LA人、NYに行く

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先週末、友人の結婚式があったのでNYに4日間行ってきました。

そこで外国に行ったわけでもないのに、いろいろとカルチャーショックがありましたのでその体験を書こうと思います。

まずNYに行くたび思うことであり、多くの人が言うことですが、NYって本当にアメリカではないです。

NYはNY、世界でただひとつの場所。

たとえばオハイオ州コロンバス郊外ととNYと東京を比べたなら、アメリカと日本という違いをもってしても、コロンバス郊外よりも東京のほうがNYに近いと思います。

それくらい、アメリカ国内でも特殊な場所です。

NYにはNY独特の雰囲気があって、それは古い歴史の上に築かれたものでもあり、同時に世界の最先端でもある、とにかくダイナミックなエネルギーに満ち溢れた場所。

私の夫はNYに5年間住んでいて、当時私はNYに飛行機で2時間くらいの北東部の州に住んでいましたので、月に一度の週末をNYで過ごしました。

大学院を卒業してその北東部の州に就職が決まるまでの1ヶ月間ほど、夫の(当時はボーイフレンド)NYのアパートに住んだこともあります。

またもともと東京出身なので、アメリカ全体を見ると非常に珍しいと言える、徒歩、地下鉄、タクシーであちこち移動できる都会のNYはとても親近感が持てる場所でもありました。

でも、最後にNYを訪れたのはもう6年前。

その間、広い青空の下、パームツリーを横目にビューンとハイウェイを飛ばして移動するLA生活にすっかり慣れてしまい、あらためてNYに行ったらすっかりカルチャーギャップに驚いてしまったというわけです。

JFK空港に降り立ち、一番最初のカルチャーショックは、タクシー乗り場にすごい行列があったことです。

夫によると以前はタクシー待ちの列が空港の外にあったそうですが、今はガラス張りの部屋が作られてその中に並ぶようになっています。ガラス張りの部屋の出口のすぐ外にタクシーが乗り付けいて、順番に出口から出てタクシーに乗れるよう、空港スタッフが誘導しています。

タクシー待ちの列はあまりに長いので、そのガラス張りの部屋からはみ出して、まるでディズニーランドの人気アトラクションのように、ロープが張られた行列エリアに人がぎっしりと並んでます。

ガラスの壁越しに黄色いタクシーが並んでいるのも見えますが、足りないようで最初はかなり待たされ、そのうち無線で指示が飛んだのかタクシーのほうも大量に到着して、思ったより早く私達も行列の先頭に到達することができました。

さて、これがなぜカルチャーショックかというと、LA空港には飛行機を降りてからタクシーに乗る人なんてほとんどいないからです。

かわりにみんな、自分の車に乗るため、駐車場に向かいます。どうやって駐車場に向かうかというと、空港の駐車場はとても値段が高いので、空港周辺の駐車場業者に車をとめていて、その業者の駐車場に連れて行ってくれるシャトルバスを待ちます。

タクシーを待つ行列のかわりに、そうやってシャトルバスを待つ人々が大量に集まっています。

この人たちはLAに戻ってきた人たちですが、他の都市からLAに来た人は、レンタカーをピックアップすべくレンタカーのシャトルバスを待ちます。

そのほかの人々は、誰かがピックアップしてくれるのを待っています。

ロータリーにお迎えの車が次々にやってくるので、そのような個人の車が止まるところと駐車場業者やレンタカーのシャトルバスが止まるところは別のレーンになっています。

とにかく車です。

LAという場所は車がないと生活がほぼ成り立ちません。

NYに行けば「わー!たくさんの人!!」というのが第一印象ですが、それがLAでは「わー!たくさんの車!!」なのです。

もちろん、なかにはタクシー乗り場に向かう人だっています。

この人たちは向かう先に家族か友人がいて車に乗せてくれるのかもしれないし、または駐車場代を節約するため今日だけタクシーで自宅に帰り、車は家にあるのかもしれません。

または仕事でLAに滞在するのがほんの短時間で、タクシーでホテルと空港を行き来するだけなのかも。

いずれにしても、非常に少数だと思います。

さてNY。

慣れないタクシーに乗り込んでミッドタウンへ。

NYのタクシーはなぜこうも、ガタガタしているぼろい車ばかりなんでしょうか。中には新しいきれいな車もあるのかもしれないけど、私が乗るタクシーはとにかくガタピシしてます。

シートベルトが壊れていたりもします。

6歳の子供がいるのでちょっと心配になります。LAでタクシーに乗るとき、子供を連れていたら、カーシートがないと断られたり、「事故にあってもこちらの責任ではないから」と厳しく言われたりします。NYではそのへん、あまり厳しくないのでしょうか?

