アメリカ企業で出世街道を10倍うまく歩く方法ーはじめの一歩:就活で転ぶな。
日本の社長は「企業は人なり」とよく言います。超人気テレビドラマ『半沢直樹』での中野渡頭取の言葉がまだ鮮明に頭に残っている人もいるでしょう。アメリカのCEOも皆必ず”People are the most important asset. “と言います。世界どの会社も最高の人材を求め、自社の社員は世界で一番だと言い切ります。”We hire the best talent in the world.”や”Our associates are the best in the world.”等の事は、CEOなら毎日一度は言うし、年次報告書にも必ず出てくる常套句です。CEOばかりでなく、私のような中間管理職もよく言い、人の上に立つ人は社内のランクにかかわらず必ず口にする事です。
一方で、大量レイオフはいつも、「人は我が社で最も重要な資産です」と言った次の日に行われます。当然ですよね。「企業は人なり」と毎日言うのですから。ここで、従業員は「えっ。人は一番大切なんじゃなかったの?」となるわけです。
そもそもthe bestやthe mostはごく希少な存在に対して使うもので、皆がthe bestやthe mostでいるということは、皆が平均であるということです。従って、殆どの会社は平均的な従業員で満足していて、平均的な人を雇っているということです。言う事と実態に極度のギャップがあるのが会社の人事です。
社長への道のはじめの一歩は就活です。そこで、今回はアメリカ企業への就活を見てみましょう。景気は上向きになったと言っても、就活はまだまだ苦しいと思いますが。毎日、monster.comで、求人を探し、レジュメとカバーレターを送る毎日でしょう。今までに、もう何百ものポジションに応募してもまだ仕事が見つからないという人がいるのではないでしょうか。
あなたが提出したレジュメとカバーレターは提出された後でどうなるのでしょうか。Submitのボタンを押すと、ファイルは会社の採用システムに登録され、人事部の採用担当の社員にあなたが応募したことが報告されます。ポジションによっては、1000通以上の応募者が来ます。100以上はザラです。大企業はいつも100人以上の欠員を抱えているので、会社全体では1日に10,000を越す応募者が来る事もあります。この中から逸材を探すのが採用の目標です。
一時期、レジュメとカバーレターを自動解析するのが流行りました。レジュメやカバーレターを文脈解析ソフトにかけ、応募要項の内容とのマッチ度を数値で出力します。マッチ度に境界線を決め、例えば、マッチ度が85%以上の応募者は電話インタビューする様な感じで使われました。最近は、この自動化をやめてる会社の方が多いはずです。ソフトの性能が上がっても、自動化の選定と人手による選定との違いが大きいので、自動化による選定は逸材を探すのには最適でないと思われているようです。今は、すべてのレジュメに人が目を通すのが一般的だと思います。
人手による選定はどの様に行われるのでしょうか。採用の最終決定はHiring Managerになりますが、予備選考は人事の採用担当者との連携プレーになります。3つの方針が一般的でしょう。一つは、人事の人に10人程に絞り込んでもらい、Hiring Managerが電話インタビューをする方針、二つ目は、人事の人に明らかに採用条件に合わない人を抜き落としてもらい、絞り込みをHiring Manager自らがやる方針、三つ目は、Hiring Managerが全てのレジュメをもらい、抜き落としから絞り込みまで全部やる方針です。いずれの場合も大量のレジュメを処理しなければならないので、一つのレジュメにかける時間は長くて20秒。経験や学歴の条件に合わないものは数秒でNG。何か光るものがあれば即座にGood、殆どはMaybeに分類されます。Goodの数が絞り込みの目標数より多い場合は、Goodのレジュメの細部までしっかりと読み、カバーレターも読み、振り落としていきます。この過程は選考者次第です。個人の評価基準次第で、受かる人は受かり、落ちる人は落ちます。Goodの数が絞り込みの基準に満たない場合は、Maybeのパイルを再評価する事になります。殆どが最初の仕分けででMaybeに入るので、何通ものレジュメを再度見る事になります。一つ一つをじっくりと見る時間は有りません。さっと目を通し、光るものがあれば残され、残りの殆どはMaybeのパイルに戻ることになります。この様な作業を繰り返し絞り込みを終えます。
この第一関門を超える鍵はレジュメの内容です。採用条件に満たないものは、殆ど自動的に振り落とされるので、もし、学位や勤続年数の条件に合わない場合は応募しないのが正解です。レジュメは、さっと目を通して、相手にあなたの事を分かってもらうのがコツです。経験を全て並べようとした長いレジュメを目にしますが、これ実は読む人には何も目にとまりません。数秒で、あなたの価値を分かって貰うレジュメを目標に作った方が良いと思います。レジュメの目的は、仕事を得ることでは有りません。相手の目を引いて、電話インタビューにたどり着くことです。全てを語るより、あなたの事をもう少し知りたいと思わせる事です。前職がある人は、経験を全て列記するのでなく、前職で最も大きな功績のトップ3のみを記載した方が良いと思います。
