「行ってから踏ん張んべ」 (6)

キャンパス近くでのレイプ事件の話を聞くと、いよいよ「これ、英語しゃべれないと死ぬな」と若干呆然としながら恐怖を実感。当時まだ記憶に新しかった「服部くん射殺事件」を思い出す。

いつものようにベトナム語で盛り上がっている授業(当時ESLのクラスには多数のベトナム人生徒が一緒にいました)。講義を聞き流し、宿題を提出して、自分だけはいつもよりも静かだが、ごくごく普通な一日を過ごす。

「これがアメリカの現実なら、それについてちょろっと語っても、みんなウンともスンとも言わないのだろうな。てか、英語でなんて言えば良いのか分からんし…」

「渡米してから一ヶ月半くらいか。」とプレッシャーばかりかけ続ける生活にも若干の疲れが出始める。

「まだ何ともなってないのに勝手に疲れててどうする。」と、まだプレッシャーをかける、負けたくない自分もいる。

忘れてただけど、そろそろ勉強だけでなく、生活面も固めないといけないような気になり、前々から気になっていた学校脇の「DMV(The Department of Motor Vehicles:免許関連を取り扱う役所)」に立ち寄る。

以前のタマミさんも書いていましたが、運転免許の筆記試験のテキストは無料です。受験するときにお金を払い、基本的にタッチパネル式の試験。ワシントン州では四択問題を25問中20問正解でパスできます(だったはず)。

その場でパラパラと立ち読みにふけるが、やっぱり結構とっつき難い。

仕方ないので、その一冊をリュックに突っ込み、とぼとぼと自宅に向けて歩き出す。

いつも通りイヤホンを耳に入れて聞く登下校中のラジオは唯一の癒しで、「言葉は関係ない」という英語が分からなくても反応できる世界には陶酔できたものです。
授業と授業の合間も教科書を片手に、ひたすらラジオを聴いていた記憶があります(ESLの他の留学生との交流は基本的に避けていたので)。

今流れてるこの曲が、なんて曲で誰が歌ってるのか分からないなくても「あ、また曲だ。これ誰の曲なのかな。声がかっけぇなぁ…」なんて思いながら歩いていたものです。これは「テレビで聞き取れた単語をただひたすら辞書で探す」よりは、「楽しみ」の要素が多かったし。

ただ、この頃のヘビーローテーションで、Sheryl Crowの「Strong Enough」がその好きな曲の一つと知ることになるのは、意外に近い将来だったのですが。

つづく 

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