自分の車は空調とかインテリアとか、なんでも自分でコントロールできるし、個人的な空間が確保できます。そんな快適なLAの車生活に慣れてしまうと、ガタガタするリアシートで自分で運転することができないタクシーで移動するのは、なんだか不自由な感じです。

でも、ホテルに到着すると・・・

料金とチップを支払って車を降り、ホテルのフロントドアの前に立つ。

おお!車をどこに停めればいいか、悩まないでいい!!

高い料金を払ってバレーパークをするか、がんばってストリートパークを探すか、その場合はパーキングルールを熟読して駐車禁止ゾーンじゃないかびくびくしながら停めたり、「2時間たったら追加料金払わなきゃ・・・」とiPhoneにタイマー設定したり・・

そんな心配が皆無。

そういう意味ではタクシー移動、すばらしい!

さて、ホテルにチェックインです。

私達の部屋は25階。

そんな高いところまでエレベーターで昇ったことのない子供はびっくり、ちょっと怖がっています。

お部屋につくと・・・

なんと素晴らしい夜景。目の前のビルは住居なのか、カウチでリラックスしている人が見えたりします。

横 にあるのはオフィスビル。高層ビルのすべてのフロアがオフィス。オフィスの上にオフィス、その上にもまたオフィス・・・・、実は私自身、東京ではそんな高 層ビルのオフィスで働いていたのですが、ひたすら横にひらべったい広大なカリフォルニアに慣れてしまってからこうして見ていると、なんだかものすごく違和 感があります。

自分の上に何十階、自分の下にも何十階と別のフロアがあり、それぞれの階で別の生活や職場が営まれているって、いったいどういう感じだろう・・・なんて思ってしまいます。

ホテルの部屋にいると、はるか25階下の地上から、絶え間なくクラクションが聴こえてきます。

車のクラクション(Honk)はNYの風物詩というか、常に流れるBGMのようなものです。

私達が住むLAの家は、かなり大きな幹線道路が近くにあるため、車の音が聞こえるという意味では同じです。

でもその音が違うのです。

NYは絶え間ないクラクション、LAは車が高速ですーっと流れる音、ときどきパトカーの音、ごくたま~にクラクション。

LA の街中を走っていてクラクションを鳴らすのは、高速で走りながら強引に割り込んできた車とか、突然レーンチェンジをしてぶつかりそうになった車に対する抗 議が多いのですが、NYの街中はあまり高速で飛ばせるところがなくて、常にぎっしりとつまった車の列の中でなんとか前に進もうとして「はい、早く進ん で~」みたいな、絶え間ない車同士の会話の一部になっているような気がします。

翌日は結婚式の時間まで、街を歩いたり夫の親戚の家を訪ねたりしました。

歩いていてまず思うのは、NYで子供を連れて移動するのってなんて大変なんだろう!ってこと。

子供というのは何かに関心を持ったらじっと座り込んだり、立ち止まったり、逆方向に走っていったり、さらに途中で「つかれた~。もう歩けない」なんて言い出したりします。LA育ちのうちの子は人ごみの中をぬって歩くなんていう経験もないし、すぐ人とぶつかりそうになるのでひやひやします。

LA生活では、とにかく車に乗せてカーシートにいれてシートベルトをつけてしまえばこっちのもの。ぐずって泣き叫んだとしてもとりあえず移動はできる。遠い移動のときはiPhoneでゲームをさせたり、車の中で食事もできるし昼寝もできる。

「ほら!もう行くよ!」「まっすぐ歩いて!」「抱っこなんてできないよ!がんばって歩いて!」なんて言い続けながらの移動でした。

私 はNYの、路上を歩く大勢の人が作り出すなんともいえないエネルギーがとても好きです。これはLAではなかなか経験できないものです。かつてNYに短期間 住んだり、訪ねていたころはただただそういうエネルギーに魅了され、まったく考えなかったことですが、小さい子供を連れたお母さんは大変だろうな、と初めて実感しました。

次に結婚式です。

あのNYの摩天楼を一望する、高層ホテルのルーフトップで行われたセレモニーとパーティ。これはもう本当に圧巻でした。

式は夕暮れに始まり、背景にびっしりと聳え立つ高層ビルに夕日が反射してキラキラと輝き、やがて空がゆっくりと暗くなると同時に夜景が燦然と輝きだします。

「宝 石をちりばめたような・・・」というのは典型的なたとえですが、それが、とびきり美しい宝石が360度、見渡すかぎり、はるか遠くまで、輝きながらどこま でも散らばっていて、それぞれが微妙な光で瞬いて・・・もう言葉では表せない美しさです。自然の美しさとは対極にありますが、これがすべて人が作り上げた ものだ、と思うとまた別の感動があります。

