アメリカ政府機関閉鎖と「オバマケア」

本日10月1日、”Shutdown”と呼ばれる政府機関の閉鎖が決まりました。

アメリカ連邦議会(Congress)では、2014年度の暫定予算について議論していましたが、合意できなかったまま10月1日に突入。

その結果として、人々の生命や安全に直接関与しない部門や機関は、朝から閉鎖され、約800,000人の国家公務員が「自宅待機」しています。それでも国が回るという事実がすごいですね。

 

閉鎖されたリンカーンメモリアル AP Photo/Carolyn Kaster)
閉鎖されたリンカーンメモリアル AP Photo/Carolyn Kaster)

 

公務員が自宅待機なんて日本じゃ考えられませんが、前回、この政府機関閉鎖が起こったのは1995年と1996年。クリントン大統領がメディケア・教育などへの予算増資を提案し、同じく予算が通過しなかったときだそうです。

 

<閉鎖の背景>

予算が決まらないネックになっている原因は、「オバマケア」と呼ばれる全国民医療保険制度。(正式名はPatient Protection and Affordable Care Act, PPACA) オバマ大統領が就任して以来、アメリカ政治で熱いトピックで、来年2014年1月1日から実施されます。(予算がとれれば)

ここアメリカは、日本のような全国民医療保険制度はありません。

つまり、「保険は自分で買うもの」なのです。

そのため、医療機関やシステムは日本に比べてものすごく複雑です。(この記事を参照

無職者や貧困層はなかなか充分な医療を受けられないことや、高額な医療費が常に問題になっており、オバマ大統領は「Affordable(買うことができる)な医療を全国民に」というのがポリシーに、この計画に取り掛かったのです。

 

しかし、これに賛成しないのが対抗政党の共和党 (GOPとかRepublican)。

現在の連邦議会は以下のようになっています。

  • 上院(Senate):民主党が大多数
  • 下院(House of Representative):共和党が大多数

民主党と共和党についてはこちらの記事でどうぞ

となっていて、上院でパスしたオバマケアへの予算案が、下院でパスしないわけです。

 

じゃあどうして下院がパスしないのか、見てみましょう。

 

<対立の背景>

そもそも、この「オバマケア」ってなんでしょうか?

オバマ大統領がこれを実施したい背景はわかったけど、どうして共和党はそれをサポートしないのでしょう?

この「オバマケア」は、Government-backed、つまり政府が支援する医療保険です。

たとえば、健康な40歳男性Aさんがこのオバマケアを利用した場合、彼の医療保険費を200ドルとしましょう。しかし、政府がこれを支援するので、彼が実際に払うのは150ドル。残りの50ドルを政府が支払います。

じゃあこの50ドルはどこからやってくるか? ——-そこが議会で対立しているところ。

 

オバマケアの収入源1:Medicare(メディケア)

アメリカには”Medicare”と呼ばれる医療費システムがあります。

これは65歳以上の人が利用できる国民医療保険で、このメディケア予算を削り、オバマケアに充てる計画です。そしてそれをカバーするため、メディケア増税を行います。

 

オバマケアの収入源2:富裕層への増税

ジョイント(夫婦)で年間$250,000、個人で$125,000以上の収入がある場合、年間3.8%の新税制度が作られます。(外部サイトより)

 

オバマケアの収入源3:ペナルティ

(個人の場合)

オバマケアが実施されても個人が医療保険を持たない場合は、その個人が「ペナルティ」として罰せられます。このペナルティは2014年で一人$95、2016年には一人$695を払わなければなりません。(外部サイトより)

注:オバマケアに関わらず、既に雇用先や個人で医療保険を持っている人はこのペナルティの対象にはなりません。

(ビジネスの場合)

社員に医療保険を供給しない会社も罰せられますから、企業は強制的に医療保険への出費ができるわけです。

つまり、このオバマケアは医療保険を持つことを「国民の義務」にするわけです。

 

もっと細かく収入源はあるようですが、ここでは大まかに書いてみました。

 

そしてこれを読んでみると、共和党が反対する理由が見えました。

共和党の支持層には、富裕層やビジネスオーナーが多くいるからです。また、「小さな政府」を目指す共和党は、増税や政府によるコントロールを嫌がります。

共和党が大多数の連邦議会下院は、オバマケアへの予算をとりたくないんですね。そこで、共和党の中でも特にコンサーバティブな”Tea Party”(ティーパーティ)と呼ばれる派閥が暫定予算案に同意しないのです。

 

 

<アメリカの国民医療保険>

ちょっと話はずれますが、良い機会なのでアメリカでの医療について考えてみます。

アメリカの歴史上、全国民医療保険制度を作ろうとしたのはオバマ大統領が初めてではありません。クリントン大統領もそうでした。

しかし、全国民医療保険制度の文化がないアメリカ歴史の中ではことごとく失敗しています。

今日のアメリカでは、「医療を受けること」は当たり前でなく特別なことなのです。これは、国民保険のある日本ではなかなか考えられないことです。

 

アメリカで医療がここまで「特別」なものになっているのは、やはり健康に対する意識の違いかなと思います。

 

日本では、うがいと手洗いで風邪予防が子供の頃から教えられます。

学校では無料の健康診断が行われ、子供たちの健康が管理・維持されます。

日本人は子供の頃から「健康」であることは、特別ではなく当たり前のことだと教わります。

 

アメリカはまだまだ肥満大国で(メキシコがアメリカを抜いて世界トップになったそうですが)、子供の糖尿病もものすごく多いです。

どこかが痛ければすぐに投薬、手術。日本では考えられないような強さのVicodin(ヴァイコデン)という痛み止め薬が、アメリカでは最も処方されているそうです。オバマケアが実施されれば、薬に頼る人がとても増えるでしょう。

この国では「健康」はお金を出して買うもの、と言っても過言ではないかもしれません。

統計学的に見ると、こんな国で全国民保険制度をやろうものなら国は破綻してしまう気がします。

本当に医療保険を必要としている人を見極めて、そして「健康」への意識改革が行われない限り、アメリカの医療に対する考え方は変わらないと思います。

 

 

かなり大まかに書いてしまいましたが、どうでしょうか・・・?

ワシントンDCで行われている子供みたいな喧嘩が一日も早く終わりますように。

アメリカが本当の意味での健康になれますように・・・。

 

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