日本人はレジュメの英語の正確さを気にしますが、あまり神経質になる必要は無いと思います。アメリカ企業では外国人は当たり前です。選ぶ人が英語の文法があやふやな事がままあります(自分の事か。。。)。アメリカの企業では、Broken Englishが標準語と言うのは常識です。セールスやカスタマーセンターの様な顧客の最前線に立つ職以外、英語の不完璧さはあまり問題ではないと思います。英文法が気になるような場合は、レジュメには必要のない複雑な文章を載せようとしていると思った方が良いでしょう。とにかく簡潔で、最も重要な事だけを載せた方が良いと思います。
カバーレターが決め手となるのは、絞り込みのボーダーラインになった時だけです。カバーレターにエネルギーを消耗するぐらいなら、レジュメの質を上げる方が良いと思います。
レジュメでの予備選考は逸材を見つけるのに本当に有効なのでしょうか。実は正解は実証されており、レジュメの評価と就職後の仕事の評価との相関は全く無いことが分かっています。つまり、レジュメの絞り込みの時に逸材を振り落としている確率が高いと言うことです。これは、MBAでは、必ず学ぶことなのですが、残念ながら他に良い方法が確立されていないので、殆どの会社が今まで通りに、逸材を予備選考で逃しているのが現状です。GoogleやSASは全く違った採用方法を用いていますが、これはまだ極めて少数派です。悲しい事実ですね。
さらに悲しい事実は会社が採用にかける時間です。人材は会社の成功に最も重要と言いながら、実は人選に殆どの時間をかけていない。レジュメの選定はトータルで2時間ぐらいで終わってしまいます。実際に行われている事は、人材を使い捨て出来るコモディティーと見ていると言われると否定出来なくなります。アメリカは理由も無く即座に解雇が出来るので、間違った人選をする事のコストが他国よりも遥かに低いのです。これが、この様な一見非効率な採用法が行われて来た理由です。実はこの非効率なシステムが、開かれたCEOの道には大切な事は後で詳しく述べます。
さて、運良く電話インタビューにたどり着いた方、第一関門突破です。残念ながら次も難関です。電話インタビューの目的は何でしょう。レジュメの内容について詳細の確認と、あなたと直接話す事によってあなたの人柄を少し調べる事です。電話インタビューは殆どの場合30分のインタビューです。電話インタビューで、最終面接に呼ぶ2,3人を決めることになります。絞り込みの人数によりますがこの時点での競争率は5ー10倍です。
私が就活をしていた時、電話インタビューの一番のフラストレーションは言いたい事が殆ど言えなかったということです。採用側になった今、電話インタビューの一番のフラストレーションは、聞きたい事が殆ど聞けなかったということです。電話インタビュー成功の鍵はタイムマネージメントです。一つの話題で3分を上限と考えて下さい。電話インタビューで最初の質問に15分かけて答える人がよくいますが、最初の質問が採用決定に最も重要な質問で、15分かけて答える価値がある保証は全くありません。一つに長くより、沢山の質問に簡潔に答える方が効率的です。エレベータースピーチのマスター達が電話インタビューをくぐり抜けていきます。
もう一つの鍵は、最も重要な職務は何かを早めに知ることです。求人の広告には、沢山の職務の内容が列挙されていますが、実はその中で本当に大切なのはほんの数項目です。それを早く知れば知るほど自分の答えを、その項目に合わせるように調整出来ます。電話インタビュー冒頭に質問があるか聞いてくるインタビュアーには食いつくしかありません。但しここには罠があります。インタビュアーが職務の詳細を説明する時間分だけ自分が話す時間が減ります。インタビュアーの中には、長々と話す人がいます。従って、「職務についてのもう少し詳しく教えて下さい。」と漠然とした質問でなく、「職務内容がリストされていますが、その中で一番大切な2項目は何ですか。」と聞きましょう。その後は、質問に簡潔に答える時に、いかに自分の経験や能力をその2項目に関連させるかです。もしインタビュアーが冒頭で質問があるか聞いてこない場合は、最初の答えの最後に、上記の2項目についての質問を付け加える様に、話を持って行くことです。
長々と話すインタビュアーには困り者です。こんな場合は、インタビュアーの息つきの間に、「色々詳しく話して頂いて有難うございます。私はこの仕事には最適であると理解して頂きたいのですが、何か私についての質問はありますか。」とインタビュアーの話す時間を切りましょう。インタビュアーの話を折って申し訳ないと思うかも知れませんが、そんなことを言って、自分の宣伝が出来ないと最終面接に残れません。とにかく全体の流れの主導権をあなたが握ることです。日本人は相手の気を使って、こんな事をしては面接して頂いている人に失礼ではと受け身になりがちですが、ここは日本人の美徳を忘れる時です。あなたの競争相手は強烈な自分の売り込みに来ます。あなたが面接をして頂いているのではなく、あなたが働いてやってもいいか調べているという意気込みで良いと思います。この段階をくぐり抜けるアメリカ人は、とにかく自分の売り込みが上手い人ばかりです。