これは本当にNYでしか体験できない結婚式でしょう。

も ちろんLAにだって高層ビルはありますが、ここまで圧倒的な絶景にはなりません。そしてルーフトップのパーティ!ガラスの壁で囲まれた屋上にはカウチが ゆったりと置かれ、バーが設置してあって、食事はビュッフェ形式です。もうこんなゴージャスなパーティに参加できるのは一生で一度かも、と思いながら楽し みました。

残りのNYも、タクシーを乗り継いで過ごしました。

びっ くりしたのは隣の車との距離です。ほんの数センチしか離れていないこともあります。今まで、LAで運転していてバスや自転車がすぐ近くにくると「近くて怖 いな~」と思っていたけど、そんなのまったく比較になりません。きっとNYのドライバーはこういう運転に慣れて、数センチの感覚までわかるようになるのか もしれません。

そんなせまーい空間をぬって、けっこう自転車が走っているのにも驚きました。

LAでは自転車が走っていると車はおおげさによけて通ったり、のろのろと後ろからくっついて走って、自転車の人をあせらせたりします。

NYには、そんな余裕は皆無です。

大きくよけようにもそんなスペースはなし、みんな遠慮なく自転車のぴったり横を、スピードを落とすことなく通り抜けていきます。

そしてウィンカーなんか全然出してません。LAも日本に比べたら出さない人が多いですが、NYはウィンカーも出さずなんのちゅうちょもせずさっとLane Changeしています。あうんの呼吸というのか、まるで車全体がダンスをしているように・・・

私はとてもじゃないけどNYで運転はできそうにありません。

結婚式の翌日は大学院時代の友人と再会しました。このときまで、NY在住経験のある夫に頼りっぱなしだったのですが、初めて一人で行動することになり、やたらと緊張してしまいました。

再会場所となるレストランまでどうやっていけばいいのか・・・迷ったらどうしよう・・・でもiPhoneのグーグルマップがあるから大丈夫かな?と思っていたら・・・

ここでまたカルチャーショックです。

GPSが、全然正確じゃない!

LAではかなり精度の高いグーグルマップの自分の位置が、なんか数ブロックずれてるし、歩いていたら位置がフラフラとずれて、数ブロック前に行ったり後ろに行ったり・・・

そう、衛星と情報をやりとりしているGPSは、高いビルが周囲にたくさんあると電波が反射してしまって全然正確に位置を検出できないのです。

こんな経験が皆無なLAでは、グーグルマップさえあればどこにでも行ける!という安心感があるのですが・・・それにすっかり慣れてしまい、こんなGPSが不正確な場所があるとは、と本当にショックでした。

でも、近くだったのでストリート名の表示を見ながら目的地にちゃんとたどり着くことができました。

た どり着いてみると、やっぱり出発点から目的地まで歩くことができて、車をどこに停めよう?と考えなくていい生活っていいなぁ、と思いました。歩きながらい ろいろな風景を楽しむことができるし・・・LAでは、風景はどんどん過ぎてしまって「おもしろいお店発見!ちょっと入ってみよう」なんていう楽しみがほと んどありません。

友人たちとの再会を楽しんだあと、別れ際に、友人の一人が「今からMOMAに行く」と別の方向に歩いていったので、「ああ、NYライフだなぁ」とまた思いました。

LAでは、週末の昼間に「あ、今からLACMAに行こう」と思って歩いていく・・・なんて場面はあまり想像できません。

ま、 たまたま歩ける場所のレストランで食事していればそういうこともあるかもしれないけど、距離の問題ではなくて、楽しみながら、会話をしながら歩ける道が少 ないのです。LAで歩くというのは、「車を遠くにとめちゃったから仕方なく歩く」ということが多くて、歩きにくいつまらない道を我慢して歩く、という感じ です。

そしてたとえば私が自宅にいて「LACMAに行こう」と思い立っても、きっと「うーん、この時間はハイウェイは混んでるなー。ハイウェイ使わないと遠いなー。それに駐車場代だけで10ドルだしなー」とか、いろいろ考えてしまいます。

別に行けないわけではないんですが、ただ、緑の豊かなセントラルパークを抜けて「MOMAに行く」と歩き去っていった友人が、NY文化を満喫しているという感じでちょっとうらやましかったのでした。

あっ というまにNYで過ごす週末は終わり、JFK空港からLA空港へ・・・、自分の車に乗り込み、明るい青空の下、広々と横に広がる風景の中でハイウェイを走 り出したときは心底ほっとしました。夫と一緒に、Oh, I missed this! LA最高~なんて言い合いました。

住み慣れたLAはとても居心地がいいのですが、NYの独特のエネルギーに触れて、もし住んだらやっぱりNY大好きになるだろうな、とも思います。人生のどこかでまた住んでもいいかな?

それにしても同じ国の中でこんなふうにカルチャーショックがあるなんて、本当にアメリカって広いですね。

時差もしっかり3時間あり、ちょっと時差ぼけになりながら、LA生活を再開しています。

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