイシャ・コース」なんてありません。

アメリカではこのように、日本っぽい雰囲気を出すためのキーワードとして、「ゲイシャ」「サムライ」「ニンジャ」などがよく使われます。カクテルにはよく「カミカゼ」なんて名前がつきます。みんな意味を知っているんでしょうか?なんとなーくひびきがかっこいいと感じるのかもしれません。

さて、ビールも日本のサッポロビール、でもお味噌汁がアメリカンスタイルで出てきました!!

西洋の食事では、スープといえばコース料理の一番最初に出される前菜という位置づけですよね。

なので、アメリカの日本食レストランでは、このようにいきなり味噌汁が最初にぽつんと出てくることが多いです。

その上、スプーンつきです!

おわんからスープをすする、というのがマナー違反のようで受け付けないのでしょうか。日本人であれば、器用にお箸を使って具とスープを一緒にいただくところですが、あれは確かにちょっと一般的なアメリカ人には高度な技かもしれません。

実際スプーンでお味噌汁をいただいてみると、上品に飲めて具も食べやすくて簡単でした。

焼肉のたれは、普通のと、ポン酢、みそがあり、普通においしいです。すごくおいしい!と感動するほどではないですが、日本と同じだ、という安心感はあります。

ちなみにコースの中に「ビビンバライス」が入っていて、熱い石のボウルにぱちぱちと音をたててビビンバライスがやってきました。これはとってもおいしかったのですが、これとは別にお茶碗にご飯がつくので、ちょっとお米多すぎという感じでした。ご飯は白米か玄米を選べるのですが、これはとてもLAっぽいです。日本の牛角ウェブサイトを見ると玄米のオプションはなさそうですが、実際はどうなのでしょうか。

最後にデザートです。

私たちが頼んだのは「S’more」(スモア、という感じに発音)という、マシュマロを焼いて、チョコレートと一緒にグラハムクラッカーにはさんで食べる、というデザート。

これは、子供たちがよくキャンプのときとか、暖炉の火などで、マシュマロを棒の先に刺して焼いて楽しむデザートです。

子供たちにとっては夢のようにおいしいデザートで、「Some more!!」(もっと食べたい!)と、いくつも食べてしまうから「S’more」という名前なのです。

これを焼肉用のグリルをとりはずし、下の炭を使ってマシュマロを焼いて食べる、というのは、なかなかアメリカならでは、のいいアイディアだと思いました。

マシュマロを炭火の上にかざし、すこし茶色くなって溶けてきたら・・・

こうやってチョコレートと一緒にクラッカーにはさみます。チョコレートもマシュマロの熱でじわーっと溶けて・・・Yum!!

確認してみると日本の牛角メニューに「S’more」はなし。日本らしいおいしそうなデザートはうらやましいですが、S’moreというのは作る過程もすごく楽しいので、これだけはアメリカから逆輸入してもいいんじゃないか?と思いました。

全体的にはアメリカのGyukakuは日本の牛角と基本のお肉以外のメニューがかなり違い、アメリカ向けにアレンジしてあるイメージでした。

日本人としては、「あー、日本とまったく同じだ!」と思えると嬉しいのですが、アメリカで展開する限り、アメリカ市場に合わせてイメージや方向性を変えるのは当然のことかもしれないですね。

他のおもしろい日本のお店やレストランを訪ねたらまたレポートします。 

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2 comments on “アメリカの「牛角」”

  1. 焼肉屋でSmore、すばらしいアイデアだ!
    Smoreの語源も初めて知りました。なるほどね~。

    アメリカ人が言ういらっしゃいませとか、ハイどうぞがロボット風とか・・・
    オースティンパワーズのゴールドメンバーを思い出しました。

  2. Makiさん、ね、素晴らしいアイディアだよね。日本にはないSmoreを広めるチャンス。
    でも日本のデザートメニューって甘さ控えめでヘルシーなものが多いから、とにかくめっちゃ甘い!というS’moreは日本人のテイストには合わないかもしれないね。

    オースティンパワーズ、確かに・・・柔道にチョップなんてないのに「ジュードーチョップ!」と言って誰にでも勝っちゃうんだよね。

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