アメリカの退職金システム

明るい老後をアメリカで迎えるために(?)、今日はちょっと、リタイヤメント(退職)について考えてみましょう。

 

 

アメリカでは、日本のような「定年退職」という風潮はなく、本人の経済状況や意思次第で、いつでも退職できます。”early retirement”なんて言って、50代、または40代でリタイヤ、なんて人もいるこの国。あ~私も早期退職したい!!

とはいえ、退職したあとの収入というものはやはり、退職を決断する上でネックになるのではないでしょうか。今回は、アメリカの退職金システムについて書いてみたいと思います。あくまで「参考」ですので、個別の詳しいケースについては、ファイナンシャルアドバイザーなどのプロに相談してください。

まず、アメリカ国内で「合法に」働いていた人が退職する場合、メインとなるものが2つあります。

それは、国によるSocial Security(社会保障)と、雇用先による401(k)などのペンションプランです。

 

1.Social Securityは、”payroll tax”と呼ばれる税金としてお給料の規定パーセントが天引きされています。(詳しくはこの記事で) 

これを毎月、full amount(満額)で受け取れる年齢は、1960年以前に生まれた人は66歳になったとき。以後の人は67歳で満期となります。(2013年1月現在)

毎月の受取額がいくらかというのは、現役中に納めていたpayroll taxの額(つまりお給料の額)により、その計算はこのウェブサイト(http://www.allsup.com/personal-finance/financial-planning-calculators/social-security-benefits-estimate.aspx)でできます。

 

66歳まで待てない!という場合は、62歳の時点で、割引された額が受け取れます。

ただこのケースで62歳からの受け取りを始めた場合、66歳になっても受取額が満額になるわけではないので注意です。

 

自分が死んだ後、残された家族(”Survivor”と呼ばれます)はどうなるのでしょうか?

残される配偶者(”widow”または”widower”と呼ばれます)は、66歳から満額、または60歳から割引された額を受け取れます。

つまり、旦那さんがアメリカ企業で働き、Social Securityを払っていた場合、彼が亡くなった後は、働いていなかった奥さんも60歳以降はそのベネフィットをきちんと受け取れます。

残された子供たちは、18歳で成人するまで受け取れます。

 

上の計算機を使ってみてみましょう。

Aさんは1970年1月1日生まれの43歳の男性。

結婚して子供が二人(10歳と8歳)います。

奥さんは40歳で専業主婦。

彼がアメリカで働き始めたのは2000年のことですからちょうど13年前。

そこから一律で$60,000のお給料をもらっているとします。これは天引き前の年収額です。計算をシンプルにするために、彼のお給料は67歳で退職するまで変わらないことにしましょう。

 

そうすると、「2000」というボックスから最後まで全て「60000」とタイプします。

上の誕生日と退職予定の年齢もそれぞれタイプします。

 

で、”Calculate Benefit”というボタンをクリックすると、以下のような数字が出てきます。

 

2037年の時点では・・・・

Your monthly retirement benefit: $2012.00 

Disabilityは飛ばします。

Your monthly survivor benefits:

Your surviving child: $1419.00

Your surviving spouse caring for your child: $1419.00

Your surviving spouse at full retirement age: $1892.00

Maximum of total family benefits: $3311.90

 

となっています。

 

つまり、

 

Aさんが67歳でリタイヤした場合、この家族には2012ドルのSocial Securityが毎月入ります。

このときは奥さん64歳、子供たちはすでに成人(34歳と32歳)ですので、”surviving spouse caring for your child”の額はあてはまりません。

 

Aさんがこの5年後、2042年に72歳で亡くなった場合。

奥さんは69歳ですから、満額の1892ドルを彼女自身が亡くなるまでもらえるわけです。

これは、アメリカ市民だけでなく、Social Security Number をきちんと持って、税金を納めていた人ならグリーンカード保持者でも同じ扱いを受けられます。(2013年1月現在)

詳しい情報はこちらから。

 

 

