フレンドリーな業者たち
アメ10読者の皆さんこんにちわ、KAZです。
アメリカ人はとてもフレンドリーというのはご存知だと思いますが、たぶん、皆さんが思っている以上にフレンドリー(馴れ馴れしい)です。
ボクの体験を紹介したいと思います。
大学の研究室で働いていると、ちょくちょく業者がプロモーションにやってきます。
良く取引をしているA社のRichはいつもガムを噛みながら「ヘーイ カーズ ワサー」とやってきてきます。で、「最近何か欲しいものある?」とものすごくラフです。日本でこれをやったらまず「あいつは礼儀がないから出入り禁止だ!!」ってなりますよね。
「あーそういえば、ピペットチップが残り少なくなってたなー。」というと、カバンの中からガサゴソフライヤーを取り出して、「今キャンペーンやってて安いよ。もちろん、Buy 3 Get 1だ。ラテックスグローブもBuy 3 Get 1だから、今のうちに買っておくべきだよ。」
(Buy ○○ Get ○○ free ってアメリカではよくやる手段で、2個買えば1個は無料でついてくるやつ)
ほぼ押し売りです。日本ではまずあり得ません。(彼とは仲がいいので、お金がないから今は買えないと誤魔化したりしてるのですが)
「あーそうだよねー。今のアメリカの経済状況は最悪だよね!! オバマってさー結局・・・」
とかいってさらに話が長くなります。
ときどき、飛び込みでやってくる業者もいますが、そういう初めてやってくる訪問業者でさえいきなりフレンドリーです。
業者「こんにちわ、調子はどう?」
ボク「うん、実験はチョー忙しいけどそれ以外はOKですよ。」
業者「うーんわかるわかる。ところで、ここのラボの試薬発注の責任者ってだれ?」
ボク「ボクだけど。」
業者「あ、ちょうど良かった。あなたの名前はカァズキでいいの?」
ボク「いや、カズシ。カズでいいよ。」
業者「あ、メンゴメンゴ。ここのラボではどんな主にどんな実験をやってるの? PCRとか?」
ボク「いや、うちはほとんどタンパク専門で、ウエスタンブロッティングとか酵素アッセイだよ。」
業者「あっじゃぁメタノール大量に使うよね?」
ボク「うん、まぁね。」
業者「ちなみにいま買ってるメタノールって値段いくら?」
ボク「たしか、$○○だったと思う。」
業者「うちはこの値段だよ。全然安いでしょ? しかも今なら5本買えば1本タダだよ。」
ボク「あ、でも今ストックいっぱいあるから、今はいらない。」
業者「オーライ。このキャンペーンは○○/○○までだから。他によく使う試薬ってなに?」
ボク「えーと、エタノールとかFBS とか」
業者「オッケイ。じゃあ、見積り送ったげるからメルアド教えてよ。」
と、ものすごい強気でプロモーションしてきます。
たまに世間話などを含めて15分ぐらい喋って行く人もいます。
もちろん、クリーンベンチで無菌操作をやっていて手が離せないときは、「I’m sorry, but I’m tied up the moment.」といって、お引き取りしてもらいます。
また、ある業者はなんの挨拶もなくいきなりラボに入ってきて、ラボの棚に置いてある消耗品の在庫を勝手にチェックしはじめます。
そしてそのあと、
「B社のプラスチックシャーレ買ってるみたいだけど、うちのはこんなに安いんだ。しかも今なら5箱買えば1箱タダだよ。じゃあね。」
と、こちらに返事をする隙を与えず帰って行く業者もいます。
先日来た某有名カンパニーのC社の業者は、なんの説明もなくいきなり「今やってるウェスタンブロッテングの方法を説明してくれる?」と言ってきました。
いきなりなんやねん!? 大学の抜き打ち検査か!?と思いながらも、
「えっと、まずゲルをメンブレンにトランスファーして〜、BSAでブロッキングして〜」と細かく説明していると、
業者「ブロッキング何分してる?」
ボク「ふつうは1時間だけど、バックグラウンドの高い抗体はO/Nでやってるよ。」
業者「とても時間かかるわね。うちの機械を使えば5分よ。一次抗体は何時間おいてるの?」
ボク「モノによるけど、2時間からO/Nかな。」
業者「とても時間かかるわね。うちの機械を使えば15分よ。二次抗体は何時間おいてるの?」
ボク「ふつうに1時間。」
業者「とても時間かかるわね。うちの機械を使えば10分よ。」
といったふうに、まるで誘導尋問を受けているかのようでした。こっちは客なのに・・・
日本で働いていたときは、客と業者は完全に上下関係が成り立っていましたが、アメリカではどうやら対等関係にあるようです。
日本では業者と話しててもどうしても堅苦しい話になってしまい(業者が常に媚びているため)、あまりフランクな話に発展しませんが、こちらでは結構、友達付き合いみたいな感じで話ができます。
それとか、
業者「今度こんな新商品がでるんだけど、一回使ってみてよ。」
ボク「あー これめっちゃ欲しい。いくらすんの?」
業者「$○○○だけど、交渉次第でもっと安くなるよ。」
ボク「たっか!! いまうちはグラントないからたぶん無理だよ。」
業者「じゃあ、ボクがボスにプロモーションしてくるよ。ボスはオープンな人?」
ボク「オープンだけど、こういうfancyなものはあまり好きじゃないと思う。」
業者「fancyておい。」
といったふうに、ボクはボクなりに英会話の練習台として、業者のと会話を楽しんでいるわけです。
ところで、やはり人付き合いというのは大切なモノで、最初に登場したRichですが、ボクの友達がRichと雑談していたとき、そろそろラボを出なくちゃいけないと言うことをRich にはなしたところ、
「そういえば、Dr ○○のところでポスドク探してたぜ。」
と、教えてくれたおかげで、ボクの友達は引き続き大学に残ることができました。
たとえフランクでもしっかりとしたコミュニケーションがとれていれば、何かといいことが起こるんですね。