新リーダーたちの試練

こんにちは、Erinaです。

 

ここアメリカで仕事をしていると、「厳しいなぁ・・・」と思えることが多々あります。

その一つがコレ。

「昇進直後の『問題』をどうやって対処するか」

今日は、新リーダーたちの試練を、最近のニュースを2つ例にとって見てみたいと思います。

 

先日、MasaさんがGMの大規模リコールについての記事を書いてくれました。

ここアメリカは、ご存知のように超がつくほどの車社会。一家に一台というより、大人一人に一台というような社会です。

この記事でも書いたように、昨年、GMのCEOにメアリー・バーラさんという女性が就任しました。アメリカの自動車産業で初の女性CEO誕生に、「時代が変わっている」と感じたアメリカ人は少なくないはずです。

それに続いた、この大規模リコール。

私は、バーラ新CEOが、この会社の危機をどうやって乗り越えていくのか、とても興味津々なところです。

GMリコール
From thetruthaboutcars.com

 

今回の大規模リコールは、イグニッションに問題があり、エアバッグが適切に機能しないというもの。(だったはず。)

これが原因で起きた死亡事故は、かなり前から社内で報告されていたそうなのです。しかしGMは、これを調査することはなく、今回まで明るみに出ることはありませんでした。

 

私が思うに、バーラ新CEOが就任したのも、この大規模リコールの発表があったのも、偶然ではないと思います。

 

こう書いてしまうと、「GMってありえない!」と思ってしまう人もいるかもしれませんが、誤解しないでくださいね。

会社というのは、あらゆる人事やニュースを、いつ、どうやって、どのタイミングで行い、発表するか、というのも全て計算されています。これらはBoard Member(役員)たちの決断です。

これは、株式会社というものは株主たちのものであり(社員じゃないですよ)、株主の利益を失くさないということが、経営においての絶対条件なのです。

なので、こういう流れはGMに限ったことではなく、企業がどんな規模でも起こりうること。「昇進して最初の仕事が、部下(今までの同僚)のレイオフ」なんていうこともよく聞きます。ね、シビアでしょ。

 

ちょっと話がそれてしまいましたが、元に戻って。

そんなわけで、バーラ新CEOが就任し、初の大仕事がこの大規模リコールになりそうです。

 

 

ところ変わって、ここサンディエゴ。

先月、San Diego Police Department(サンディエゴ市警)のChief(警察長)に、ここでも女性が選ばれました。

Shelley Zimmerman(シェリー・ジマーマン)新警察長は、SDPDに31年勤務したベテラン。彼女も警察という機関のハシゴを登っていった、たたき上げの人です。

 

From sdpolicemuseum.com
From sdpolicemuseum.com

 

実はこの人事に先立って、ここサンディエゴでは、ある事件がいくつか起こっていました。

それは、オフィサー(警察官)たちの不祥事。特に女性市民に対する、男性オフィサーたちの性的な不祥事でした。

たとえば、車でpull overされて、「こういう理由であなたをストップしました。だけど、胸を触らせてくれたらなかったことにしてあげる。」という不祥事を起こしたオフィサー。Pat down(実際に触って身体検査すること)の際に、女性の体を不適切に触ったオフィサーなど、ここ数年の間にかなりの件数が挙がったのです。

ちょうど、前市長のセクハラ問題で熱くなっていたサンディエゴですから、市民の注目がSDPDにいっせいに集まりました。

 

そして、先月。当時のチーフだった、William Lansdowneが突然のリタイヤ(退職)表明。

「退職はオフィサーたちのセクハラが原因か?」と噂になりましたが、Lansdowne側はあくまで「個人的な理由」とのことでした。日本なら、「責任を持って辞めます」となるところですが、全く逆の態度です。

そこで新チーフとして選ばれたのが、シェリー・ジマーマンでした。

セクハラ問題の後にSDPD初の女性チーフを持ってくるとは、政治的なニオイがぷんぷんしますが、まぁモチベーションがなんであれ、女性リーダーという現実をどんどん利用し、踏み台にして頑張ってもらいたいと私は思っています。

 

 

「物事がうまく進んでいるときは、誰もが良いヤツなんだ。悪くなったときに、本性がわかる。」 

なんて、どこかで聞いたんですが、これは確かに本当ですね。その人材の真の価値は、問題が起こったときにわかる、とアメリカ企業は考えます。

アメリカ人の大好きな”Problem Solving”(問題解決)の力です。

「問題は起こってはいけない」というのは日本的な考え方ですが、そうではなく、「問題が起こったときにどう対処するか」というのがアメリカ人の見方です。

 

「完璧な人間はいない。どう頑張ったとしても問題は起こるものだから、しかたない。」

と一見、肩の力が抜けて見えますが、こういう「のびしろ」というか、「スペース」を与えることで、新しい可能性が生まれます。アメリカ人はここが強い。

そして実際に問題が起こってしまった場合は、状況に適した最善策を作り上げ、実行に移す。Execution(実行力・執行力)と言いますが、これが試されるわけです。仕事ができる人はここがすごいんですね。

 

そんなわけで、これからのGMに期待したいのは・・・

  • 誠意を持って問題を認めること(マネジメントがメイン)
  • 短期的な利益が減ったとしても、問題となっているラインの対処をすること(マネジメント&エンジニアリング部門がメイン)
  • 消費者の信頼復活(マーケティング部門がメイン)
  • 新しい安全なモデル(エンジニアリング部門がメイン)
  • かつ、長期的な目で見た利益(会計+経理部門がメイン)

う~ん、私なんかが考えただけでも課題はこれだけありますから、GMのみなさんには頑張って欲しいです。先週リリースされたバーラCEOのスピーチはこちら。短いので興味のある方はどうぞ。

 

SDPDも同様に、

  • 誠意を持って問題を認める
  • 問題のあるオフィサーの処分をする
  • 市民の信頼復活
  • 長期の健全な警察運営

などでしょうか。

 

口で言うのは簡単ですが、行動で示すのは難しいですから、これがどう実現されていくのか見ものです。

 

 

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