十数年前に新卒との電話インタビューの時、応募者にいきなり、「時間を有効に使うために、質問事項がいくつあるか最初に教えて下さい。私も最後に2つどうしても聞きたいことがあります。このインタビューのアウトラインを最初に作りましょう。」と言われた時は、「こいつやるな。」と思いました。彼は20代半ばの若者でしたが、私の全ての質問に簡潔に答え、今までに最も充実した電話インタビューでした。彼はその後の最終面接を難なく突破し、今や若くして、次期のVP候補と言われるまでにスイスイと出世街道を登って行きました。それ以後、私は電話インタビューの時は最初に応募者にいくつ質問事項があるか告げ、時間配分を考えて答えるように言うようにしています。電話インタビューの最後には「何か質問はありますか」と聞かれるはずです。必ず何か質問するようにして下さい。職務のこと、会社の事何でも良いです。「ありません」と言う応募者が多いので、ここで質問をすると印象に残ります。
英語が苦手な日本人は特に知らない人と電話で英語を話すのが苦手です。私は今でも知らない人に電話をするほど嫌なことは有りません。従って電話インタビューは精神的にかなり負担になる人が多いでしょう。英語が上手くないことは気にしないことです。電話インタビューは、応募者のコミュニケーション能力が計られますが、英語の上手さとコミュニケーション能力は実はあまり関係ないのです。アメリカ企業には外国人は当たり前です。従って会社人は皆、なまった外国人英語を理解する能力に長けています。Broken Englishが標準語と思い、ゆっくりはっきりと簡潔に質問に答えることです。アメリカ人は止めどなくダラダラと長く話す人が多いので、要点を簡潔に明瞭に伝えれば、英語が完璧で無くてもアメリカ人に勝てる可能性はかなり高いと思います。
以上は私の経験を元に書きましたが、皆さんの経験や視点を是非教えてください。次回は最終面接について書きます。
今日もためになる記事、ありがとうございます。
こうやって振り返ってみると、「う〜ん、間違ってたなぁ・・・」と思えるところがいくつか自分であります・・・。
レジュメもまた見直してみようと思いました。
私がいつもフラストレーションを感じるのは、レジュメを提出したり、アプライしてからすぐには連絡は来ないので、複数のポジションにアプライした場合にどのポジションだったのか、すぐには思い出せないところです。
HRの人は早口だし、まくしたてられるように「どこどこの誰々です」と言われると、「あれ、どのポジションだったかな?」ととっさに具体的な質問が出てきません。
そういうときは、こちらから「どの業務が最重要ですか?」と質問すれば良いのでしょうか。
あと、仕事中にかけてこられると、アタフタしてしまいます。
Third Partyのリクルーターを使う企業に共通することってありますか?たとえば大きなHRを持たない企業とか。
先日、初めてリクルーターと対人面接をしましたが、実際のHiring Managerじゃないと思うといまいち人間的なアピールもできないし、すごく事務的なものでした。
うちの旦那が、「リクルーターと、車のセールスマンと、Mortgage Brokerは同じようなもんだ。(=調子のいいことばかり言う)」と言っているのを聞いて、自分を納得させましたが・・・。
早口に一方的に話すHRからの電話はほぼ間違いなく、委託会社からの電話でしょう。これは、コールセンターからの電話で、応募した会社が本人確認等の諸事項の詳細を得る為に委託したものと考えます。電話をしてくる人は出来高で払われる為、受け手の理解度など関係無く、必要事項を終えたらすぐに次の人としか考えてません。相手の都合を考えず電話をして来ます。この場合は、こちらから時間を指定して、ゆっくり話せる時にかけ直すように言えば良いと思います。掛け直しの時に、相手にゆっくり話して貰う様にお願いして下さい。
良い会社は、英語が母国語で無い人にも、優秀な人材がいる事を分かっており、特にHRの人は、電話をする時の心掛けが出来ています。必ず自己紹介をしっかりし、電話で話すのに都合がいいか確認します。委託会社などを使う会社は、社員はコモディティーとして見ている証拠です。この様な会社は入っても時期に嫌になってしまうと思います。
リクルーターは様々な場合が考えられます。会社によっては、HRのコスト削減の為に、採用をリクルーターに投げ出しします。この場合は、リクルーターは、職務項目のどれが重要かは分かりません。顧客のHiring Managerに聞くしかありませんが、リクルーターが壁になります。
特殊職の場合は、リクルーターに頼む事が良くあります。この場合は、リクルーターの実入りが多いので、かなり親身になってくれると思います。
引き抜き等秘密裏に採用を行う場合もリクルーターを使います。この場合も実入りが多いので、リクルーターは、かなり真剣になると思います。
多くの場合は、契約料のない、成功報酬を狙ったものです。この場合は、採用会社とリクルーターは競合相手となります。会社が直接、採用の告知を自社のウェブサイトに出すと同時に、リクルーターは顧客名を伏せて採用の告知をmonster等のサイトに出します。リクルーターを通した人が採用されたら成功報酬を貰います。会社はリクルーターを通すとコストがかかるので、直接に会社のウェブサイトに応募した人を優先するかもしれません。この場合は、リクルーターの見返りが少ない為、事務的な対応になる事が多くなると思います。
私の見解は、直接に会社のウェブサイトに応募するのが一番無難で効率が良いと思います。
ありがとうございます。
大変、参考になりました。