MOM & DAD


これは私が、語学学校のオプションプログラムでバンクーバーの会社にインターンシップをしていたときのお話です。ファイナンシャルプランニング会社で、ファイナンシャルプランナーのアシスタントとして色々お手伝いをしていました。

インターンシップと言っても、これはあくまで語学習得の一環。ファイナンシャルプランニングを専門的に習得するのではなく、ビジネスにおける文化の違いや、使われている言葉を学ぶのが目的のものだったので、スケジュールを管理したりセミナーにて資料を配布したりという簡単な仕事を任されていました。

セミナーについて行く時などにはボスの車に同乗して現場まで出かけていきます。彼は運転中の半分以上の時間は電話で話をしていました。そんなとき私がしていたことは、ボスの電話での会話を聞いてリスニングのトレーニング。そんな中で最初の頃、おや?と思ったのが、毎日欠かさない「MOM & DAD」コールでした。

ボスは運転中に電話をかけるとき、音声機能を使うのですが、最初に「CALL MOM & DAD, HOME」と言うのを聞いたときは、大の大人が「ママとパパに電話!」(私の頭の中での和英辞書レベルの直訳)って、この人、実はマザコン???と疑わずにはいられませんでした。そして電話を切る際には必ず「Love you.」の一言。しかもその電話はほぼ毎日彼の日課のように繰り返されるので、私の中でのマザコン疑惑は高まる一方。日本人の男性でこんなにしょっちゅうお母さんとお父さんに電話をかけて最後に「愛してるよ。」なんて言う人を私は知りませんでしたから。そのうち、「MOM & DAD」というのはただの暗号で、実はガールフレンドに仕事中に電話してるのをカモフラージュするために、そうアドレス帳に登録してあるのでは・・・なんてどうでもいい仮説を立てて物事を勝手に複雑に解釈しだす始末。

その頃、私と同じインターンシップで一週間だけ期間が重なっていた女の子がいました。その子は見た目はアジア人、だけど国籍はスイスで、スイス系ドイツ語、スイス系フランス語、広東語、英語、韓国語が話せる超インターナショナルな22歳。若さと才能がうらやましかった・・・という話はさておき、私はその子に「私たちのボスって、もしかしてマザコン?」とたずねました。すると彼女は「確かに私たちアジア系の家庭では『愛してる』とか家族に対して言わないけど、西洋人にとっては普通だよ。」と、なんて大人な回答。

それ以来、彼以外でもお母さんのことを「MOM」と呼んでいる大の大人を何人も見かけたり、電話の内容も盗み聞きしてると、次リースする車はこれがいいだとか、弟の誕生日がどうだとか、暗号彼女との会話にしては色気のないものばかりだったので、次第にこの文化に対する違和感はなくなっていきました。それどころか、両親を大事にする男性は、日本人であってもカナダ人であっても魅力的であるべきだと考え直しています。私の頭の中の和英辞書に、もう少し柔軟な翻訳機能を付け加えれば「Love you.」も「お袋、体に気をつけてな。」もうマザコンとは呼びません。お母さん思いのボスのお話でした。 

MOM & DAD” への2件のフィードバック

  1. Yumiさん、素晴らしい記事をありがとうございます。
    「暗号彼女」って笑っちゃいました。笑

    私も最初は、いい年した(?)男性が「ママと電話」してるのを見て、ちょっと違和感でした。
    でも聞いているうちに、兄弟姉妹のこととか近所のことなど、こんなにいつでも何でも話せる親子関係は良いなと思いましたね。

    大人になってからのほうが、色々なことを冷静に見られて、一人間として会話できるのかもしれませんね。

    ありがとうございました。

  2. Erinaさん
    コメントありがとうございました。
    家族を大切にする姿勢は日本に持ち帰りたいと思ったカナダ文化のひとつです。
    日本の会社ももっと家族で過ごす時間をサポートしてくれる体制になってくれるといいですね!

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