2.ペンションプラン

これは、業種や企業によっても異なってきますが、代表的なところでは401(k)(「フォーオーワンケー」と呼ばれます)などがあります。

また、ミリタリーに従事していた場合はVA (Veterans Administration)によるペンション、公務員は州ごとのペンション、教員は教員団体のペンションなど、職位や経験年数によって受け取り方なども変わってきます。

 

アメリカ企業で一番ポピュラーなのは401(k)です。これは毎月の給料から、自分のアカウントにいくら投資していくか自由に選択できる退職金アカウント。

私の会社はFidelityの401(k)マネジメントサービスを使っており、自分の投資先を、株(国内・国外、大手・ベンチャーなど)、債権、ミューチュアルファンドにするかを選ぶことができます。(これらの詳しいお話はまた次回)

また、雇用先の企業が”matching”と呼ばれる401(k)を使った退職金支援をします。

これは雇用ベネフィットの一つで、たとえば、毎月、給料の6%を401(k)に投資したい場合、企業が「100%マッチングします」という条件を出すと、プラス6%を企業が負担し、自分の401(k)アカウントに入ることになります。

つまりトータルで給料の12%分の資金が退職金に向けられます。

 

実はこの401kには一つ、怖いところがあります。

それはこの資金の投資先が、株式や債権などの金融媒体であるところ。つまり、自分の退職金が、10年後、20年後、30年後にいくらになっているかという大部分は、「経済成長」にかかっているということになります。

 

一つ、最近起こった例を見てみましょう。

現在のアメリカには、「ベビーブーマー」と呼ばれる、戦後直後に生まれた年代がとてもたくさんいます。ちょうど退職を考える年代です。彼ら・彼女らの多くもこの401(k)を退職金アカウントとして使っています。

今回のアメリカ経済崩壊で、株価は暴落し、この401(k)の額も暴落したという人は、少なくありません。株やミューチュアルファンドによっては、退職金が半分になったという人もいます。

つまり、200,000ドルの退職金を持って、来年退職しよう・・・と思っていた人たちの退職金が、その半分100,000ドルになってしまったのです。

私のようにあと20~30年はリタイヤしない年代は、この暴落もそれほど問題ではありません。(大した額も入ってないし・・・苦笑)

だけど、来年、再来年の退職を目処にしていた人にとってはこれはかなりの痛手ですね。

しかも、自分の401(k)アカウントからいつでもお金を引き出せるわけではなく、55歳以前に引き出した場合はペナルティを払わなければなりません。

額面(face value)が退職するときのタイミングに左右されるのがこの401(k)の怖いところなのです。

 

これらの退職金の受け取り方も、そのペンションプランによって異なります。

退職を機に一括で退職金全額が支払われるものを”Lump Sum”「ランプサム」、退職から規定年数のあいだは毎月支払われるものを”Annuity”「アニュイティ」と言います。

たとえば、401(k)アカウントに入っている$200,000ドルの退職金。

これを一括現金でもらい、ハイ、それっきりよ、というのがLump Sum。

Annuityを選んだ場合、自分の年齢とBeneficiary(配偶者などの自分の死後に支払いを受け取る人)の年齢によって、月ごとの支払い額が計算され、毎月、チェックなどで支払われます。

 

 

この2つがアメリカで働いてきた人にとっての主なリタイヤメントシステムです。

まだまだ他にも色々なオプションがあるのですが、それは次回、投資の記事でも書いてみることにします。

 

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「アメリカの退職金システム」への1件のコメント

  1. ペンションIRSなど全く無知なものでお恥ずかしですが、お返事頂けたら光栄です。

    会社合併による体制変更で、先日夫のペンションを早期ランサムで受け取りました。なぜかと言うと、引き継いだ会社のプランは、受給者に万が一の場合、配偶者支給は無し。それを理解して用紙にサインをするのかノータリーに言われたからです。

    401Kも有りますが、これも会社によっては、配偶者が受け取る%などあるものなのでしょうか?

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